2123話 雑話 5

 ■韓国に、キム・ジュンミという女性歌手がいる。1953年生まれだというから、今も現役歌手かどうかは知らない。ネットには彼女の記事がいくつも出ていて、「韓国サイケデリック・フォークの女王」とか「韓国のマリアンヌ・フェイスフル」とか、よくわからない紹介のされかたをしている。私はサイケデリックの、ロックもフォークも興味も知識もないので、そのジャンルのことはまったく知らない。

 彼女の歌を初めて聞いたのは、韓国ドラマ「おつかれさま」(IU、パク・ボゴム)のオープニング曲だった。気になって調べたら、キム・ジュンミの「ポン」(春)という曲だとわかった。声は、ケイ・ウンスク(桂銀淑)のようにハスキーで、フォークの伴奏だが、歌い方はちょっとパンソリとか民謡風で、なかなかいい。彼女のCDは手に入らないようだが、ユーチューブにいくらでも出てくる。いくつものアルバムを聞きながら、読書をし、このブログの文章を書いた。アルバムによっては、フォークギターの伴奏だと山崎ハコを思わせたりもする。いま改めてケイ・ウンスクを聞くと、コブシはいいなあと思う。私はロックはあまり好きではないが、世界の「コブシ」が好きだ。

 キム・ジュンミの「春」を聞いていたら、この歌を作詞作曲し、演奏もしているシン・ジュンヒョンのことが気になって調べると、韓国ロックの大重鎮(1938年生まれ!)だということがわかり、韓国ポピュラー音楽史を調べてみたくなる。資料は、あるな。

 そんな気になったのは、長年机に置いたままになっていた『増補 にほんうた』(北中正和平凡社、2003)を読み始めたからだ。この本を買ってすぐに、海外旅行史の連載を始めたので、関連資料を読むのに忙しく、ついつい後回しになっているうちに、本の山に埋もれていたのだが、先日発掘し、読み始めた。戦後日本ののポピュラー音楽史は体験的にも、あるいは読書でもある程度は知っているが、体系的にまとめてくれたのでありがたい。この本にはおびただしい数の歌が登場するので、「ああ、そうだった。こんな歌があったよなあ」と思い出し、意外に良く知っていて、それが「歌が街にあふれていた歌謡曲の時代」を生きて来たということだ。久しぶりに聞いてみたくなり、パソコンにユーチューブを出すから、読書はなかなか進まない。幸せな読書だから、まあ、それでいいのだ。

 そして、時間が少し流れ、『増補 にほんのうた』読了。名著です。歌謡曲もロックもシャンソンなども含めた戦後大衆音楽史の本は、実はほかにはほとんどない。私もタイ音楽の全方位本をめざして、古典音楽も民謡もロックもフォークも全ジャンルを聴いて、『まとわりつくタイの音楽』を書いた。音楽ファンは、実はそれほど広い好奇心がないので、自分の好きなジャンルの音楽しか聴かない。音楽ライターも同様だから、広範囲にわたる音楽の本は少ないのだ。のちに『異国憧憬』を書くときに、旅行と異国趣味音楽に関して、北中さんにいろいろ教えてもらった。タイの歌謡曲コンサートを見たいというので、北中さんや松村洋さん、そして当時はインドネシア音楽を研究していた石谷崇史さんなどと、バンコクの寺祭りに案内したことがある。みんな音楽に関して広い好奇心を持った人たちだ。そういえば、北中さんと都はるみのコンサートに行ったなあ。

 ■中高校生時代に、ロック少年にならなかったのは幸運だった。ハードロックやプログレッシブロックなどに傾倒していたら、韓国やタイの歌謡曲をおもしろく聞くということにはならなかっただろう。というようなことを考えながら、きょう1日聞いていたCDは次の4枚。

Heart to HeartB.B.King & Diane Schuur(同じCDをまた買ってしまった)

“The Rough Guide to Bleus and Beyond”

“The Rough Guide to The Music of Turkey” 1曲目がSezen Aksuだ! 彼女のCDは何枚か持っている。

“Abriendo Puertas” Gloria Estefan やはり、スペイン語の歌がいい。