1536話 本の話 第20回

『おにぎりの文化史』(横浜市歴史博物館) その2 インディカ米はパサパサパラパラだから、握れないという解説は間違いだ。インディカ米にもウルチとモチがあり、インディカでもモチ種を使えば、おにぎりができる。タイ東北部にカーオ・チーという焼きおに…

1535話 本の話 第19回

『おにぎりの文化史』(横浜市歴史博物館) その1 インターネットで『おにぎりの文化史』(横浜市歴史博物館、河出書房新社、2019)を見つけたのだが、詳しい内容がわからない。アマゾンでも「目次」が載っていない。大型書店で調べに行くというご時世では…

1534話 本の話 第18回

韓国の本 その4 『実物大の朝鮮・韓国報道50年』の前半は、1960年代に韓国を支えたが、表立って語られることのない人たちの話だ。 1969年当時、韓国に駐屯する米兵は6万5000人ほどいた。その相手をする米兵専用売春婦、俗に「洋公主」(西洋人を相手にする姫…

1533話 本の話 第17回

韓国の本 その3 『実物大の朝鮮・韓国報道50年』(前川惠司)に、わずか14ページ分だが、「韓国実像―1969年春から71年春にかけて」と題した写真ページがある。最初の写真は、やはりチョンゲチョン(清渓川)だ。「やはり」というのは訳がある。今のチョンゲ…

1532話 本の話 第16回

韓国の本 その2 『韓くに紀行』に、1971年取材時のソウルの写真が載っている。ソウルの1970年代も80年代も私は実際に見ているのだが、写真は一切撮らず、記憶も断片的だから、当時の風景写真を見たくなった。 1950~60年代のソウルをカラー写真で見ることが…

1531話 本の話 第15回

韓国の本 その1 司馬遼太郎の「街道をゆく」シリーズの2冊、『韓くに紀行』と『耽羅紀行』(たんらきこう)を読んだ。いままで、この「街道をゆく」シリーズの何冊かを手にしたものの、最後まで読んだのは「台湾」編と「南蛮」編だけだから、韓国を旅した…

1530話 本の話 第14回

『とっておき インド花綴り』(西岡直樹、木犀社) その6 「スイレン」の項に、茎の料理が紹介されている。 「茎の皮を、手際よくフキをむくのと同じようにはぎとると、それを7センチメートルくらいに切り、油を敷いた鍋にクミン、コリアンダー、カラシナと…

1529話 本の話 第13回

『とっておき インド花綴り』(西岡直樹、木犀社) その5 クズイモは、不可思議な植物だ。この本では、お供え物の果物のなかに、このクズイモがあったという話を書いている。クズイモを初めて見たのはタイの市場だが、もちろんそのときはこの植物の名も正体…

1528話 本の話 第12回

『とっておき インド花綴り』(西岡直樹、木犀社) その4 ニガウリの品種はいくつもあり、緑のものが多いが、白いものもある。日本で出回っているイボイボだらけのニガウリと違い、表面がツルツルなものがあり、マラ・チーン(中国ニガウリ)というという話…

1527話 本の話 第11回

『とっておき インド花綴り』(西岡直樹、木犀社) その3 ニワトリのタマゴくらいのニガウリは、「マラ・キーノック」という。「トリの糞ニガウリ」という意味だ。小さなトウガラシは、「プリック・キーヌー」といい、「ネズミの糞トウガラシ」という意味だ…

1526話 本の話 第10回

『とっておき インド花綴り』(西岡直樹、木犀社) その2 ギマ・シャーク(ザクロソウ科)は苦くてうまいと書く。消化促進、整腸作用もあるという。 「ベンガルには、苦みを楽しむ野菜がとても多い。ニーム(インドセンダン)、ニガウリ、実が三、四センチメ…

1525話 本の話 第9回

『とっておき インド花綴り』(西岡直樹、木犀社) その1 今年もまた、いつものようにコラムを書いていけることの幸せを感じつつ、書き始めます。 私のインド知識は無に等しいし、関心もそれほど強くない。しかし、西岡直樹さんの本を何冊か読んでいる人と…

1524話 特別編 年末年始

今回で、2020年の最後になる。調べてみると、今年は160話くらい書いたようで、400字詰め原稿用紙にして1000枚ほど書いたことになるらしい。新書4冊分くらいになる原稿量だから、いかにヒマだったかよくわかる。 連載している「本の話」はまだまだ続くのだが…

1523話 本の話 第8回

『思索紀行 ぼくはこんな旅をしてきた』 『思索紀行 ぼくはこんな旅をしてきた』(書籍情報社、2004)が、2020年にちくま文庫に入った。文庫版は「大幅加筆訂正」はないだろうと推察して、内容の点検はしていない。だから、ここでは書籍情報社版で話を進める…

1522話 本の話 第7回

『知の旅は終わらない』(立花隆、文春新書) その 4 立花の著作の中に『思索紀行』(書籍情報社、2004)がある。すでに紹介した1960年のヨーロッパ旅行から、この本がでるちょっと前までの旅の話を集めた本だ。 この本を資料に文章を書きたいとは思ったも…

