トイレの話 3
世界のトイレを語るとき、かならずテーマにあげられるのが「使用後のトイレットペーパーを流す、流せない」問題だ。世界には「流せない」文化圏が実に多く、かつては韓国もその圏内にいたのだが、ウォッシュレット付きになれば、使用後も紙を入れるゴミ箱はもはやない…はずなのだが、我がホテルにしても、まだゴミ箱があり、「流さないで」という注意書きがある。


一方こちらは洗浄便座がついた博物館のトイレの表示で、「流してください」。洗浄機付きだが、「流さないで」というトイレがあるのかどうか。あるだろうなあ、きっと。
トイレに使用済みトイレットペーパーを流してはいけないという地域は広く、その理由はトイレットペーパーが水溶性ではないからという説があるが、それを実証した人は多くない。トイレでは自らの指と水で処理するタイにもトイレットペーパーを売っているが、主たる舞台は食堂のテーブルや事務所デスクの上で、その役割はティッシュペーパーである。ということは、水溶性ではないトイレットペーパーがまだあるかもしれない。水溶性のものがどのくらいあるのか、どの程度解けるのかといったことを調べたことがない。タイ滞在中は、「タイ式」で処理していたから、そもそもトイレットペーパーと縁がなかったのだ。
このサイトには溶けないトイレットペーパーの話がでている。世の中には水洗式ではなトイレがいくらでもあるのだから、溶けないトイレットペーパーがあってもいいわけだが、韓国で売っているトイレットペーパーに「水溶性」と「非水溶性」の2種類あるのかどうか調べていない。
韓国のトイレとゴミ箱の話を、調べて書いたアジア経済研究所の資料がある。時代の流れは、ごみ箱廃止の方向に向かっているというのに、ウェットティッシュを流そうとして詰まらせたという事件があって、ふたたびゴミ箱導入という事態になっているというのが興味深い。
同じく、アジア経済研究所関連の資料『アジア厠考』(大野盛雄・小島麗逸編著、勁草書房、1994)に収載されている「韓国便所事情」(新納豊)を読むと、韓国のトイレが詰まりやすい理由は、トイレットペーパーに問題があるだけではなく、配管設備の技術の問題があると指摘している。管が細いとか曲がる個所がつぶれかけているといった問題もあると指摘している。だから、トイレットペーパーの問題が解決しても、老朽化している建物では配管部分が信用できないから、ごみ箱使用が義務となるという構図ではないか。
トイレットペーパーが水に溶けないから便器に捨ててはいけないという理屈はもちろんわかるのだが、ロンドンのトイレを思い出した。1975年の大英博物館。そこのトイレットペーパーは、パラフィン紙やトレーシングペーパーかと思えるようなつるつるの紙だった。ロール紙なのだが、ミシン目がはいった1枚1枚に”GOVERNMENT PROPERTY”(政府備品)と印刷してあった。航空便用の便せんに似た薄くて丈夫な紙なので、私は少々いただき、まさに便せんとして使った。ボールペンで字が書けるくらいに、丈夫だったのだ。
それほど丈夫な紙なのに、便器に投げ入れてよかったのだから不思議だ。水溶性があるとは思えない感触なのだが、問題ないという判断だったのだろう。私が見たのはもう50年も前のことだから、今はどうなっているのか「大英博物館 トイレットペーパー」で検索したら、トップにでてきたのが、「つるつるのトイレットペーパー」というコラムで、筆者は私。雑語林の336話だった。
ラトビアのトイレ事情を紹介したのが1307話。1990年代末の話。国立アカデミー図書館のトイレットペーパーは通常新聞紙なのだが、ある日白っぽい紙が置いてあるのを発見した。使用済みの投票用紙だったといったエピソードを紹介している。
この雑語林には、かなりの量のトイレ情報が集めてある。右側の「検索」欄に「トイレ」と書き入れたら、単行本1冊分くらいの情報があるあhずで、その情報が、このように今も増加している。