2349話 マレー紀行 2025 18 机 2

 この安宿に備わっている机で、毎夜日記を書いた。ノートはもう何年も前から、「コクヨ ス-5BN フィラーノート マージン罫入り A5B 6mm」を使ってる。「マージン罫」というのは、ページの左側にタテの線が引いてあり、その部分が見出しや加筆訂正用の余白として使える。

 文具店でたまたま見つけたノートで、使いやすいのでまた買おうと思ったがなかなか見つからない。まったく偶然なのだが、立教大学構内のファミリーマートでこのノートを売っているのを見つけて、10冊まとめて買った。10年ほど前は1冊税込み145円だったが、今コクヨのホームページで調べると220円(税別)だ。

 ついでの話:安宿の話をしておこう。東南アジアや東アジアの昔ながらの安宿と、近代的な設備が整い英語が通じるゲストハウスのドミトリーの料金が同じくらいか、ときには個室よりもベッド1台のドミトリー料金の方が高いことも珍しくない。冷暖房完備、コンセント、Wi-Fi、コーヒーとパンの朝食、衛生的な温水シャワーとトイレ、英語を話すスタッフ、西洋人との交流ができるロビーなどが魅力で、「旅行先の西洋」が安らぎなのだろう。

 今回も万年筆を2本用意した。パイロットのVペンを使っていたこともあるが、私には太字すぎて、しかも使い捨て万年筆がどうも気に食わなくて、だいぶ前からインクがカートリッジ式のダイソーの100円万年筆に代えた。昔は、細罫に小さい字で書いていたから、ボールペンで書いていたが、万年筆で書くようになって細罫をやめた。ダイソーの100円万年筆は、小さい字を書くクセのある私にはやや太すぎたが、いまはもうちょうどいい。なめらかで、とても書きやすい。細いペン先で書きたいときのために、「パイロット カクノ F」という万年筆も用意したが、結局使わなかった。ダイソー万年筆の方が書きやすいのだ。

 安い万年筆を見かけるとついつい買ってしまう。1000円以下なら、ちゅうちょせずにすぐ買う。数千円だと、例えばサファリだが、気が大きくなっている時だと買ってしまう。万年筆はいままで十数本買った。「これはひどい」というのは数本あったから、もう冒険はしない。モンブランも持っているが、旅日記を書くのはこのダイソー万年筆が最適だ。ノート1冊書くと、カートリッジのインクがなくなる。

 普段、手書きはメモ以外ないから、旅に出でたときは意識的に万年筆で文章を書くことにしている。指と頭のリハビリだ。今回の旅も、ウォークマンでFMラジオを聴きながら、旅日記を書いていた。考察するべき項目などを書きだしていくとだんだん長くなり、数時間たっている。テレビがあればテレビを見るが、旅先でラジオを聴いているのも「旅情」である。今回は、マレー歌謡を聴きながら、楽しい時間を過ごした。

 文章を書いているときは、できれば熱いコーヒーが欲しいのだが、ここでは熱くてうまいコーヒーは飲めそうにないので、マンゴーかパパイヤの生ジュースを買ってから、宿に戻るのがいつもの習慣になった。ビタミン補給でもある。近所のジューススタンドでは、1杯6リンギット(240円)だった。

 こうして毎夜旅日記を書き、旅を終えたときには、ほぼ1冊分書いたことになった。しかし、帰国後にその旅日記を開くことはない。今、こうしてブログを書いているが、旅日記を見返したことは1度もない。「ブログで書きたい」と思ったことは、頭の中の記憶箱に入っている。旅行中に、すでに編集している。旅日記は、記憶する作業工程なのだ。

 クアラ・トレガンヌの夜は、宿でテレビを見ていた。おもしろそうな番組はなかったが、コマーシャルが興味深い。タイのテレビは、やたらにシャンプーのコマーシャルが多いのに、ここでは見ないなあ・・・と思って、あっ、そうか。女は髪を見せてはいけないのだ。イスラム教徒の女は髪を覆わないといけないから、「風にそよぐ長い髪の美女」というシャンプーのコマーシャルは不道徳とされるのだろう。髪を見せないシャンプーのテレビコマーシャルは、きっとあるだろう。暑い国だし、中国系やインド系もいるのだから。「イスラム圏におけるシャンプーのテレビコマーシャル」という研究はあるだろうか。そんなことを旅先で考え、ノートにメモするのである。