2016-01-01から1年間の記事一覧

895話 イベリア紀行 2016・秋 第20回

ポルトガルの歴史をちょっと ポルトガルもスペインも、過去の栄光の夢をまだ見ている。大航海時代と、植民地時代の夢である。 植民地獲得にはカネがかる。維持するのにもカネがかかる。そのカネは、植民地で稼ぐ。稼いだカネは、宮殿と教会と船の建造費や武…

894話 イベリア紀行 2016・秋 第19回

リスボンの小さな博物館巡り リスボン散歩の話を続ける前に、遅ればせながら、リスボンという地名について書いておきたくなった。そういうことは、ガイドブックにはたいてい書いてないからだ。 「リスボン」は、ポルトガル語ではない。英語でLisbonと書くの…

893話 イベリア紀行 2016・秋 第18回

食堂にて 定食とバカリャウ その2 食堂で、バカリャウを注文した。おばちゃんがちょっと笑ったのは、「あんた、知っているね」という同好の志への微笑みである。 ポルトガル人やスペイン人にとって、バカリャウBacalhau(スペイン語ではバカラオBalao)は、日…

892話 イベリア紀行 2016・秋 第17回

食堂にて 定食とバカリャウ その1 観光地リスボンも、表通りからちょっと入ると、ほとんど観光客が足を踏み入れない路地がある。そういう場所の食堂は、英語のメニューがある表通りのレストランよりも3割以上安い。表通りのレストランの店頭に掲げた定食メ…

891話 イベリア紀行 2016・秋 第16回

ファドの1日 その3 アマリア・ロドリゲス記念館を出て、坂をちょっと下ると、屋根のあるバス停があった。路線図を見ると、ここを通るバスに乗れば、コメルシア広場に行けることがわかった。普段なら歩くところだが、路面電車を乗りまわしたくて、路面電車、…

890話 イベリア紀行 2016・秋 第15回

ファドの1日 その2 1999年10月5日、ポルトガル中南部のアレンデージョ地方から帰宅したアマリア・ロドリゲスは、翌6日の朝8時、リスボンのこの家の寝室で亡くなっているのを発見された。79歳だった。ポルトガルは3日間喪に服し、葬儀は国葬となった。この…

889話 イベリア紀行 2016・秋 第14回

ファドの1日 その1 リスボンの地図を見ていたら、宿のすぐ近くにアマリア・ロドリゲスが最後まで住んでいた家があることを知り、出かけることにした。朝飯を食べてすぐではまだ早いだろうと思ったが、どうせ道に迷ったり、寄り道したくなるだろうから、早め…

888話 イベリア紀行 2016・秋 第13回

唐突ですが、写真とカメラの話 昔からこのブログを読んできた人は気がついたかもしれないが、従来の「改行1行アキ」というレイアウトがなくなり、印刷物と同じ普通の書式になった。いままで、このamebaブログの使用説明書をまったく読まずにブログを書き続け…

887話 イベリア紀行 2016・秋 第12回

三輪自動車 自転車に座席付きリアカーをつけたような三輪自転車を、タイではサムロー(三輪の意)、ベトナムではシクロ、インドネシアではべチャといい、地方都市ではまだタクシーとして使われている。起源がよくわからないのだが、1930年代なかばにアジア各…

886話 イベリア紀行 2016・秋 第11回

観光客の大群 リスボンを訪れた観光客は、かならずベレンのジェロニモス修道院に行く。私もベレンにはすでに何度も行っているが、ベレンに行く最大の理由は、路面電車で長い旅ができるからだ。修道院には用がないので、足を踏み入れたことはない。 今回もベ…

885話 イベリア紀行 2016・秋 第10回

リスボンに、居たい 今回の旅は、まず「スペイン北部へ行く」という案が浮かび、ついでにポルトガルにちょっと寄りたいという希望があった。「ちょっと」とはいえ、感覚のうえでは、「ぜひとも」だった。 14年ぶりにリスボンの街を歩き始めると、思い出がよ…

884話 イベリア紀行 2016・秋 第9回

リスボンの宿 14年前は、リスボンの宿を歩いて探した。リスボンに着いてすぐ、市内地図を見ていて、「宿の窓にはデージョ川が広がる」というのがいいなとひらめき、何の情報もないまま、コメルシオ広場から川沿いにアルファマ方面に歩きだした。リスボンは17…

883話 イベリア紀行 2016・秋 第8回

空中遊覧と地下探訪 初めて空路でリスボンに飛んだ。マドリッドを出た時は雲の上だったのだが、「間もなくリスボンに着陸します」というアナウンスが流れたころ、窓の下を見ると、リスボンの南から進入するのだとわかった。かつて半日遊んだ団地が見える。リ…

882話 イベリア紀行 2016・秋 第7回

中国余話 北京空港にて スペインに向かう往路の北京空港で、こんなことがあった。 空港の出入国口の手前だから、中国に入国したわけではないのだが、空港そのものはまさしく中国で、それが生涯最初の中国との遭遇だった。 乗り換えのときの荷物検査でのこと…

881話 イベリア紀行 2016・秋 第6回

苦渋の選択 カタール航空は安くて上等という航空会社なのだが、時間的に問題があった。帰国便は羽田空港着になるのだが、到着時刻が22時30分着なのだ。そうなると、空港ビルを出るのは23時をかなりすぎるから、そのまま帰宅はできない。高いから、タクシーで…

880話 イベリア紀行 2016・秋 第5回

イベリア半島 ミラノと同じか、あるいはミラノよりは暖かい場所にしようと考えた。ミラノの北ではなく、西に注目すれば、イベリア半島がある。ミラノからマドリッドに飛んだらどうだと航空運賃を調べたら、高い。ミラノ経由にしないで、日本から直接マドリッ…

879話 イベリア紀行 2016・秋 第4回

イタリア北部案急浮上 申し訳ないが、旅行先を決めるグダグダ話に、もう少しおつきあいいただきたい。どこに行こうかとあれこれ調べ、考えている時間が好きなので、こういう話が長くなるわけで・・・。 アジアをやめたら、ヨーロッパか。イタリアはどうか。 …

878話 イベリア紀行 2016・秋 第3回

インドか、それともスリランカ インドに行こうかと、ふと思った。最後に行ったのが1978年だから、大昔だ。それ以後、長い間インドに行きたいと思ったことがない。昨年のことだが、ふと「インド!」という国名が頭に浮かび、ちょっと行きたくなりビザ事情を調…

877話 イベリア紀行 2016・秋 第2回

アムステルダムは、寒いだろうなあ 私の好奇心は、希薄かつ脆弱しかも狭小だとは思いたくないのだが、「どこに行こうかなあ・・・」と考えると、いつも同じ街しか頭に浮かばない。行きたい街はそれほど多くないのだ。訪問国の数を増やしたいなどという欲望は…

876話 イベリア紀行 2016・秋 第1回

ポルト 鉄の橋が好きだ。美しい鉄の橋を見ると渡りたくなってしまう癖(へき)というものが私にはあって、サンフランシスコのゴールデン・ゲイト・ブリッジの下を船でくