2011-11-01から1ヶ月間の記事一覧

371話 ソウルのトンカス  3/3

昼食後も、宿に戻ってまだ雑談会が続いた。3時ごろになって、ちょっとお腹がすいた時刻に、うまい具合に、宿の庭に物売りのおばあさんが姿を見せた。お盆にのっているのは、のり巻きだとすぐにわかる。きょうの昼飯が、トンカツにうどん。街を歩いていて、…

370話 ソウルのトンカス  2/3

部屋の戸を開けると、すぐ前の縁側に座って話をしている男と女が見えた。私と同世代くらいだろう。女は長い黒髪で、肌はやや黒い。なかなかの美人だ。魅力的な人だ。 「おはようございます」と、挨拶した。 「ええ! 日本人だったんだあ? きのう、ここで見…

369話 ソウルのトンカス  1/3

その人をテレビで何度か見かけて、なぜだか心に引っかかるものを感じた。その人の名前も履歴も知らない。まして会ったことなどない。しばらくして、なぜその人が気にかかるのかわかった。昔会ったことがある人に、よく似ているような気がしたからだ。テレビ…

368話 銀座の長靴

新橋の用事は、思ったよりも簡単に終わった。まだ正午すぎなので、そのまま帰宅する気にはなれず、銀座を散歩することにした。土橋交差点方面に歩いていくと、古風な十仁病院の建物が消えているのに気がついた。いつのことかわからないが、すでに移転したら…

367話 日本最初の機内食の本

ひと月に1、2度、海外旅行関連の本のチェックをやっている。最近の調査でひっかかったのが、『空飛ぶビーフ はばたくチキン』(やまかづ、文芸社、2011)という本だ。アマゾンの説明を読むと、機内食の本らしい。 海外旅行をしたことがある人など、い…

366話 ドラマのリアリティー

「南極大陸」、だめだ。 「華麗なる一族」(予告編しか見ていないが)と同じように、木村拓哉が、「昭和30年代」の人物には見えないのだ。おもな不具合は、髪型(と髪色)だ。大道具や小道具や衣裳や美術などスタッフが、全力で「昭和30年代」を作りだそ…

365話 神田神保町古本市 2011

今年も、神田神保町の古本市に行った。大混雑に耐えてでも、わざわざ古本市にでかけるだけの価値があるとは思えなくなって、もう十数年たつ。かつて、この時期になると、ついつい神田に足が向かったのは、古本市のころが、私が神田に行くその年最後になり、…