2110話 若者の世界旅行 欧米編 36 英・豪ルートと日本 1

 2108話で、イギリスとオーストラリアを結ぶ旅行ルートの話をした。今回は、ヨーロッパとオセアニアを結ぶ旅行ルートと日本の関係を考える。

 アメリカ人やカナダ人にとっては日本は、「東洋の異国」というイメージによって旅行目的地に決めたということはあっただろう。当時はまだ「マンガやアニメの影響で日本語を覚えて・・・」という時代ではなく、インテリは黒澤&小津の日本映画ファンと、サムライ、忍者、カラテ、柔道というのが、「フジヤマ芸者」の次の日本イメージだった。ただし、1970年代でも、日本のアニメは世界に輸出されていた。1975年のマドリッドの食堂で、「アルプスの少女ハイジ」の放送を見ている。テーマソングは日本語だったので、よく覚えている。韓国では、日本製アニメは、日本の痕跡を消して放送していたが、スペインではどこの国で作ったアニメかなどいっさい気にしていなかったと思う。スペイン語に吹き替えてあれば、スペイン製だという認識だっただろう。

 タイでは、マンガは翻訳されて出版されていた(海賊版だ)し、日本のアニメもドラマも放送されていて、それが日本製だと理解されていたが、現在のように日本ブームにならなかったのは、テレビ普及率の問題だろう。日本文化に興味を持っても、インターネットなどない時代で、しかも「日本を旅行したい」という希望は夢物語という時代だった。アジア人にとっては、日本はまだ「旅行する国」ではなかった。

 いわゆる「日本趣味」以外にも、日本に期待することがあった。インドを旅したあと、衛生や法律など西洋人の基準に近い国で安心したいという者もいただろうし、日本の文化や社会に関心を持った者ももちろんいただろうが、同時に旅行資金を稼ぎたいという者もかなりいた。イギリス人でなくても英語が話せれば、観光ビザで入国した旅行者でも、英語教師の仕事は比較的簡単に見つかった。実際に、アメリカ人ということにしているイラン人の英語教師を知っている。フランス語、ドイツ語、英語ができるスイス人旅行者は、日本到着後すぐに英語新聞の求人欄を頼りに電話をかけまくり、フランス語教師の職を得た。重要なのは、西洋人に見える外見である。たとえ、外国人に英語を教える教師の有資格者のアメリカ人であっても、韓国系や中国系やアフリカ系では、簡単に英語教師の仕事にありつけなかった。

 大学で英語教育法を学んだベテラン英語教師よりも、不法就労アメリカ人旅行者の方が稼ぎが多いという、日本人教師の嘆きのエッセイを読んだことがある。英語教育世界の魔法のことば、”native”の威力だ。もちろん、そのアメリカ人は、できれば日本人が思い描く「金髪青い目のアメリカ人」であることが望ましい。

 英語学校を経営しているイギリス人は、白人教師しか採用しない理由を語った。「それが学校の方針というわけじゃなく、生徒が嫌がるんですよ。『西洋人に英語を教えてもらえる』というのを期待しているから、『見るからに西洋人』じゃないと、生徒が集まらないんです」というのが、1990年代の話だったが、さて今はどうか?

 英会話学校のホームページを見れば、教師のほとんどはトランプが喜びそうな白人教師だ。実際には白人ばかりではなくても、ホームページに登場させる教師は白人が望ましいということだろう。ホームページを見る限り、1990年代の現実は、現在も変わらなく存在しているようだ。