1830話 時代の記憶 その5 トイレ

私と同世代の人のほとんどは、物心ついたときの自宅のトイレは、汲み取り式だったと思う。「いや、水洗だったよ」という人は、都内中心部の近代的豪邸で育ったか、銀座のビルが自宅だったというようなごく一部の例外だろう。例え自宅が水洗トイレでも、学校…

1829話 時代の記憶 その4 水道

電気も水道もない場所で過ごしたことは、日本では後で話す1例だけあるが、外国では何度も体験している。 例えば、1974年のバリ島では、電気があるのは中心地デンパサールとバリビーチホテルのような高級ホテルだけで、クタ地区もウブド地区でも、電気も水道…

1828話 時代の記憶 その3 洗濯機

ウチにテレビが来たことを、母が大喜びしたという記憶はないが、洗濯機については何度も「うれしかった」と言っていた。 「洗濯がつらい」といっても、冬の水が冷たいからだろうという程度にしか考えていなかった。もちろん、それだって大変な苦労なのだが、…

1827話 時代の記憶 その2 電気 下

電球に次いで、我が家の電気製品となったのは、多分、父親の手製のラジオだったかもしれない。父は電気や機械の専門家で、それは仕事であると同時に趣味でもあり、材料を寄せ集めてラジオを組み立てたのだと思う。私はその世界に疎いのだが、当時はラジオの…

1826話 時代の記憶 その1 電気 上

1952年生まれの私が見たこと知ったことのいくつかを書いてみたい。「あれは、懐かしいよなあ」といった思い出話をしたいのではない。「過去のある時代の記憶と記録」を書いておきたいと思う。私が子供だった頃、大人たちがしゃべったり書いたりしていたおか…

1825話 校正畏るべし その4

注文していた『おいしさを伝えるレシピの書き方Handbook』(レシピ校閲者の会、辰巳出版、2017)が届いた。レシピの書き方を学びたい読者はどれだけいるのか。主に女性雑誌の編集者やライターか、お料理の先生の助手がこの本の読者だとすると、マーケットが…

1824話 校正畏るべし その3

『文にあたる』に、「敷居が高い」という言い方に関して、こうある。 「敷居が高い」は本来、「不義理をしていて、その人の家には行きにくい」の意味だが。「高級さ・上品さにひるんで行きにくい」の意味で使う人がいる。そういう使い方をしている文章がある…

1823話 校正畏るべし その2

前回、文章にでてくるあるものが、見えるか見えないかという話を書いた。例えば小説の中で、主人公が小学生時代、母親とよく散歩した寺の境内から富士山を眺めたという描写があったとする。「地理的に、その寺からは、富士山は見えません」とか、「富士山を…

1822話 校正畏るべし その1

神保町の東京堂でおもしろそうな本を漁っていて、校正校閲に関するエッセイ集『文にあたる』(牟田都子、亜紀書房、2022)を見つけたので、すぐさま買った。東京堂は、出版業界人がよく利用する書店としても有名で、立花隆も愛用者だったらしい。だから、校…

1821話 キンパ

韓国の言葉や食べ物などのエッセイを多く書いている八田靖史さんが、「もう『キンパ』はあきらめた」といった内容のエッセイを書いていた。出典は、失念。 韓国ののり巻きは日本から伝わったもので、昔は日本語そのままに「のりまき」と呼ばれていたが、のち…

1820話 サハラ砂漠やチゲ鍋といった表現について

「サハラ」は沙漠という意味だから、「サハラ砂漠」はおかしい。 「チゲ」は、韓国料理のひとり用鍋物のことだから「チゲ鍋」はおかしい。 モロッコの「タジン」は、円錐形のフタがついた土鍋のこと。あるいはその鍋を使った料理のことだから、「タジン鍋」…

1819話 阿川弘之とスタインベック

阿川弘之の『空旅・船旅・汽車の旅』(中公文庫、2014。解説:関川夏央)の親本が出版されたのは1960年だから、1950年代の乗り物の話だ。 日本のドライブの話は、雑誌「日本」の企画で行なわれた、1958年の東北・北陸旅行を描いている。阿川夫妻に編集者とプ…

1818話 韓国料理の辛さ

砂糖の資料はいろいろあるのだが、トウガラシの輸入や消費量などの日本語資料がなかなか見つからないのだが、根気よく探していたら、幸いにもこんな資料が見つかった。 「Wedge online」(2016年9月15日)に「中国産の流入で危機に瀕する韓国のトウガラシ産地…

1817話 韓国料理の甘さ

タイ料理同様、「韓国料理は辛い」と言われるが、私には甘さが気になっている。砂糖、水あめ、オリゴ糖などをたっぷり入れた料理が苦手だ。 韓国の料理が昔から甘かったとは考えられない。サトウキビもテンサイも栽培できないからだ。歴史的に言えば、朝鮮の…

1816話 アジア経済研究所の本とタイと砂糖

アジア経済研究所(以下、アジ研)が発行した「アジアをみる眼」の「くらし」シリーズは、雑多なことを知りたい私にとっては名作シリーズで愛読している。以前紹介したことがあるが、改めて紹介しておく。このシリーズは、アジ研発行の雑誌「アジ研ニュース…

