2010-01-01から1年間の記事一覧

303話 読書の話のおまけ  本を運ぶショルダーバッグの話

退屈な年末年始をお過ごしの方に、「粗品」代わりのおまけの話です。いつもより、ちょっと長めのサービスです。 荷物を手に下げるのはどうも苦手で、考えてみれば、高校生のときに、自作のショルダーバッグを使って以来、いままでずっとショルダーバッグを愛…

302話 読書の話 本はあぐらをかいて読む

プロの読書人の特徴は、やたらに数多くの本を読むということだ。欲しい情報を得るために読むので、その情報が載っている1章だけ読むこともあれば、わずか数行の文章を読んで、従来の情報を確認したりする。例えば、あるホテルの1960年代の名称を確認したく…

301話 読書の話 本を探すいくつかの方法

こういう話を何度か耳にしたことがある。 「インターネット書店というのは、ピンポイントで本を探して買うには便利だが、本屋の棚を眺めていて、まったく知らなかった本を偶然見つけて、読んでみたらおもしろかったというような体験はできない。ネット書店よ…

300話 経年変化ではないけれど・・・・音楽編

突然、演歌が好きになってカラオケに通っているということはない。好きな音楽という点では、全体的にはそれほど変わらないが、ちょっとした変化はある。好きな音楽ジャンルが嫌いになったということはないが、バカにしていた音楽と、拒絶していた音楽に、親…

299話 経年変化ではないけれど・・・ 読書編

本を読み始めて、そろそろ50年もたつのだろうが、読書傾向はまったく変わらない。小説を読まないという傾向は年々強くなっている。2010年に読んだ小説は、タイの推理小説『二つの時計の謎』(チャッタワーラック、宇戸清治訳、講談社、2009)ただ1冊だ。こ…

298話  我田引水の文化論は、ろくでもない結果を生む 後編

韓国人の学者が書いた『韓国人の作法』の話の続きである。 例えば、「朝まで生テレビ」(テレビ朝日)のような討論番組を見ていると、政治家や、いわゆる文化人と呼ばれる人が、こういう話を始めることがある。 「ほかの言語とは違って、日本語には敬語があ…

297話  我田引水の文化論は、ろくでもない結果を生む  前編

書店で、もう少していねいに内容を点検してから買えばよかったと、後悔している。私は、本を選ぶ才能がないのだろうか。しかし、ライターは「転んでも、タダでは起きない」。つまらない本を読んでも、コラムのネタを握りしめて、すっくと立ち上がったのであ…

296話 DFSと日本人の海外買い物旅行 

戦後の日本で、GHQの兵士として4年間過ごし、アメリカに帰国して、コーネル大学ホテル経営学部に入学したチャック・フィーニーのビジネス物語を描いたのが、『無一文の億万長者』(コナー・オクレリー著、山形浩生・守岡桜訳、ダイヤモンド社、2009)だ…

295話 今はもうまぼろしの、日比谷野音コンサート 

キャロルのステージを見たことがあるのに、すっかり忘れていたという話はこのアジア雑語林の151話で書いたが、先日、もうひとつ、有名だがまぼろしのバンドのステージを見たことを思い出した。 1970年代前半のある日の夜、ちょっとした知り合いから電話があ…

294話 元外交官が書いた変な本

旅行や留学や仕事などで外国に滞在している日本人の様子を、日本の大使館員から見たらどう映るのかという興味で、いままで外交官モノの本を何冊か読んできているが、今回は『まじめ領事の泣き笑い事件帖』(西端国輝、文芸社、2006)。この本は、いままで読…

293話 阿里山的姑娘

新聞の書籍広告が気にかかった。『阿里山カフェ レシピ・ブック』というその本には、埼玉のカフェだという説明があった。阿里山と埼玉のふたつのキーワードから、「もしや・・」という心当たりがあった。さっそく、ネットで阿里山カフェを調べると、想像した…

292話 法律的には問題ないのでしょうが

たまには、ブログのような文章にしようか。 きのう、ブックオフに行った。資料になりそうな本やCDを選びレジに運び、代金とポイントカードを出した。 「恐れ入りますが、ポイントカードは10月1日から使えなくなりました」 店員と、途中から助っ人に入った…

291話 出藍の誉れ

鶴見良行さんに会ったのは、たった一度だけ、それもわずか1分ほど立ち話をしただけだ。アジア関連のあるパーティーで、知人が紹介してくれて、やっと話をすることができた。1990年の春だったと思う。なぜ、会った時期をはっきり覚えているかと言えば、読ん…

290話 ヒップとフリースクール・ストリート

『ヒップ アメリカにおけるかっこよさの系譜学』(ジョン・リーランド著、篠儀直子・松井領明訳、ブルース・インターアクションズ、2010)の、訳者紹介を読んだら、篠儀氏は、『働かない』の共訳者だとわかった。変わった名前だから、どこかで目にした名前だ…

