私は「スマホ中毒」にはかかっていない。このブログをパソコンで書いているから、ネットで調べものをするし、本やCDを買っているし、ユーチューブで音楽を視聴しているから、デジタル世界と無縁の生活をしているわけではないが、スマホ依存症患者ではない。
スマホは緊急連絡用に持っているが、電源を入れるのは月に5分くらいなので、中毒になりようがない。だから、国内外問わず、外出先の屋内でも屋外でも、たえずスマホ画面を見ているということにはならない。スマホを見ながら飯を食ったことがない。これは、現代では稀有な例かもしれない。安宿で旅行者と雑談をしているよりも、スマホの画面を見つめている方が楽しいという旅行者が増えている。依存症患者に、「それでいいのか」などと言っても始まらない。日本人旅行者はますます旅行者たちとしゃべらなくなった。しゃべらなくても、旅行ができるようになった。ガイドブックもスマホに入っているし。
いくつかの事情によって、何枚かのクレジットカードを持つ身となったので、外国の「現金支払い不可」という状況には対応できるものの、クレジットカードをめぐるトラブルも増えるだろうと思うと気が重い。中国はえらく面倒なシステムになっているらしいが、中国に行く計画はまったくないので、どーでもいい。
友人知人の連絡先やガイドブックはもちろん、航空券もクレジットカードなど各種カードもスマホに入れているという人がいるが、スマホが壊れた、失くした、盗まれたといったトラブルが怖くないのだろうか。パスポート以外の一切合切、すべてを失うのだ。スマホがなければ、友人知人に連絡ができないのだ。ノートに連絡先を書いておくという備えをしているだろうか。空港で、「スマホの航空券をプリントアウトしてください」と言われたり、「クレジットカードは、プラスチックのカードで支払ってください」と言われた人もいる。いろいろ面倒だ。
タイも、TDAC(Thailand Digital Arrival Card)という小賢しいものを始めた。マレーシアでも同様のシステムを導入している。入国前に、入国申請をデジタルで行なえというもので、クルミのような私の脳みそではそんなこ小器用なことはできないと思ったが、少し調べてみると、空港にはスマホを持っていない人、そもそも使えない人、スマホが壊れているという人たち向けに、端末が設置してあり、案内スタッフ(きっと老人に優しい美女が助けてくれるにちがいない。だってタイだぜ))もいるという。キーボードを使ってコンピューター画面に入力するなら、我がクルミ脳みそでもできる。
ラジオを聞きながらこの原稿を書いていたら、訪日中国人旅行者が話題になっていた。話しているのは中国を専門とするジャーナリスト高口康太氏。中国人旅行者といえば団体旅行ということになっていたが、中国人の団体旅行というのはどこの国でも法外な値段の健康食品やブランド品を無理やり売ることで知られているから、賢明な人は団体旅行を避けて、家族や友人たちと旅行していた。団体旅行の料金を破格に安く売り、損した分をぼったくり土産物屋で稼ぐという商法は、中国人団体旅行が行く土地にはどこにでもある。それは日本も、同様。団体客が店に入ったらドアに鍵をかけて出られないようにする店がある。
その中国人旅行者だが、最近はひとり旅が増えているという。旅慣れたことや、スマホ利用などで、ひとりでも自由に旅行ができるようになったからだが、その背後には、ある程度の収入があり、非婚でひとり暮らしという今までの中国にはなかった文化が生まれつつあると分析している。ちょっと前の日本では「独身貴族」という言葉もあったが、そういう人たちが、出張や観光のひとり旅を楽しんでいるらしい。デジタル能力があり、かなり英語が話せる人たちだ。多分、韓国人もひとり旅の時代に入っているだろう。そして、ひとり旅の中国人は、圧倒的に女性が多いらしい。中国では(あるいは韓国では)、女ひとりで食事する、飲みに行くことなどしにくいが、日本なら気楽に安全に楽しめるという理由もあるようだ。
プラザ合意から40年たった。当時1ドルが240円台だったが、アメリカ政府の「輸出を増やすために、ドル安誘導」という方針で、一気にドル安円高になり、1年後の1986年には150円台になり、1994~95年頃は、1ドル100円だった。
その後、外国の物価は上がり、しかし円は安いままだ、かつては「1ドル150円」に歓喜したというのに、いまは「またプラザ合意してくれないかな。1ドル100円だ!」と願う旅行者は私ひとりではあるまい。
若者の海外旅行史は、日本人編を54回、欧米編を39回、合計93回書いてきた。旅行史の話はとりあえず終えるが、関連する文章は今後も書いていくだろう。時代遅れのブログはまだまだ続く。