食文化を眺める 13
インド人は金属の大皿を好んで使う。日本人の感覚では大皿というよりも盆と言った方がいいような大きな食器で、そこにご飯やさまざまな料理を盛りつけて、あたかも劇を作るように料理と飯を混ぜて食べていく。韓国人なら、一気に全部混ぜてしまうだろうが、インド人は、飯に料理Aをかけて食べ、そこに料理Bを混ぜるといった食べ方をする。
この大皿をターリーという。今はステンレス製が多くなったが、アルミや真鍮製などもある。その昔はバナナの葉を皿にしていて、その伝統はまだ続いている。屋台などでは、紙皿にバナナを感じさせる緑ビニールをコーティングした大皿を使っている。
インド人が金属食器を好むのは、浄不浄の考え方からだということはすぐに想像がつく。金属器なら、洗って磨けば、「清浄」と感じられるからだろう。
では、朝鮮ではどうか。
箸とサジは銀、他の食器は真鍮(銅と錫の合金)というのは王宮から始まり、上流階級に広まっていったのだが、金属器を好んだ理由は「暗殺を防ぐため」という説があるが、日々暗殺される恐怖と戦っている人が、全国民のなかでどれだけいるかを考えれば、銀食器が広まった理由は「暗殺を防ぐ」からではないだろう。暗殺対策よりも、「ピカピカしていて神々しい」からだろう。金属食器はもともと仏具神具でもある。高価だから豪華で、選ばれた者が使うのにふさわしい」という考えからだろうと思う。これは私の推測で、論拠はない。
西洋でも、「ナイフやフォークやスプーンは銀がいい」という考えはあったが、皿やカップなどすべての食器を金属にしたいという発想はない。中国人も、「食器は金属がいい」とは考えていない。なぜ朝鮮人が金属食器を好むのか説明した記事を読んだことがないから、「ピカピカが好き」という理由しか考えられない。
この金属食器偏愛傾向は、ここ10年か20年ほどの間に変化しているように思う。日本式に言えば「民芸調」や「自然愛好派」の登場といえばいいのか、木や竹の食器の登場だ。それは、そういう料理店やカフェの世界だけのものだったが、家庭では陶磁器やプラスチック製のものが増えているようだというのが、韓国ドラマを見ていても、韓国の食事を画像検索しても、ソウルで食事をしていても、金属ではない丼や飯茶碗を見かける。この流行は、陶磁器の飯茶碗と木の箸を使う日本の食文化の影響もあるのだろうか。
金属食器偏愛傾向といえば、アルマイト処理したアルミ食器も、韓国人の好みだ。アルマイト処理というのは、簡単に言うと銀白色のアルミの表面を酸化処理して耐食性をつけることで、少し金色に近くなる。わかりやすく言えば、韓国人愛用のラーメン用鍋のあの色だ。あのラーメン用鍋は、韓国語でヤンウンネムビ、漢字で書くと洋銀黄鍋。ネムビが鍋。「鍋」の語源は、朝鮮語のネムビだと主張する人もいるが、さて、どうかなあ?
韓国人が大好きなアルマイト製品はほかに、マッコリを飲むときのカップ(そのまま「マッコリカップという)や、マッコリが入っているヤカンなどがある。ちなみに、韓国のさまざまな情報を発信していて、興味深い記事が多いKONESTのなかの「TODAY’Sはんぐる」にヤカンの話がでてくる。必要にして充分な解説で、お勧めです。
「韓国語で「やかん」のことを「주전자(チュジョンジャ)」といいます。日本語の「やかん」を漢字で書くと「薬缶」で、薬を煎じる容器であったことが分かるのに対し、韓国語「주전자(チュジョンジャ)」は漢字で書くと「酒煎子」。もともとお酒を温めるための容器であったことがうかがえます」
韓国語資料が読めるなら、雑誌や新聞などで、1950~60年代の食生活画像が探せるだろうが、素人は想像しているだけにしておこう。