289話 「世界 それぞれの最高峰」というテレビ番組

テレビ局では、まず採用されそうもない企画だろうが、ぜひ見たい番組がいくつもある。そのひとつは、「世界 それぞれの最高峰」という番組だ。 7000メートル級の登山記録といった番組は、いままでに何回も放送されている。高い山は、それだけで絵になるから…

288話 神田古本まつりのころ 後編

昨年も、11月1日に古本まつりに行った。もとより「買い出し」目的ではなく、散歩である。昔は、定価の半額だと「安い!」と思ったのだが、アマゾンの1円本や、ブックオフの105円本のせいで、定価1980円の本に1000円の値札がついていても、「たいして安くも…

287話 神田古本まつりのころ 前編

今年もまた、神田古本まつりの季節がやって来た。10月27日(水)から11月3日(水)まで、神田神保町のあちこちで開催される。 神田古本まつりは今年で51回目になるそうだが、私が初めて行ったのは、さて、いつだったか。1970年代だったか、あるいは80年代に入っ…

286話 高い話と多い話を、ちょっと

数年前、鹿児島県で一番高いビルは県庁舎だと知って、えらく下品なことをするものだと思った。県の公務員が県民を見下ろし、見下して、知事は藩主(城主)にでもなったかのように、天守閣(知事室)にいる図は、なんとも下品だ。県内で最も高いビルが県庁舎…

285話 ヤシ殻の椀を出ろ その4

ベネディクト・アンダーソンが研究者の文章について書いた部分を、要約してみる。 学生は、学部時代はそれぞれに個性ある文体で小論文を書いているのだが、大学院に入ると、読者を意識するようになる。同じディシプリン(一応、「研究領域」としておこう)の…

284話 ヤシ殻の椀を出ろ その3

ベネディクト・アンダーソンの『ヤシガラ椀の外へ』を大いに気に入ったのは、私が日ごろ言っていることを、見事に表現してくれているからだ。 学者や学術書の編集者と会うたびに、つい、次のようなことを言ってしまう。 近頃読む本が、いっこうにおもしろく…

283話 ヤシ殻の椀を出ろ その2

『ヤシガラ椀の外へ』は、ちょっと変わった本だ。一応、著者ベネディクト・アンダーソン、翻訳者加藤剛ということになっているが、正確には、ふたりの共著に近い。英語の本を翻訳したものではなく、そもそも原本となる英語の本などない。日本の大学生や若き…

282話 ヤシ殻の椀を出ろ その1

書店の棚に、ちょっと変わった装丁の本を見つけた。カバーの絵は日本画なのだが、なんとなく日本趣味の西洋人が書いた本の雰囲気があった。著者名を見て、「やはり」と思った。 『ヤシガラ椀の外へ』(ベネディクト・アンダーソン著、加藤剛訳、NTT出版、…

281話 韓国の通貨ウォンのことが気になって・・・

困ったことになった。『星とともに走る』(四方田犬彦、七月社、1999)を読み始めて、1ページ目で止まってしまった。この本は、1979年から1997年までの、四方田の日記をまとめたものだ。1979年3月28日に韓国の労働ビザをもらい、日本語教師として韓国に行く…

280話 ユースホステルと海外旅行 5

『向こう三軒ヨーロッパ』はもう読んでしまったから、「復刊の必要は、なし」と思うが、まだ読んでいない記事はぜひ読みたい。 1965年の夏から秋にかけて読売新聞大阪版に連載された「地中海から日本へ」全56回は、東京本社では中近東部分の30回を「向こう三…

279話 ユースホステルと海外旅行 4

断片的情報ならば、この『向こう三軒ヨーロッパ』にも、興味深い記述はいくらかある。 ■旧制高校的教養 かねてから、「旅と教養」について考えている。かつての日本人の海外旅行は、旧制高校的教養が大黒柱になっているのではないかと思っていたが、やはりそ…

278話 ユースホステルと海外旅行 3

「向こう三軒ヨーロッパ」の連載が終わると同時に、黒田はふたたび100日間の取材旅行に出た。1965年6月からの旅は、「地中海から日本へ」というタイトルで、中近東から東南アジアまで56回の連載原稿を書いた。 1965年に出版された『向こう三軒ヨーロッパ』は…

277話 ユースホステルと海外旅行 1&2

前説 この「ユースホステルと海外旅行」の話は、第1話が公開されたところで、更新が止まった。だから、第2話から話を続ければいいのだが、それでは第1話を読んでいない人にはわかりにくいだろうと思い、今回は、1話と2話を合わせて公開する。 ユースホ…

276話 アジア雑語林 移転再開 

昨年12月以来の、アジア雑語林である。本格的再開は次回からにして、いままでのいきさつから、説明しておこう。 この「アジア雑語林」というのは、神田のアジア専門書店、アジア文庫の店主大野信一さんの企画で、原稿執筆を依頼されたもので、2002年11月26日…