いつもの旅なら、旅行先が決まった時点である程度の資料を読み、帰国後は頭に充満している疑問を解決してくれる資料を探してアマゾンに発注し、たちまちのうちに届いた本が山になるのだが、今回は旅先で買った本は1冊だけ。“Good Morning! Malaysia breakfast illustration” Miyuki Chooo)という自費出版物だけだ。日系らしき著者名だが、それに関する著者紹介文はない。
帰国して、すぐさまマレーシア本を注文することはない。注文したくなる本は、1冊もないのだ。じつは、クアラルンプールの紀伊国屋で見つけた本で、「ちょっとおもしろそうかも」と思った本があって、帰国後アマゾンでチェックしたら、ずっと前に買っていることがわかった。読んだことも覚えていないということは、まあ、読まなくてもいい本だったということだろう。その本が、ウチのどこにあるのかもわからない。
クアラルンプールに来れば、必ず本屋巡りをしてきたのだが、「収穫あり!」と呼べるような年は2008年だけで、そのことは216話で書いた。資料探しに、国立マラヤ大学の本屋にも行った年だ。
バンコクからクアラルンプールに来るといつも感じることのひとつは、この、資料のなさだ。関心のなさといってもいい。バンコクのアジアブックス、紀伊国屋書店、そのほかの書店、チュラルンコーン大学書籍部、国立博物館売店などを巡るには数日かかる。今はわからないが、十数年前なら、段ボール箱いっぱいくらいの資料は簡単に集まった。欲しい本がそれだけあったということだ(今は、活字離れでいい本は少ないらしい)。
私が買うのは英語の本だから、著者はほとんど外国人だ。歴史書だと、フランス語の原著を英訳した研究書も数多く出版されている(White Lotus Books)。タイ在住の外国人が、タイをおもしろがって、いろいろ調べ、考え、資料を集めて書いた本も多く出版されている。私を含めての話だが、「バンコクって、なんだかおもしろそうだ。書いてみたくなった」という外国人が何人もいるということだ。
ひるがえって、マレーシア、あるいはクアラルンプール。外国人を刺激する要素は、投資と移住以外、何があるか。料理が話題になっても、それほど多くの料理書が出版されているわけではない。ましてや、食文化研究書はなかなか見つからない。
その昔は、マレーシアに来るのは、ラット(Lat)を買えるという楽しみがあった。マレーシアの漫画家で、『カンポンボーイ』という翻訳もある。実は、今回イポーに行こうと思ったのは、そこがラットの故郷であり居住先だからだ。
マレーシアに行くたびにラットの本を買い集めてきたが、現在は引退状態だというから、もう新刊は望めない。今回書店に行ってみると、この『Kampung boy』の小サイズ版が1冊あるだけだった。
インターネットでラットの著作一覧を見ると、資料によって多少のばらつきはあるが、マレー語版と英語版合わせて25冊くらいあるらしい。そのうち、ウチにあるのは17冊で、リストにない本が別に2冊ある。古書価格は数万円になる物もあるようだが、マレーシア人は著作物を大事にしていないように思う。全集を作っておこうという動きは、なさそうだ。あとは野となれ山となれ、か。
ラットのことは1610話に少し書いた。今その文章を読み直して、偶然に驚いている。滝田ゆうの話の後にラットのことを書いていて、関連はまったくない。何のつながりもなく書いた文章なのだが、ラット関連の記事を読んでいたら、ラットは滝田ゆうの漫画が好きだと語っている。「そう、わかる」とラットファンはうなずくに違いない。
ちなみに、Latの絵はこういう感じ。こうやってラットの絵を見ていたら、”Kampung boy yesterday and today”(1993)は持っていないような気がしてして、古書市場を調べてみたら、日本の古書店(かの、大阪の天牛だ)が3000円で出品している。イギリスの古書店から取り寄せると、送料込みで、約3500円。「う~む」と考えながら、改めて棚のラットを調べてみたら、あった。よし。30年前に買った本だから、内容をすっかり忘れている。さっそく読もう。
*インターネット書店のAbe Booksで調べると、ラットの本は16冊出品されている。価格は3ドルから400ドル(送料別)。10ドル前後が多いので、希少感はない。本も、日本の古書店にこだわらず、国際的に探した方が、種類も多く、かつ安く手に入る。

