2021-06-01から1ヶ月間の記事一覧

1594話 本で床はまだ抜けないが その2

私の図書購入量の推移をグラフにすると想像したら、どうなるか。中学時代から徐々に右上がりになっていくが、上昇の角度がちょっと上がるのは20歳を過ぎて、海外事情の本を買い集めるようになってからだ。ライターになった20代後半に購入量が増えていき、一…

1593話 本で床はまだ抜けないが その1

神保町の古本屋のワゴンセールに『本で床は抜けるのか』(西牟田靖、中公文庫、2018)があった。本の雑誌社から単行本で出た時から気にはなっていたが、不要不急の本だから、「まあ、そのうちに」と思っているうちに時間が流れた。 著者の蔵書は、2003年ごろ…

1592話 『全国マン・チン分布考』の話を、ほんの少し その2

少しは、この本の内容に則したことを書いておこうか。 バンコクで暮らしていたころのこと、友人と路地を歩いていると、土ボコリをかぶった自動車が路肩に停めてあり、車体に指で書いた落書きがあった。 「あれ、読める?」と彼が指さしたので、すぐさま「ヒ…

1591話 『全国マン・チン分布考』の話を、ほんの少し その1

「アホ」と「バカ」と言う語は、どこが境なのかといった分布を研究した『全国アホ・バカ分布考』を書いたTVプロデューサー松本修の新刊が、『全国マン・チン分布考』(集英社インターナショナル新書)だ。こういう本なので、アマゾンで内容はよくわかるから…

 1590話 小説家の紀行文

数日前から読んでいた本を今読み終わり、神保町の古本屋の店頭ワゴンにあった江國滋の紀行文「旅券(パスポート)は俳句」シリーズの『イタリアよいとこ』(新潮社、1996)を読み始めた。この文章を書いている今、気がついたのだが、この本が出た当時は、新…

1589話 忘れられた人

「人は二度死ぬ」という言葉がある。一度目の死は、肉体が死んだとき。二度目の死は、その人を記憶している人が死んだときだという。この言葉を広めたのは永六輔であり、一部には松田優作だとする説もあるが、「出典不明」とするのが正しいような気がする。…

1588話 カラスの十代 その21(最終回)

これは、おまけの話だ。 1980年代前半のことだが、私はアフリカ旅行の帰路、イスタンブールにいた。マラリアの療養の目的もあった。宿は、日本人旅行者に教えてもらったところだからは、日本人がよくやって来た。そのなかに、ヨーロッパを旅した後、陸路でイ…

1587話 カラスの十代 その20

このように文章を書いていと、次々と思い出がまた湧き出し、文章が長くなってしまう。前回の文章を書き始めたときは、校長のことなどすっかり忘れていたのに、「そういえば、卒業式で・・」と思い出して、加筆した。こうして、とどめなく文章が長くなる。 東…

1586話 カラスの十代 その19

高校時代のことを、こんなに長く書く気はなかった。落ち着いて考えてみれば、半世紀も前の話なのに、古ぼけた昔話には思えないところが、ああ、恐ろしい。 今年の4月の中旬ころだったか、音楽を聴いたり本を読んだりと、いつもの退屈しのぎをしていたら、何…

1585話 カラスの十代 その18

そろそろ20年近く前になる話だ。長らく外国生活をしている高校時代の友人が、久しぶりに帰郷するときに前川に会いたがっているという連絡が、年賀状だけは交わしている同級生からあり、会うことにした。高校卒業以来30年ぶりくらいになる。 20人ほどが居酒屋…

1584話 カラスの十代 その17

高校時代にあれやこれやと英語にまつわる話をしていた友人が何人かいる。皆、いつかは外国に行ってみたいと思っていた連中だが、考えてみればESS(English Speaking Society)のようなうさん臭そうな組織と関係のある者はひとりもいなかった。この「うさん臭…