1521話 本の話 第6回

『知の旅は終わらない』(立花隆、文春新書) その 3 東大でフランス文学を専攻することとなった立花は、フランス文学に限らず、主に20世紀文学を徹底的に読み漁った。 「文学を経ないで精神形成をした人は、どうしても物事の見方が浅い。物事の理解が図式…

1520話 本の話 第5回

『知の旅は終わらない』(立花隆、文春新書) その 2 大学生立花隆のヨーロッパ旅行の話の続きだ。 宿と食事と移動は現地の好意にすがるというこの方法で、現地滞在費はなんとかなる見通しはついた。高額の旅費は、阿部知二(作家)、朱牟田夏雄(東大教授…

1519話 本の話 第4回

『知の旅は終わらない』(立花隆、文春新書) その 1 語り下ろしのこの新書は、筆者の知の獲得史だが、ここにも1960年代の海外旅行の話が出てくるので、まずはそこから始めよう。 1959年に東京大学に入学した立花隆は、「当時の若者たちが誰でもそうだった…

1518話 本の話 第3回

『客室乗務員の誕生』(山口誠 岩波新書) その 3 山口の文章を引用する。 「1965年4月に第1便をヨーロッパに送り出したジャルパックは、1960年代後半を通じて海外旅行商品のトップブランドとして成長し、やがて日本の海外旅行の代名詞にもなった」 「1960…

1517話 本の話 第2回

『客室乗務員の誕生』(山口誠 岩波新書) その 2 1954年、日本航空は戦後初の国際定期便を飛ばす。前回話したサンフランシスコ線だ。日本航空にとっては晴れの飛行だが、残念ながら航空券はほとんど売れなかった。その理由を山口はこう書く。 「そうした不…

1516話 本の話 第1回

『客室乗務員の誕生』(山口誠 岩波新書) その1 客室乗務員に関して本腰を入れて調べてみようとしたことはないが、旅行史の研究として、少しは資料を読んだことはある。日本航空や全日空や日本交通公社の社史のほか、本棚の交通関連書からスチュワーデスが…

1515話 電話番号は?

渡辺謙主演のテレビ朝日のドラマ「逃亡者」は、あまりドラマを見ない私が言うのは変かもしれないが、前代未聞、空前絶後の駄作愚作だった。世間の多数派には入らないことが多い私だが、ネット情報を見る限り、このドラマに関しては、私と同じ感想だった人が…

1514話 思い出話と歴史 その5

旧知の大学教授たちとパソコンの話をしていたら、こんな話を始めた。 「最近の学生は、スマホでなんでも済ませるので、パソコンが使えない学生が多くなってね。だから、授業でレポートの話をするときは、スマホとプリンターの接続方法とそのコードといった講…

1513話 思い出話と歴史 その4

私に社交性はないし、宴会などにはほとんど縁がないのだが、それでも私の知らない世界を生きてきた人たちとたまたま雑談するような機会はある。年齢が違い、業種が違っても、私には「知りたがり」という好奇心はあるので、いろいろな話を聞くのが楽しい。 50…

1512話 思い出話と歴史 その3

終戦後、日本は連合国の支配下にあったが、1951年、日本はアメリカと「サンフランシスコ平和条約」( Treaty of Peace with Japan)を結び(発効52年)、晴れて独立国となり、国際社会に復帰した。IMF(国際通貨機構)に加盟したのも1951年だが、その当時の…

1511話 思い出話と歴史 その2

過去を知ることは重要だ。過去を調べる行為に、老いも若さもない。 経済に興味がない。経済書など読んだことがない。それなのに、戦後日本経済史関連書を読んでいたことがある。戦後日本人の海外旅行史を調べていた時だ。 日本で海外旅行が自由化されたのは1…

1510話 思い出話と歴史 その1

若者から「若い」と思われたい中高年は、思い出話をしないらしい。若者が思い出話を苦手なのは当然で、語るような過去が自分にはほとんどないからだ。中高年はそういう若者に迎合して、過去を語らない。親が若かった頃のことをよく知っている子供はそれほど…

1509話 あれから8か月 その11(最終回)

帰りの車内で、『東南アジアのスポーツ・ナショナリズム SEAP GAMES/SEA GAMES 1959-2019』(早瀬晋三、めこん)を読み、帰宅してもそのまま読み続けた。予想していた以上に、おもしろい。 2年ごとに開催される東南アジアのスポーツ大会が始まったのは1959…

1508話 あれから8か月 その10

かつて、新大久保は、アジア料理を食べ、タイや中国の食材を買い出しに行く街だった。アジアマニアが通う秘密の地区という感じだったのだが、いつの間にか韓国食品街になり、韓国化粧品店街や韓国アイドルショップの街になり、女子高生がワイワイガヤガヤや…

1507話 あれから8か月 その9

大回りになるが、買い出しをしてから帰宅することにした。千代田線で新御茶ノ水から西日暮里、山手線に乗り換えて新大久保。今年初めての新大久保だ。ホームから階段を下りて改札口に向かうと、改装して明るくなっているのに気がつく。この改札口は、ひと昔…