1082話 イタリアの散歩者 第38話

 コーヒーの話 中

 スペインでもコーヒーとミルクの量などによっていくつもの種類があるのだが、困った記憶はない。しかし、イタリアでは、頭を抱えた。カフェ・アメリカンが店によって違うのは、しょうがない。それはそれでいい。しかし、だ。よくわからん。
 こういうことだ。ベネチア駅のコーヒーカウンターは、客はまずレジに行き注文して、カネを払う。そのレシートを持ってカウンターに行くと、レシートを見て注文の品を出してくれるという食券方式だった。「これがイタリアの方式」と解説している本があるが、体験的には、数例しかない。
 レジの壁に貼りだされたメニューを眺めていると、「カフェ・ラッテ」を試したくなった。飲んだことのないものを試したいと思ったのだ。レジで、「カフェ・ラッテをください」といい、1.60 ユーロを支払い、そのレシートをカウンターにのせると、カウンターの男はコーヒー係に私の注文を伝えた。
「カフェ・ラッテ・マキアート!」
「マキアート?」。レシートを見直すと、「CAFFE LATTE」になっている。私はイタリア人同様スターバックスが嫌いで(だから、イタリアにはスターバックスはない)、イタリア式コーヒーをよく知らない。カフェ・ラッテだの、マキアートだの、どう違うのかわからない。帰国して、インターネットで調べてみると、ウィキペデイァの記述が、何を言っているのかまるでわからないから、かえっておもしろい。
 

 カフェ・ラッテ」と言って注文すると、これが来た。ガラスカップに入っていることが多いらしい。


 ニュースでは、2018年にイタリアにもスターバックスが進出するというが、今のところはこういう類似店しかない。

 カフェ・ラッテの解説。「イタリアでは、バーではカフェ・マッキャート(caffè macchiato)と呼ぶエスプレッソに牛乳をたらしたもののほうが比較的一般的」。ということは、カフェマキアートに牛乳を入れると、カフェ・ラッテかい? いや、わかりにくい日本語だが、「エスプレッソに牛乳をたらしたもの」がマキアートで、それはカフェ・ラッテでもあるという意味か?
 ラッテ・マキアートを調べる。「ラッテ・マキアートは幾つかの点においてカフェ・ラッテと大きく異なる。まず第一に、ラッテ・マキアートはカフェ・ラッテのようにミルクをエスプレッソに加えるのではなく、エスプレッソをミルクに加える」。ミルクをエスプレッソに入れると、カフェ・ラッテ。エスプレッソをミルクに加えると、ラッテ・マキアートということか。わからん。実際にはさまざまなマキアートやラッテがあって、私の理解を超えているが、どういうものであれ、ミルクがたっぷり入ったコーヒーは私好みではないので、まあ、どうでもいい。私の生活にはまったく関係のない話だから、ピザのときとは違い深く調べる気はない。
 

 コーヒー自販機のメニューを見ると、「カフェ・ラッテ」がないことがわかる。これが、ウィキペディアで、「イタリアではカフェ・ラッテ・マキアートが比較的一般的」という証拠なのか。私はめったにコーヒーにミルクを入れないので、どうでもいい話だが。

 私にとって、イタリアでもっともうまいコーヒーは、マクドナルドのコーヒーだった。壁のメニューの「Caffe Americano 1.10」を見て注文した。日本のマクドナルドのコーヒーの味を知らないのだが、日本のコンビニコーヒーのような味だった。そういう薄いコーヒーが好みではないが、イタリアでは「それでも、まだ、マシ」と感じるコーヒーで、ナポリやローマでは宿の近くにマクドナルドがあったので、夕食後、そこでコーヒーを買って宿に戻るという日課だった。スペインのマクドナルドには、アメリカン・コーヒーはなかったなあ。
 バーガーキングアメリカン・コーヒーは、エスプレッソに湯を加えた味だった。マクドナルドはアメリカの味だったが、バーガーキングはイタリアの味だったというわけだ。


 バーガーキングのコーヒー。


 この建物が、ベネチアバーガーキングだが、表にいっさいの看板がない。店内と中庭にしか看板がないから、スマホで調べた人か、私のように偶然見つけた人しか利用できない。