コタバルの宿は街の中心地からはちょっと外れていて、そのせいで宿の向かいに大きなショッピングセンターが建っていた。新しいショッピングセンターかと思ったが、10年くらい前からあるそうで、どうやら改装工事をやって、新しそうになったらしい。1階は安めの食堂街で、上の階に高級レストランが2店あった。すし屋と韓国料理店だが、夕食時に客はどちらの店も数人しかいない。もっと郊外にでればイオンがあるのは知っているが、そこの高級店には客が来ているのだろうか。
1階はスーパーマーケットと食堂街になっていて、ゆで鳥定食の写真を掲げている店で立ち止まった。「Hainanese Chicken Rice」と書いてある。19.90リンギットだから約800円の定食だ。ゆであがったニワトリはふっくらしていて、少し黄色い肌は脂についている。「ふくいくたる」という語が浮かんだが、こういう漢字だと今知った。「馥郁たる」と書くそうだが、これでは読めない。「よい香りがただよう」という意味だ。そういう写真を見てしまったら、もういけない。宿の近くに飯屋がないから、このショッピングセンターで夕食をとるしかない。すべての食堂をチェックしたが、やはりこの店がいちばんだ。というわけで、マレーシア最初の海南チキンライスを食べることになる、その次が前回書いたクアラルンプールの店で、そのあともう1軒行くことになった。
コタバルのその店は、家族連れでほぼ満席だった。レジ前のテーブルに持ち帰り用の袋が積んである。持ち帰り客も多いようだと思っていたら、違った。デリバリーだ。厨房から運ばれてきた料理を、ヘルメットをかぶった若者が手にして消えていく。店内店外ともに大繁盛だ。
家族連れで、ひとり20リンギットの食事をするという感覚は、日本ならファミリーレストランか回転ずしに行くようなものだろう。私にとってここの定食は、ややゆで過ぎではあるが、なんとか「合格」ということにしておこう。「大満足」ではなかった理由は、ある。それは、この料理をほかの店で食べたときの感想も同じで、私にとってはタイ料理のカオマンカイのタレが最高なので、どうしても「う~む」になってしまうのだ。マレーシアのチキンライスがまずいと言っているのではない。私の好みがタイのカオマンカイだということだ。

食べている途中で、「ああ、そうだ。写真だ」と気がつくのはよくあることで、今回も半分以上食べていたが、一応、撮影。私は「なにがなんでも、写真!」という思想はない。食べる前の姿は、このコラム最終行のリンクで見ることができる。
支払いにレジに向かうと、店長らしき人がレジにいた。気になっていたことがあったので、聞いてみた。店の入り口にモニターがおいてあり、宣伝動画が流れていたのだが、一瞬、日本語が見えた気がした。
「もしかして、この店は日本人経営なの?」
すかさず、店長が答えた。
「はい、ゼンショーです」
なるほど、そういうことか。すき家、はま寿司、ココスなどを運営するゼンショーグループの店か。こういう店だった。Chicken Rice Shop