クアラルンプールのエスカレーターは考察の余地が充分にある。
クアラルンプールの都市交通は、高架鉄道と地下鉄の組み合わせで、おそらく地下も路線を交差させるために何層かになっているようだ。だから、地下ホームに降りる長い長いエスカレーターが、地下深部にもぐっていく。地下鉄新御茶ノ水駅や東京駅最深部のようだ。
ある日、高架鉄道と地下鉄の両方が乗り入れている駅に着くと、改札口の先が大混乱している。高架鉄道と改札口の階を結ぶエスカレーター前が大変な混雑なのだ。
「何かあったんですか? 事故とか、停電とか?」
近くにいる人に聞いたのだが、急に私の英語が通じなくなった。
「どういうことですか?」と聞かれたので、もう一度同じことを繰り返す。「事故とか停電とか・・・」。
「ホームに上がるのを待っているだけです」という。改札階と上のホームを結ぶエスカレーターは2本あり、その間に階段がある。そのエスカレーターは2本とも「下り使用」になっていて、階段も同様だ。つまり、誰も上のホームには行けないから、改札を通過した乗客が下でたまっていくだけだ。
「上のホームにいる人が下に降りてから、下の客が上階のホームに上がっていくシステムです」と解説してくれた。慣れていないからか、なんだか変だなとは思うが、それはまあ、それでいい。
深い地下に降りていくエスカレーターに乗ると、乗客がどこかの都市の影響を強く受けたのだろうが、客は左に寄り、右側を高速で駆け上がり、駆け降りていく。日本人よりも、早い。そもそもエスカレーターそのものが日本のものよりかなり高速なのだ。日本では分速30メートルくらいが標準らしいが、外国では45メートルくらいが多いようだ。1.5倍くらい速いということになる。そこを一気に駆け下りていくのだから、危ないったらありゃしない。そんなことはマネしなくてよろしい。クアラルンプールも、ストレス過多社会になってるのだろうか。
日本人がエスカレーターを歩くのは速度が遅いからで、速く動くと歩く必要がないなどと書いているコラムがあるが、外国の例をどれだけ知っているのだろうか。エスカレーターの片側歩行(あるいは、走行)は危険だから禁止する流れが外国では増えているようだが、なぜか日本では積極的に2列利用運動を展開しない。
エスカレーターが停まっていることがある。近づくと自動的にスイッチが入って動き出す場合と、いつまでたっても動き出さない場合の両方があり、「さあ、どっちだ?」という賭けに出ることになる。こういう体験はバンコクでもしている。動かないエスカレーターを歩いて上るのはくたびれるのだが、それよりも問題の大きいエスカレーターもある。
超低速のエスカレーターに出会った。私は急いでいないから、のんびり乗っていたのだが、マレーシア人なら一気に駆け下りるだろうなあと思っていると、突然ガタンという音と衝撃が走り、急発進した。徐行している車がいきなりアクセルを踏み込んだようなもので、私の体は前後に振られた。左手でしっかりベルトを握っていたからいいが、バッグから何かを取り出そうとでもしていたら転げ落ちたかもしれない。何人かの子供を連れた親子連れだったら、幼児が投げ出されて悲惨な結果になったかもしれない。こういう事例は3度あった。
超高層ビルに騙されてはいけない。マレーシアの技術力は、この程度だ。

階段を降りる人がいなくなって、歩く気がある人が階段を上り始めた。両側のエスカレーターは、下り専用になっている。