韓国も日本も、変わった 7 地下鉄2
ソウルの地下鉄の話を、手持ちの資料で読む話の続きだ。
『韓国の本』(講談社、1986)はムックだから実用情報には欠けるが、時代を感じることができる。短いコラムから、箇条書きにする。
●従来の1号線2号伝に加えて、85年10月に3号線4号線が開通し、「世界で7番目に長い地下鉄になった」(この表現はほかの媒体でもあったから、観光局資料が元のネタだろう)。
●駅名や行先表示がないなど外国人には不便だったが、1988年のオリンピックに備えて改良が進み、自動券売機や無人改札もできた。駅にエスカレーターもできた。路線の色分けもした。
そうか。ソウルの地下鉄工事は、来るべきソウルオリンピック対応だったことがわかる。もうひとつ言うと、前回紹介した『宝島スーパーガイド・アジア 韓国』は87年改訂としていながら、地下鉄情報は古いままだったことがわかる。
『地球の歩き方 韓国 94~95』は、もうオリンピックが終わって5年以上たったソウルの情報だ。地下鉄工事は進んでいたのだろうが、完成しているのは4号線までだ。いつから始まったのかわからないが、駅に番号が振ってあり、「緑色の線の5番の駅」という風に覚えると、外国人も利用できると説明している。地下鉄の紹介ページに、いまなら「驚異の洞窟!」という見出しがつきそうな写真が載っている。地下鉄3号線のホームに降りるエスカレーターの写真だが、その地下道の上半分が岩のままなのだ。「岩を削って穴を掘りました」という光景で、鉱山かつくりかけの防空壕のようで・・・。あっ、そうか。ソウルの地下鉄は防空壕なのだ。
それから10年後の資料。『最新 世界の地下鉄』(ぎょうせい、2005)の韓国のページを見ると、さすが地下鉄情報の本だから、路線図も詳しい。1~8号線まで開業していて、9号線が工事中だが、3号線も7号線も延長工事中だ。それから20年後の『地球の歩き方 ソウル 23~24』の路線図と比べると、ソウル郊外に路線が伸びていることがわかる。ほかにも鉄道網が発達していて、旅行者が行くような場所なら、たいてい地下鉄で行けそうだが、それだけ路線が複雑になっていて、東京や大阪の地下鉄に乗り慣れていないと、ソウルの地下鉄は乗りこなせないだろう。
ソウルの地下鉄には、「ホームドアが100%完備」という情報がある。本当に100パーセントかどうかはわからないが、東京の地下鉄よりもはるかに多いことは確かだ。ソウルと東京で、どうしてこういう差があるかのというと、東京は地下鉄の歴史が古く、しかも他社との乗り入れが多く、ドアの数やその位置がバラバラだという理由もある。
ある韓国人の解説では、韓国人は並ばないから、ソウルの地下鉄の乗り降りは無駄に混雑するというのだが、ラッシュ時には乗らなかったので、実証していない。日本でも韓国でも、スマホを見たまま列車の出入り口に立ち止まっている者が、乗るときも降りるときもおおいにジャマだ。そうそう、韓国では車内のスマホ会話は禁止されていない。私の少ない体験では、おっさんの通話がうるさい。電話は大声でしゃべるものだと思っているらしい。車内がうるさいと、つい声が大きくなるという理由もある。
「ソウルヨク」というカタカナは、その上に書いてあるSeoul Stationという英語を見ないと「ソウル駅」の意味だとわからない。発音重視なら、地名の発音をカタカナ表記すればいいが、駅とか大学など施設名が入る場合は、日本語訳にしてほしいとも思う。ちょっと前の日本では、道路の「国会前」の英語表記と称するものは「Kokkai」だった。日本語がわかる人しか、このローマ字表記はわからない。
中国語表記の「首尓站」に関しては、黒田勝弘氏の解説があるので、そちらを参照。
日本人には中国語の表示もありがたい。