読書 12 建築 1
建築の本の話を書こうかとネタ探しにアマゾン遊びをしていたら、見てはいけない雑誌を見つけてしまった。「建築知識」だ。紙面一新したことを知らなかった。おもしろい特集が多く、神保町の建築専門書店南洋堂に行ってバックナンバーをチェックしないと。建築関連の本は、まとめて古本屋に売却しようと思っていたのに、ああ、また深入りしそう・・・という話はともかく、まずは昔話から始めるか。
大工の仕事ぶりに興味があったというのは、小学生の関心分野としてはよくあることだろう。近所に新築現場があれば、いつまでも作業を眺めている少年だったが、自分で何かを作りたいと思ったことはない。プラモデルでさえ、関心がなかった。
高校を卒業して、建設現場の作業員をやった。そのせいで、香港に行っても竹の足場を組むのをじっと眺めていた。ビルに関しては、設計も建築にも興味はないが、住宅建築なら塀や駐車場工事も眺めている。モロッコのシャウエンと言えば、青い住宅の街として有名だが、そこでもいくつかの住宅建築現場を数時間は眺めていた。そこにモロッコらしさなどないのだが、退屈せずに眺めている。そういえば、ハノイでもビエンチャンでも、どこででも工事を眺めていた。
ひとりで街を歩くが大好きな私だから、街で見かける物事に注目する。それが街の人であり、建築物であり、看板であり、道路を走る乗り物などだ。
建築への深い関心は、まず「路上観察」から始まった。1986年に、こんな本が出た。
赤瀬川原平、藤森照信、南伸坊編 『路上観察学入門』 筑摩書房 1986年。著者のほとんどはすでに知っていた。散歩しながら、路上で見かける「なんだ、これ?」を見つける建築と美術の観察記だ。これは、おもしろい。次々に関連書を買い込むことになった。建築に興味を持つきっかけになったシリーズなので、ひとまとめにして紹介しよう。
『京都おもしろウォッチング(とんぼの本)』(赤瀬川原平、藤森照信、南伸坊、林丈二、松田哲夫、井上迅(扉野良人、新潮社、 1988年9月))
『路上探検隊奥の細道をゆく』(赤瀬川原平・藤森輝信・南伸坊・林丈二・松田哲夫・谷口英久、宝島社 、1991年7月)
『路上探検隊讃岐路をゆく』(赤瀬川原平、藤森照信、南伸坊、林丈二、杉浦日向子、宝島社、 1993年4月)
『路上探検隊新サイタマ発見記』(赤瀬川原平、藤森照信、南伸坊、林丈二、杉浦日向子、松田哲夫、井上迅、萩原寛、宝島社 、1993年12月)
『路上観察華の東海道五十三次』(赤瀬川原平、藤森照信、南伸坊、林丈二、松田哲夫、文藝春秋 文春文庫ビジュアル版、 1998年6月)
『奥の細道俳句でてくてく』(赤瀬川原平、藤森照信、南伸坊、林丈二、松田哲夫、杉浦日向子、太田出版 2002年8月)
『中山道俳句でぶらぶら』(赤瀬川原平、藤森照信、南伸坊、林丈二、松田哲夫、太田出版 、2004年5月)
『昭和の東京 路上観察者の記録』(赤瀬川原平、藤森照信、南伸坊、林丈二、松田哲夫、ビジネス社 、2009年1月)
『ハリガミ考現学』(南伸坊 、実業之日本社、1984)も読んだ。おもしろいことはおもしろいのだが、「宝島」のVOW、あるいは「ナニコレ珍風景」のようなものであったり、「見立て」の芸術論のようなものに食傷してきて、建築の勉強をちゃんとしておこうと思った。「見立て」の言葉遊びよりも、建築史の方がはるかにおもしろそうだった。