あれは20年くらい前だったか。マレーシアの島ペナンの街を歩いていたら、変な感覚に襲われたことがある。道路に見覚えがない車が何台も走っている。歩道から眺める景色がタイの路上とまるで違うのだ。マレーシア製の車は知っているから、まったく見たことのない車は中国製だということは明らかだ。
13年前のクアラルンプールでは、なぜか中国車の記憶がない。開店したばかりの高級ショッピングセンターの1階を見回すと、ガラス張りのショーウインドーの向こうに高級自動車が並んでいるので、輸入車ディーラーのショールームだろうと思って眺めていたら、そこは駐車場の入口だとわかった。汚職で儲けた者たちの持ち物なのだろうと思うと、気分が悪くなったという記憶がある。
そこで、今年だ。地方都市では、想像通りマレーシアの国産車が多いとわかる。マレーシアの国産車とは、三菱自動車と組んで設立したプロトンと、ダイハツと合弁で設立したプロドゥアの2社があり、路上の車は圧倒的に国産車が多い。
クアラルンプールの歩道橋や駐車場でしばらく車を眺めた。ざっと見て、国産2社のシェアは6割だろうと想像した。つまり、1位2位が国産車ということになる。3位はトヨタだ。4位はもしかして斜体のH(ヒョンデ)で、韓国車が多くなったのかもしれないと想像していたのだが、直立のH(ホンダ)の方が多いような気がする。5位はヒョンデではなく、日産だろうというのが、私の予測だ。
運転免許も持っていないド素人の予測なんか何の情報にもならないので、帰国後資料で確認した。ジェトロ(日本貿易振興機構)の資料だ。
2024年のメーカー別自動車生産台数の表を見る。各社のシェアは、プロドゥアが43.8%、プロトンが18.1%で合計すると61.9%。おお、6割という予想は当たっている。素人の観察が当たっていた。3位トヨタは12.3%、4位はやはりホンダで10.0%。5位は日産ではなく、三菱で2.0%だ。農山村では、三菱のピックアップトラックやワンボックスカーが人気なのだろう。マレーシアは山だらけだ。
クアラルンプールの街を歩いていたら、確かに中国車は目につくが、メーカーが多いので、メーカー別ランキングには入らないのだろう。もしかして、BYDは別格で単独でも目立つかと思ったのだが、わずか2台見かけただけだ。たまたま出会った社長の話では、こうだ。
「マレーシアはガソリンが安いんだ。だから、わざわざ高いBYDを買うメリットはないというわけだ」
そう、マレーシアは産油国なのだ。現在レギュラー1リットルが1.99リンギット(約76円)。AIの解説は「2.66リンギット、日本円で63円」となっているが、その価格は外国人に対する価格で、マレーシア人は1.99リンギットだ。しかも、「日本円で63円」というのは計算間違いだ。1リンギットは38円(2025年12月10日現在)だから、76円になる。63円だと、1リンギット25円になるが、そのレートは「2025年11月13日時点」とAIは説明している。最初に検索したのは11月11日なのに、11月13日の為替レートで計算しているのはおかしい。AIをを信じちゃいけないよ。
BYDの価格は車種によっていろいろあるが、10万リンギット以上だから、400万円以上と考えたらいいだろう。なお、BYDの価格に関しても、AIのものは日本円での換算がでたらめだ。
BYDよりも多く見かけたのがポルシェだ。少なくとも6台は見ているが、そういえばフェラーリは見ていない。マセラティ―は1台見かけた。チャイナタウンの路地で、ベントレーを2台見かけた。1台は翡翠色だった。特注の色だろう。こういうのを、金持ちの趣味というのだろうが、美しい色だった。
以前は高級車といえばメルセデスと相場が決まっていたが(もう一つ、マレーシアでは長距離乗り合いタクシーも、メルセデスと決まっていた)、私が見かけたメルセデスはスポーティーなものが多かった。「さあ、どけどけ!!」と安い車を威嚇しているのは、アルファードとベルファイアーというのは、日本と同じだ。この2台よりも高い車はいくらでもあるが、黒い塊の威圧感は他車を引き離している。
*下書きをしてからだいぶ時間がたったので、最新情報を再確認した。12月10日時点では、AIもお勉強したらしく、ガソリン価格は「1L,RM1.99」という正しい数字を載せている。ただし、1.99リンギットを「60円台」としているが、それは2023年前半ごろのレートだ。



