食堂を出て、露店の服屋通りを抜けて、ふたたび生鮮食料品市場を少しぶらつき、大通りに戻った。

両脇の四角い物が、大豆の発酵食品テンペ。

前列中央にふたつ並んでいるのが、メリンジョ(グネムツ科)の実。その実を潰したのがウンピン。
宿があるチャイナタウンまで迷わず歩いて1時間くらいだろうか。10年前なら歩いたことのない方向に歩き出し、「明るいうちに宿に戻れればいいさ」という散歩をしていたのだが、気温30度、多湿、コロナ禍以降初の熱帯散歩ということもあり、これから夕方まで歩ける自信がない。路地に入り込む私の散歩は、「まあ、1時間くらいか」と考えていて2時間になることなどいつものことだ。3時間を予定していて倍の6時間になってしまう散歩は避けたい。
歩いて帰るのは当然だが、市場から西や東に歩き出すのはやりすぎの散歩だから、まずはチャイナタウンがある南に歩き出すことにする。TARは、インド人の生地屋が並んでいる通りで、表通りはおもしろくない。ただ、ライターとして考えると、雑誌の記事にすれば色鮮やかで4ページくらいの記事にはできるなどと考えながら散歩する。インド生地の店だから、色鮮やかで、写真ページにはふさわしいが、デザインがインド的な生地ではないから、私の趣味ではない。
表通りはあまりおもしろくないから、裏手に回る。買い物をする気がないから裏手の店もあまりおもしろくないという記憶があるが、それはそれでいい。観光客が来ないインド人街だ。
観光的なインド人街は、KLセントラル駅の南側には宗教施設を中心にインド人街がある。昔から歩いた地区だが、記憶に残る飲食店は姿を変えたようで、寺院を除けば、まるで初めて来た街のようだ。

KLセントラル駅のすぐ近くにあるインド人街。森の中にあるのかと誤解されそうだが、振り返れば、下の写真のような風景になる。これが、クアラルンプール。

TARは商売のインド人街で、裏手を歩いているのもインド系マレーシア人たちだ。
公園でひと休み。「椅子を見たら座りたくなるお年頃」の私には、いたるところに椅子があるクアラルンプールはうれしい街だ。横断歩道が極端に少ない街という欠点もあり、その点では散歩者を拒絶している街だともいえるのだが、街角やショッピングセンターにある程度の数の椅子があるのはありがたい。
クラン川を渡って、マスジット・ジャメイを過ぎれば、セントラル・マーケット。もとは屋内市場だったが、私が初めてここに来た80年代には、すでに土産物商店街になっていたようだが、足を踏み入れたことはない。私がときどき来ていたのは、このセントラル・マーケットの隣りにあった小さな体育館のような建物だ。そこはインド料理店が集まっていて、仕込み中の作業を眺めていた。インド人がキャベツを刻んで中華鍋で炒めている。ターメリックを入れているからキャベツは黄色だが、中華鍋を振って炒め物をするインド人という光景が、マレーシア的であった。そのころは、多分、インドに中華鍋はほとんどなかっただろうと思う。
その小さな体育館のような建て物は今は姿を消し、そこに大きなインド料理店ができている。昔の店の1軒が出店しているらしい。うれしくなっていろいろ頼み、結構な値段になったのは昨日のことだ。だから、今日は素通りする。
セントラル・マーケット前のTun Tan Cheng Lock通りを渡れば、チャイナタウンだ。
今日歩いた距離は多分10キロくらい。途中に飲んだ水分は、おそらく3リットルくらい。
水は雑貨屋で買えば、500cc、0.9リンギットというのが最低価格だったが、コンビニに行くとエビアンもあって、高額販売されている。ヨーロッパからの観光客向け商品だろう。店内にいた日本人旅行者は、1.5リンギットくらいの水を買っていた。日本円で60円くらいだ。水のボトルは常にバッグに入れて、こまめに飲み、次の水を買ってのみ、食事の時も水分を補給した。しかし、トイレに行ったのは1度。体内に取り入れた水分はほとんど汗で流れ出てしまった。11月のクアラルンプールは、8月の東京ほど熱くはないが、湿気は高いが、いままで世界各地の「高温多湿」体験と比べると、それほどつらくはない。
散歩が楽しくて、薄暗くなるまでふらふらと歩き、宿に戻った。朝から夕方まで歩いていたことになる。
さて、今夜はなにを食べようか。