2365話 マレー紀行 2025 34 飲み物 5

 若者が集まるおしゃれなカフェ事情は知らないが、ショッピングセンターのカフェに入ったことがある。甘くないコーヒーを飲みたかったからだ。メニューを見ると、”Jasmine Green Tea”が目に入り、その右を見ると、”Pot”とある。よし、今日はお茶のがぶ飲みにしよう。

 しばらくすると、ポットのお茶とカップがテーブルに運ばれてきた。ポットのフタから、ティーバッグの糸が出ている。少しは茶葉を期待したのだが、もう無理なのかもしれない。50年前のイギリスでも、ポットの紅茶はティーバッグだったのだから。香港の飲茶レストランでもティーバッグを使う時代になったのだろうか。

 ポットを持ち上げて、茶をカップに注ごうとしたら、ふたの脇から茶が流れ出て、テーブルをびしょびしょになった。レシートなどは完全に濡れた。ノートを広げていたり、カメラをテーブルに出してなくてよかった。濡れた原因はすぐにわかった。

 1、お湯の入れすぎ。

 2、ふたが小さすぎる。

 3、注ぎ口位置が低いから、ポットをかなり傾けないと、注ぎ口からお茶がでてこない。ポットを傾けると、開口部(口が正式名らしい)から湯があふれ出る。つまり、このポットは不良品である。

 テーブルが一面「お茶びたし」だから、ウエイターを呼んで、拭いてもらった。

 「このポットだと、お茶がこぼれるんだよ」というと、にこりとほほ笑んで、

 「それじゃ、ぼくが注ぎましょう」と言った。

 ウエイターがポットを手にして、カップに注ごうとしたら、テーブルにまた洪水が起こり、ウエイターはふきんを絞りに行き、テーブルを拭き、「はっはは、だめですね」と笑って去った。それだけ。不良品のポットを採用・購入したのは私ではない。ポットに関する一切の責任は、私にはない。高級ショッピングセンターの有名チェーン店なのだが、これがマレーシア。茶の3分の1はあふれ出たが、だからどう処理するというこはない。詫びも割引も茶の交換もない。愛嬌はあるが、それだけという仕事ぶりは、タイでたっぷり体験している。日本人駐在員は、こういう現実と毎日戦っているのだろうなあ。

 右下のレシートが濡れているのがわかるだろうか。カップのむこうにあるのが、茶菓子であるでんぷんのクラッカー。クルプックかと思ったのだが、食べた感じは豚皮のフライだ。しかし、マレーシアで豚皮を出すわけはないから、やはりキャッサバ粉のクラッカーだろうか。

 ショッピングセンターの店を観察して歩くと、「これは日本ではあまりないかも」と思ったシーンがあった。店内のテーブルでノートや書類を広げて作業をしているのは、店長と経理か。その隣のテーブルでは、従業員が食事休憩をしている。日本でも個人商店なら珍しくない光景だろうが、チェーン店ではどうだろう。事務室がないとすれば、更衣室はあるのだろうかなどと考える。

 マレー半島東海岸クアラ・トレガンヌはありがたいことに街の中心地にバスステーションがあるのだが、薄暗くなる夕方には、ほとんどすべての店はシャッターを閉める。宿で飲むものを何かと考えると、コンビニしかない。バスターミナル前にファミリーマートとセブン・イレブンがある。コンビニでは英語メニューが多く、Ice Americanoを注文した。

 ミルクを1個入れたい気分なのでカウンターで探したが、袋入り砂糖やコーヒーミルク・クリームを置いたケースがない。あるものだと思っていたから、「ミルクは?」と聞いたら、「ミルク入りが希望でしたら、カフェラテを注文してください」ときっぱり言われた、ホ~、そういう商売か。

 日本でコンビニコーヒーを買ったのははるか昔で、今どうなっているか知らないから、ネット情報を探したら、日本のコンビニには砂糖とミルクが置いてある。

 翌朝、セブン・イレブンで同じようにアメリカーナを注文すると、「砂糖はお入れしますか?」と聞いてきた。砂糖は無料だが、ミルクは置いてないということらしい。

 アイスコーヒーはプラスチックや発泡スチロールのカップでも我慢できるが、熱いコーヒーは陶磁器のカップで飲みたいから、こういう店では熱いコーヒーは注文しない。