2018-01-01から1ヶ月間の記事一覧

1107話 イタリアの散歩者 第63話

落穂ひろい シーフードのコース ナポリを散歩していたら、店頭の黒板に「コース料理8ユーロ」と掲げた店があって、「これは安い。試してみるか」と店に入った。テーブルのメニューを見ると、店先の黒板に書いてある料理がない。ウエイターに黒板を示して、…

1106話 イタリアの散歩者 第62話

落穂ひろい 三輪車 三輪自転車と三輪自動車の本を書いた者としては、旅先で三輪車を見ると、素通りできない。機械に弱いので、メカニズムの違いを観察したりはしないが、写真くらいは撮る。 イタリアで最初に出会ったのは、シチリアのパレルモだった。タイの…

1105話 イタリアの散歩者 第61話

落穂ひろい ああ、郵便 いままで、たまたま書きそびれてしまった事や、1回分にはならない小さな話題などを集めて、「落穂ひろい」として何回か書くことにしよう。 イタリアの郵便映画といえば、「郵便配達は二度ベルを鳴らす」(1942年)や「イルー・ポステ…

1104話 イタリアの散歩者 第60話

カラバッジョと光の自動販売機 ローマのサン・ルイージ・デイ・フランチェージ教会でカラバッジョの「マッテオの召出し」を見た時のことを、須賀敦子は「ふるえる手」(『トリアエステの坂道』収載)でこう書いている。 「(教会に)入っていくと、『マッテ…

1103話 イタリアの散歩者 第59話

リゾット ミラノの宿で、経営者のおばあちゃんに「この辺で、安くておいしいレストランを紹介してほしいのですが・・・」と情報を求めたら、「おいしい料理は、安くないのよね」と無表情に言い、「食べたいのは、どんな料理なの? ミラノ料理なの?」と追い…

1102話イタリアの散歩者 第58話

カンツォーネの時代 ローマで乗り換えて、シチリアのパレルモ空港に着いた。イタリア最初の日のことだ。空港からパレルモに行くバスの運転手は、退屈だったのか、それともニュースを聞きたかったのか、ラジオのスイッチを入れた。ラジオからイタリア語のおし…

1101話 イタリアの散歩者 第57話

イタリア映画 その3 いままで旅先でやっていたように、映画館でおもしろそうな映画を見つけたら、とりあえず見てみる。そういう事を繰り返していて、かなりの確率で名作に出会っているのだが、ローマでは散歩の途中で映画館に出会うという幸運に恵まれなか…

1100話 イタリアの散歩者 第56話

イタリア映画 その2 すでにイタリア各地の博物館に行き、期待外れの連続で、外れることには慣れているので、チネチッタの資料館にも、失望はしなかったものの、「もうちょっと、なんとか」と思う。規模が小さく、写真とポスターとDVD動画での作品紹介は…

1099話 イタリアの散歩者 第55話

イタリア映画 その1 ローマ地下鉄路線図を眺めていたら、”Cinecitta”という駅名が目に入った。世界の映画に多少なりとも興味のある人には、チネチッタは過去の栄光のことばだ。イタリア語で「映画の都」の意味で、イタリア映画の名作を生みだした撮影所だ。…

1098話 イタリアの散歩者 第54話

ローマの日本家屋 1096話で、エウルの国立イタリア民俗博物館(前川の意訳)で、日本家屋が映った古い写真があるという話を書いた。帰国してから調べてみたのだが、よくわからない。多少なりとも力を入れて調べ始めれば、時間がかかり、場合によっては資…

1097話 イタリアの散歩者 第53話

アッピア街道 イタリアの観光行政は、歴史遺産を食いつぶしているだけだという感想は、アッピア街道を歩いていて、なおさら強くなった。 カラカラ浴場は、遺跡という名の歴史の残骸に囲いをしただけだのことじゃないかということに気がついて、10分で飽きた…

1096話 イタリアの散歩者 第52話

E.U.Rに行ってみた 後編 エウルで行った3番目の博物館は、Museo Nazionale delle Arti e Tradizioni Popolariで、『地球の歩き方』は、原語どおり、民衆芸術伝統博物館と訳しているが、展示の内容を考えて意訳すれば、国立イタリア民俗博物館だろう。これが…

1095話 イタリアの散歩者 第51話

E.U.R(エウル)に行ってみた 前編 ローマ市の南、もう少し下ると、もうローマ市ではなくなるぎりぎりの地域にE.U.Rがある。これでエウルと読む。1942年に開催予定だったローマ万博(Esposizione Universale di Roma)の会場予定地を今も万博の頭文字をとっ…

1094話 イタリアの散歩者 第50話

フェデリーコ・ツッカーリの家から始まる話。 それは『イタリア歩けば・・・』(林丈二、講談社、2001)の239ページの2枚の写真から始まった。ローマのおもしろいもの散歩の章だ。 「フェデリーコ・ツッカロの家の建物 Via Gregorana」という写真説明があっ…

