2348話 マレー紀行 2025 17 机 1

 賢い人はみなブログをやめてしまったが、スマホも使えない時代遅れの私には、ブログはふさわしいのかもしれない。文章が長くなりすぎないように気にしつつ、さあ、2026年版のブログの開始です。

 

 東海岸の旅を終えてクアラルンプールに戻った。一番の心配は、代理店を通じて予約した宿が、ちゃんと予約してあるかどうかだった。なにしろ、1泊2500円の安宿だ。この料金は、設備が整ったドミトリータイプのゲストハウスの料金と同じくらいだから、マネジメントが心配だった。まあ、デジタル力の問題の多い私が言えることじゃないが。

 ホテルの受付の男は、私のパスポートを広げてコンピューターのモニターで予約確認作業をして、「ええ、予約、入ってますよ」」と言った。「はい、ご予約を承っております」という返事が返ってくるような折り目正しい宿ではない。キャップをかぶったヒゲづらの男で、愛想はいい。料金相応で分相応の宿だから、この方が気楽だ。

 その男が、まるでクイズ番組の司会者のようなことを言い出した。

 「もっとも安いこのクラスの部屋には、ふたつの選択肢があります。ひとつは、Wi-Fi

があるが窓のない部屋。もうひとつは、窓はあるがWi-Fiはない部屋。さあ、どっちにします?」

 チチチっという秒針の音が鳴る時間もなく、瞬時に応えた。

 「窓! スマホは使わないから」

 幸運にも、スマホ依存症にかかっていないから、スマホがなくてもなんということもない。スマホ環境などどうでもいいが、部屋で快適に過ごすには、窓が欲しい。

 渡されたカギの部屋にはたしかに窓はあったが、そこから見える風景は、隣の駐車場ビルで、見上げれば、わずかに空が見えた。それでも、晴れているのか雨が降っているのかがわかるだけでも安心できた。

 その部屋にないのはWi-Fiだけではなかった。テレビが映らない。受付けの男にその旨を伝えると、「部屋に男を送ります」と言った。

 10分ほどすると、部屋に男が来た。ドアは開けたままにしておくという訓練を受けているようだ。部屋のテレビを点検し、「アンテナと接続していないようです。ただし、台湾のケーブルテレビだけは見ることができます」と言って、部屋を出ていった。

 テレビはその国の社会を広く見る道具としてなかなか便利なのだが、見ることができないなら、テレビに時間を盗られることがないから、それでいい。問題はまだあった。シャワーには「温水・冷水」の切り替えができるようになっているが、温水は出ない。しかし、気温30度の街だから、温水はいらない。部屋の冷房が効きすぎていると寒くて困るのだが、我が部屋の箱型の旧型エアコンは、轟音を立てる割には冷気製造能力は劣り、さらに設定気温を下げようとすると、うるさくて眠れなくなる。しかし、毎日歩き疲れているから、エアコンの騒音があっても熟睡できる。

 そういう欠点があったが、この部屋にはちゃんとした机と椅子があった。勉強机と呼びたくなるような代物で、棚のようなものを机に使えというおしゃれなビジネスホテルよりもよっぽどいい。