2072話 続・経年変化 その36

読書 12 建築 1

 建築の本の話を書こうかとネタ探しにアマゾン遊びをしていたら、見てはいけない雑誌を見つけてしまった。「建築知識」だ。紙面一新したことを知らなかった。おもしろい特集が多く、神保町の建築専門書店南洋堂に行ってバックナンバーをチェックしないと。建築関連の本は、まとめて古本屋に売却しようと思っていたのに、ああ、また深入りしそう・・・という話はともかく、まずは昔話から始めるか。

 大工の仕事ぶりに興味があったというのは、小学生の関心分野としてはよくあることだろう。近所に新築現場があれば、いつまでも作業を眺めている少年だったが、自分で何かを作りたいと思ったことはない。プラモデルでさえ、関心がなかった。

 高校を卒業して、建設現場の作業員をやった。そのせいで、香港に行っても竹の足場を組むのをじっと眺めていた。ビルに関しては、設計も建築にも興味はないが、住宅建築なら塀や駐車場工事も眺めている。モロッコのシャウエンと言えば、青い住宅の街として有名だが、そこでもいくつかの住宅建築現場を数時間は眺めていた。そこにモロッコらしさなどないのだが、退屈せずに眺めている。そういえば、ハノイでもビエンチャンでも、どこででも工事を眺めていた。

 ひとりで街を歩くが大好きな私だから、街で見かける物事に注目する。それが街の人であり、建築物であり、看板であり、道路を走る乗り物などだ。

 建築への深い関心は、まず「路上観察」から始まった。1986年に、こんな本が出た。

 赤瀬川原平藤森照信南伸坊路上観察学入門』 筑摩書房 1986年。著者のほとんどはすでに知っていた。散歩しながら、路上で見かける「なんだ、これ?」を見つける建築と美術の観察記だ。これは、おもしろい。次々に関連書を買い込むことになった。建築に興味を持つきっかけになったシリーズなので、ひとまとめにして紹介しよう。

 『京都おもしろウォッチング(とんぼの本)』(赤瀬川原平藤森照信南伸坊林丈二松田哲夫井上迅扉野良人、新潮社、 1988年9月))

 『路上探検隊奥の細道をゆく』(赤瀬川原平・藤森輝信・南伸坊林丈二松田哲夫谷口英久、宝島社 、1991年7月)

 『路上探検隊讃岐路をゆく』(赤瀬川原平藤森照信南伸坊林丈二杉浦日向子、宝島社、 1993年4月)

 『路上探検隊新サイタマ発見記』(赤瀬川原平藤森照信南伸坊林丈二杉浦日向子松田哲夫井上迅萩原寛、宝島社 、1993年12月)

 『路上観察華の東海道五十三次赤瀬川原平藤森照信南伸坊林丈二松田哲夫文藝春秋 文春文庫ビジュアル版、 1998年6月)

 『奥の細道俳句でてくてく』(赤瀬川原平藤森照信南伸坊林丈二松田哲夫杉浦日向子太田出版 2002年8月)

 『中山道俳句でぶらぶら』赤瀬川原平藤森照信南伸坊林丈二松田哲夫太田出版 、2004年5月)

 『昭和の東京 路上観察者の記録』(赤瀬川原平藤森照信南伸坊林丈二松田哲夫、ビジネス社 、2009年1月)

 『ハリガミ考現学』(南伸坊実業之日本社1984)も読んだ。おもしろいことはおもしろいのだが、「宝島」のVOW、あるいは「ナニコレ珍風景」のようなものであったり、「見立て」の芸術論のようなものに食傷してきて、建築の勉強をちゃんとしておこうと思った。「見立て」の言葉遊びよりも、建築史の方がはるかにおもしろそうだった。