1815話 雑話の日々 その6

■性別 「高校入試願書の性別欄、東京都が23年から削除 46道府県は既に廃止」というニュースが、毎日新聞に出ていた。全国の公立高校の願書の性別欄をなくしたということは、受験に性別など原則として関係ないということだろう。 国立のお茶の水女子大学の願…

1814話 雑話の日々 その5

■宗教 知人誘われて、イスラム教を解説する講演会に出席した。講演者は昔から知っている人で、いまではイスラム教の広報を生業にしている日本人だ。会はきっと荒れるなと思ったら、やはり荒れた。荒らしたのは、私だ。 「イスラムは平和の宗教です。我々の挨…

1813話 雑話の日々 その4

■先行研究 こんな研究をしている人はほかにいないだろうと思ったら、関連する論文がいくらでも見つかったというようなことを書いていたのは、ナマコの社会史研究に手をつけた鶴見良行だ。 日本人の海外旅行史の研究をしていた時に気になっていたのは、「1964…

1812話 雑話の日々 その4

■続美人 たまたまある会で知り合いが集まったので、会の後、いっしょに食事をすることになった。いずれも出版関係の人たちだ。テーブルを囲んでアジア料理を食べた。食事が進むなか、ライターが編集者に言った。 「あなたの会社、考えてみればみんな美人よね…

1811話 雑話の日々 その3

■美人3話 それぞれ別の機会に書いたことがある話題だが、この際まとめて紹介する。 残念ながら、昔から美人とは縁がない。電車で会う程度の美人を見かけることはあっても、思わず立ち止まるとか、2度見するというほどの美人にはなかなか出会わない日常を送…

1810話 雑話の日々 その2

■書店にて 今年2度目の神保町散歩をしたときのこと。その前に用があったので、神保町に着いたのが午後のかなり遅い時間だったので、のんびり散歩する時間はなかった。水道橋駅から靖国通りに南下する通りの古本屋は、ほとんどシャッターが下りていたり飲食…

1809話 雑話の日々 その1

■無能なデザイナーをクビにしたい。 デザイナー、特にインダストリアル・デザイナーに殺意を抱くことがある。例えば、こういうときだ。 店でシャンプーを選ぶ。まったく同じ容器に入っているふたつ。ラベルデザインもまったく同じで、これはどう違うのかとよ…

1808話 若者に好かれなくてもいい 追加編

「若者に好かれなくてもいい」という連載は前回で終わる予定だったが、大学教授が書いたでたらめ本について書いたことを思い出した。アジア雑語林の「検索」欄で調べても出てこないので、「あれっ?」と思い調べると、以前、アジア文庫発行の小冊子に書いたの…

1807話 若者に好かれなくてもいい その7

説教とは違うが、助言、英語ならアドバイスか。注意、指摘など善意によるものでも、受け手には「粗さがし」「重箱の隅をつつく」「バカにして・・・」「偉そうに・・」「上から目線で・・」などと受け取る人がいる。 知り合いの大学教授が書いた本を読んでい…

1806話 若者に好かれなくてもいい その6

不注意な旅行者は、若者に限った話ではないし、旅の経験が乏しい人に限った話でもない。 芦原伸という旅行作家がいる。私の趣味嗜好と方向が違うので、この人の文章をほとんど読んだことがないのだが、戦後の旅行史や旅行マスコミの資料として、自伝『旅は終…

1805話 若者に好かれなくてもいい その5

高田純次が、若者に嫌われないようにする注意点としてあげた「説教をしない」ということも、「説教」の内容や、受け手の意識の問題があるように思う。 「怒られる」と「しかられる」は、違う。怒りを表に出したのが「怒る」だが、「しかる」は注意であったり…

1804話 若者に好かれなくてもいい その4

旅と数字の話の続きを書きたい。 旅行関係の記事をネットで探していたら、天下のクラマエ師こと蔵前仁一さんへのインタビュー記事がヒットした。2020年のインタビューで、その最初の質問が「今まで何か国くらいを回ってらっしゃいますか?」だ。こういう質問…

1803話 若者に好かれなくてもいい その3 

タイでは、タバコの持ち込みは200本までは許されるが、それを超えるととんでもないことになるそうだ。その例のひとつがこれ。電子タバコの持ち込みは禁止で、もちろん所持も禁止。違反した場合は、最高懲役10年。しかし、マリファナは所持も販売も自由。露店…

1802話 若者に好かれなくてもいい その2

またパソコンのトラブルで、ワードに書いた原稿が突然取り出せなくなり、更新がちょっと遅れた。機械は、嫌いだ! カネもかかるし。 さて。 昔の話に興味があるかどうかは人それぞれだから、聞きたくない、興味がないという人もいるだろう。私は、父や祖父母…

1801話 若者に好かれなくてもいい その1

高田純次はテレビのインタビューで、年をとっても若者に支持されるヒケツは次の3点だと説明した。 思い出話をしないこと。 自慢話をしないこと。 説教をしないこと。 しかし、この3点は高田のオリジンナルではなく、昔から中高年になった男は気を付けてき…