1093話 イタリアの散歩者 第49話

バチカンをめざせ 長い空白ののち、またローマに来た。 初めてローマに来た1982年も、テルミニ駅そばの安宿に泊まったはずだが、それがどこなのか記憶がない。多分、今回泊まった場所とそれほど離れていないだろうと思う。トリノからローマに来て、宿探しに1…

1092話 イタリアの散歩者 第48話

トリノにて 〜モーレ・アントネッリアーナと国立映画博物館 高層建築物が見えないトリノで、頭ひとつどころか、腰から上が飛び出しているのがミーレ・アントネッリアーナだ。4階建てくらいの石の建物が並ぶなか、167メートルの塔は特異な風景を作っている。…

1091話 イタリアの散歩者 第47話

トリノにて 〜自動車観察 自動車博物館に行った帰り道、イタリアと自動車というテーマを考えた。 イタリアの街を歩いていると、当然イタリア車が多く走っているとわかる。これは想像通りだが、その数は想像以上だ。「日本では日本車ばかり走っている」という…

1090話 イタリアの散歩者 第46話

トリノにて 〜自動車博物館 トリノは、ミラノを小さくしたような街だから、小さくなった分、歩いて街を把握できると思ったが、そうでもない。駅から北にでかいということは、前々回にトラムの旅で書いた通りだから、街探検の楽しみはある。 トリノの地図を見…

1089話 イタリアの散歩者 第45話

トリノにて 〜中国料理 夕方、突然、中国料理が食べたくなった。散歩の途中に見たファーストフード店風のガラス戸に、中国料理の写真が貼ってあった。安そうな中国料理店だ。散歩をしていて、それを思い出したのだ。「そうだよ、今夜は中国料理だよ、絶対!…

1088話 イタリアの散歩者 第44話

トリノにて 〜なんだか、いい。 ミラノにいたときは、イタリアではミラノがいちばん居心地のいい街かもしれないと思ったが、トリノに来たら、「トリノのほうがずっといいな」と思った。トリノ駅(トリノ・ポルタ・ヌオーバ駅)を出て振り向いたときに、そう…

1087話 イタリアの散歩者 第43話

ミラノへ行ってみようか 後編 冷たい風が吹き、静寂にして端正。勤勉で寡黙に働く人たち。これが、北部の街か。こういう街が嫌いなはずなのに、なぜ嫌悪感を抱かないのか。朝のミラノを散歩しながら考えた。昔だったら、こんな街、大嫌いなはずなのに。 その…

1086話 イタリアの散歩者 第42話

ミラノへ行ってみようか 前編 日本からイタリアに行くとすれば、ローマ着にするかミラノ着にするかを選ぶ必要がある。ほかにも国際線の便が発着する街もあるが、だいたいはローマかミラノだろう。観光地として有名なのは、ミラノなどがある北部とフィレンツ…

1085話 イタリアの散歩者 第41話

ナポリは危険か 後編 前回書いたようなことを日記に書いた。帰国して、イタリアは本当に危ないか。ナポリがどのくらいひどい街か、ちょっと調べてみたくなった。 インターネットで資料を探すと、在ローマの日本大使館が集めた資料に、イタリアの治安事情を紹…

1084話 イタリアの散歩者 第40話

ナポリは危険か 前編 大都市ミラノの中央駅は、ムッソリーニ時代に建てられたもので、威張りくさった嫌な建造物だ。ローマのテルミニ駅に次いで利用者が多い駅らしいが、駅前広場を出ると、人はほとんどいない。スカラ座やドゥオーモやビットリオ・エマヌエ…

1083話 イタリアの散歩者 第39話

コーヒーの話 下 イ タリア旅行を終えての帰り道、ちょっとバンコクに立ち寄って、友人と食事をした。昼食をいっしょに食べた友人も、夕食をいっしょに食べた別の友人も、私に同じ質問をした。 「イタリアで、いちばんうまかったのは、なに?」 そんなことは…

1082話 イタリアの散歩者 第38話

コーヒーの話 中 スペインでもコーヒーとミルクの量などによっていくつもの種類があるのだが、困った記憶はない。しかし、イタリアでは、頭を抱えた。カフェ・アメリカンが店によって違うのは、しょうがない。それはそれでいい。しかし、だ。よくわからん。 …

1081話 イタリアの散歩者 第37話

コーヒーの話 上 ポルトガルもスペインンもイタリアも、コーヒーはエスプレッソだ。コーヒー豆を煮だすのがトルコやギリシャのやり方だが、ポルトガル、スペイン、フランス、イタリアなどのコーヒーは、コーヒーの粉に熱い蒸気を通して抽出する方法だ。この…