旅行保険、そしてクレジットカードの話 その1
初めての海外旅行のときは、旅行保険に入った。海外旅行など何も知らないウブな私は、海外旅行指南書に「保険に入る」という記述があり、それをそのまま信じたに過ぎない。ただ、どうやって保険に入るのかわからなかったから、出発直前になってもそのままにしていたのだが、羽田空港に保険カウンターがあり、そこで手続きをした。保険金の受取人は父にしておいた。それからだいぶたって、その保険会社から父のもとに書類が郵送されたのだが、息子が旅先で死んでその保険の手続きをするようにという郵便だと誤解した父は狼狽したらしい。そのときは、「おっちょこちょいにも・・・」としか思わなかったが、だいぶ後になって、初めて日本を出る息子を心配していたのだろうと推測できる。
最初の旅は保険に入ったが、その後は「保険なんかカネの無駄。まあ、なるようになるさ」と思うようになり、旅行保険には入っていない。数千円の保険料があれば、旅先で何日も遊んで暮らせることがわかってしまったのだ。1食30円とか50円で暮らせるのだから、バカ高い旅行保険なんかに入るかという気分だった。長い旅だと保険料がべらぼうに高くなるからなおさらだ。目先のカネをケチった結果、その報復を受けるという悲劇はなかった。旅先で入院や手術といった不幸は体験していない。
取材で外国に出るときは出版社が保険に入ってくれたが、「そのカネで自由な旅をしたいなあ」と思っていた。能天気なもので、事故や病気は私を迂回していくものだと思っていた。
ふたたび旅行保険に入るようになったのは、50歳を過ぎて心臓の病気をしてからで、旅先で心臓の病気で入院すると、治療費が大変だろうと、多少は常識人のようなことを考えるようになった。しかし、60歳を過ぎると、保険料は急激に高くなり、保険会社によっては「医師の診断書を提出せよ」というものもある。旅行期間も3泊4日台湾旅行というならそれほどの負担でもないが、30日を超えると、数万円にもなり、安い保険会社を探すのに手間がかかる。死亡保険金を受け取ってほしい人などいない。高価な物は持ち歩かないから物損保険もいらない。旅先での、障害・疾病の保険があればいい。
2019年にバルト3国に行く時は、「貧乏人は保険なんかはいるか!」と決意したものの、航空券を買った旅行社から、「ECは、保険未加入者の入国を認めない方針で、トラブルも起きています。大丈夫ですか?」というメールが来た。そこで、成田空港の保険自動販売機で安い保険に加入した。
天下のクラマエ師も60歳を超えたので、「旅行保険はどうしてます?」と聞くと、「そんなもの、入ってないよ。クレジットカードのゴールドカードなら、疾病傷害物損も、旅行保険並みの保証があるよ。前川さんも、持てばいいじゃない、ゴールドカード」という。田中真知さんも同じことを言う。クラマエ師にとってゴールドカードはガソリンスタンドのポイントカード程度のものだろうが、私には別世界のことで、次元が違う。ファーストクラスで旅行するには、カネがあればいいだけの話だが、ゴールドカードは特別な人しか所有を許されない。
今回の韓国旅行は、「韓国&短期間」ということなので、旅行保険には入らなかった。旅行前も旅行中も、旅行保険のことなどまったく考えていなかったのだが、帰国してしばらくたって、事情が大きく動き出した。