2340話 マレー紀行 2025 9 自動販売機

バンコクの好奇心』(1990年)を書いたときに、自動販売機設置条件について考察した。クアラルンプールで、そのことを思い出した。私が書いた設置条件とは、次のようなものだった。

  • 人件費が安いこと。
  • 自販機で売る商品が自国で生産できるか、輸入する経済力があること。
  • 治安がいいこと。自販機の台数は日本よりアメリカの方が多いが、アメリカでは治安を考慮して、学校や工場や軍の基地やオフィスなど施設内に設置されている。
  • 国民が機械好きで、機械に対する信頼感があり、機械のメンテナンスがきちんとできること。
  • 政府がやたらにコインを変えないこと。

日本の文化を取り上げて外国人と語り合う番組では、日本に自販機が多い理由は「治安の良さ」をあげる例がほとんどだが、ほかにも理由があることを書いた。クアラルンプールの駅の自動券売機の場合は、上にあげた4条件のうち、3条件は満たしているが、4番目の条件はどうだろう。「きちんとメンテナンスをする」という習慣がないので、いつも、何台かが故障している。機械のメンテナンスだけではなく、販売商品の補充といったメンテナンスも必要だ。

 ⑤のコイン問題は、マレーシアにはなかったように思う。現在新旧2種類のコインが発行されているが、両方のコインが使える・・・ような気がするが、コインが戻ってくる自販機もあるので、正確な話は難しい。札も使える自販機のポイントは高い。1リンギットの札はポリマー加工したプラスチックの紙幣だから、「くしゃくしゃになって自販機が吸い込まない」ということはない。

国立博物館の庭に、無人コンビニがあった。店内に自販機が並んでいて、支払いはカードだ。コインや紙幣を使わないければ問題はないのかどうか、私は知らない。

そういえあ、プラハの地下鉄を思い出した。券売機は正確な金額を投入するか、クレジットカードを使うという方式で、小銭がないことに気がついたある日、券売機にクレジットカードを入れたら、途中で止まった。半分舌を出したような感じで、カードを入れることも抜くこともできない。近くに駅員はいない。このままにして、誰かがカードを盗んでいくかもしれないから、券売機から離れるわけにいかない。投入した札が戻らない、お釣りが出ないという程度ならあきらめもつくが、クレジットカードが吸い込まれたままになったら、めんどうだ。だから、機械なんか信用できないんだ。格闘数分で、カードを取り戻した。

自販機設置台数はアメリカが1位で、日本は2位。確かな統計ではないが、ヨーロッパの総台数よりも、日本のほうが多い。人口当たりの台数では、日本が世界1位。そして、路上でむき出しの自販機が設置してある国は、日本が孤高の1位で、設置数はずっと減るが2位はもしかすると韓国かもしれない。もう十数年前になるが、台北の公園に設置している飲料の自販機は、まるで猛獣小屋に入れられているかのように、鉄筋のケースに入っていて、商品を取り出す部分だけ、少し大きめの穴があいていた。数年後に再訪したときは、その自販機は撤去されていたが、街にいくらか自販機があった。

誤解をする人はいないだろうが、「自販機の多くある国が偉い」と言っているのではない。自販機と社会・文化の話をしているだけだ。

これはショッピングセンター内の自販機。クアラ・トレガンヌでは路上の自販機を見た。飲み物の販売機だが、稼働しているかどうかは知らない。