722話 台湾・餃の国紀行 2015 第27話

 雑話いろいろ その4

台北超高層ビル、「台北101」のすぐ前が空地になっていた。2013年のことだ。立ち退きになったのか、その理由はわからないが、更地になったばかりのようだったが、そこが家庭菜園となって畝を作り、菜っ葉が植えられていた。高さ509メートルの超高層ビルのすぐ前が、家庭菜園なのである。写真家なら、高層ビルと畑の両方を、魚眼レンズで撮影したくなる風景だ。元地主がここに来て、土地と別れがたい思いから、畑にして通っているのだろうか。あの畑がどうなったか知りたくて、またあの場所に行ってみた。畑があったところにビルが建っているだろうと思ったが、まだ建物の姿はなかった。しかし、畑があった場所は鉄板のフェンスで囲まれていて、内側は覗けなかった。間もなく、高層ビルが建つのだろう。
■夜に、街を散歩しているとわかることだが、6車線はありそうな広い道路の場合、街灯は中央分離帯にあるのだと気がつく。すべて道路がそうだというわけではないだろうが、忠孝路はそうだった。街灯というのは、車道を明るく照らすものだと考えているらしく、歩道に街灯はないのだ。
■早起きをしているので、朝飯を食べに、朝市がある双連市場に行った。野菜や魚や菓子など商品を眺めながら路地を歩いていると、この場所にはふさわしくないファッションの若い女性の姿があった。5人いた。ファッション雑誌のモデルが着ている服をそのまま着ているような感じで、センスは悪くないとは思うが、色使いが鮮やかで、ヒールの高い靴での市場散歩は、場違いという感じがした。この色使いは、コガネを持ったおしゃれな韓国人観光客だろうとにらんだ。
すれ違うときに、話し声が聞こえた。
「それ、さっき言うたやん」
「ほんま? 聞いてへんよ」
関西人か。服装の趣味はそれほど悪くないから、大阪人ではないかもしれないが、韓国人と関西人は区別がつきにくい。
台北市の周囲を囲んでいる広大な行政区が、2010年に台北県から直轄市として生まれ変わった新北市。「隣りの市」ではなく、「周囲の市」という特異は姿をしている。その新北市を散歩していて気がついたのは、この市の英語表記が「New Taipei City」になっていることだ。音をローマ字表記したのではなく、翻訳したものだ。台中市は「Tai Chung」のように、音をローマ字表記するのは普通なのだが、新北市は「Shin Bei」でも「Shin Pei」でもなく、意味を翻訳している。そこでちょっと気になって、北九州市の英語表記を調べてみたら、市のホームページでは「City of Kitakyushu」。新幹線新青森駅は「Shin―Aomori」、新白河駅は「Shin−Shirakawa」とJRは音訳派なのだが、漢字を読めない外国人にはどちらが便利なのだろうか。
■無糖の緑茶は、20元からあるが、「抹茶入り日式無糖緑茶」という高級品は25元。日本円にして、80円か100円かという選択だ。私は20円の贅沢をして、25元の物にしていた。ある日、安そうなパッケージの物があり、試に飲んでみようとレジに持っていくと、35元。健康増進を売り物にした商品だった。
■正月の間ずっと店を閉じていた山珍海味が、やっと営業を始めた。8連休もする飲食店は、従業員を大事にしているということだろう。この店は自助餐というブッフェスタイルの飯屋で、前回の滞在の時も通った店だ。今回もこの店で食事をしていて気がついたことがある。この「餃の国紀行」2013年版で、「台湾の米がうまい」と書いたような気がする。そして、今回気がついたのは、「ご飯がうまいのはこの店の飯であって、まずい飯を出す店はいくらでもあるなあ」ということだ。流行っている店の飯はうまいのだ。
■台湾の古い街は、建物の2階部分が歩道の上に覆いかぶさるようにできていて、雨や直射日光に当たらずに歩けるようになっている。この覆いに部分を、亭仔脚という。マレーシアやシンガポールにはある。香港にもあったが、比較的古い時代に取り壊しが始まり、1970年代ではわずかに残っていたにすぎない。いまもまだあるだろうか。なぜか、タイでは雪国の雁木のような屋根が歩道の上にあるが、亭仔脚はない。
 雨や直射日光に当たらずに歩けるのはいいのだが、歩道部分が何度もの舗装で段差はあって、夢心地で歩くと、つまずいて転ぶ。亭仔脚では、下を向いて歩いたほうがいい。