数年の空白と数十年の空白 2
そして、2024年。
「よし、今年こそ旅に出るぞ」と決めた。ここ数年間の空白を埋めたい。
久しぶりに航空券サイト「トラベルコ」を開く。パソコンで航空運賃情報を調べてみると、行き先にもよるが、旅行先と時期によって大きく違うが、ちょっと眺めるとコロナ前の5割増しか倍くらいになっている。コロナ禍前に、知り合いの病院長夫人たちが、「もう60を過ぎたら、当然ビジネスクラスよね。エコノミーなんて、疲れる旅行はもう嫌よね」と言っていたが、今でも同じセリフを口にしているだろうか。変わらないだろうな、きっと。自分の寿命を考えれば、「もう節約して生きても、しょうがない。財産残して死んでも無駄」という感覚はわからなくもない。最後の旅がいつなかわからないというのは、誰にとっても同じこととはいえ、「あんなに元気だった人が急に・・・」という例が近所でも数例続くと、「生きているうちに贅沢を」という感じはよくわかる。私だって、これが最後の旅だと分かっていれば節約はしないが、だからといってカネがあっても豪華な旅をしたいとは思わない。コロナ禍は、そんなことを考える期間でもあった。それほど深刻だったということだ。
ヨーロッパへの便は、幸運ならば10万円を割る便もかつてはあったが、今は安くても20万円を割るかどうかという料金だ(というのは今年の春で、今また調べると今秋出発便が12万円台である。ただし、片道の乗り換えの総待ち時間が数十時間とか、旅行社の怪しさを考慮しなければという条件がつくが、安くなったものだ。私の判断で、安心して利用できる航空会社の便だと、やはり20万円近い)。
相変わらず安いのは中国の航空会社の料金設定だが、利用すると不快になる分の慰謝料があらかじめ割り引かれているのだろうと認識しても、その不快さには耐えられそうにない。ぜいたくになったものだ。かつてエジプト航空やパキスタン航空といった「安かろう悪かろう」航空を、安いというだけで利用していたものだが、歳を重ねると、旅のベテランK師も、あの氏もこの氏も、「中国のナントカ航空は、イカン」と口をそろえて言う。例外は、中国留学経験のある友人で、中国人のやることに期待はしていないから失望もしないのだろう。中国の航空会社だけの問題ではなく、空港職員も問題もあるから不愉快になるのだが、ではほかの国の職員が素晴らしかったかといえば、口をつぐむしかない。多分、どこの国でも「権威を笠に着ている」公務員の態度が、自由な旅をしたい者とは合わないのだろう。それにしても、中国の空港ではたんなる乗り換えだけなのに、パスポートと荷物の検査のために列に並ばせ、いやがらせとしか思えない検査を何度かする。「あんたの国に入る気なんかないんだぜ」と言いたくなるが、言っても無駄だ。調べれば、アメリカもおなじようなシステムらしいが、アメリカ乗り換え便の旅の計画はない。ヨーロッパ方面の旅は、安さに心が動かされても、中国の航空会社は使わない旅を選ぶことにする。
それから、LCCはせいぜい台湾あたりまでで、それ以上遠くには行きたくない。これも贅沢になったものだとは思う。
4割の円安ということは、旅行先の物価がコロナ前と変わらなかったとしても、日本円を外貨に換えて使う旅行者は、かなりの物価高と出会うことになる。インフレの国なら倍の物価ということもありうる。アメリカがそうだ。
1ドルが100円ちょっとという時代が長いので、150円にもなると大変な円安という感じだが、私が旅を始めたころは1ドル300円近かったし、初めてアメリカに行った1980年には250円だった。1990年は160円だった。タイで長期滞在をしていた90年代は、130~40円台だった。問題は、日本円だけが安くなったことだ。
何でも高くなってしまった今、さてどこに行こうか? 行きたい場所はいくらでもあるのだが・・・。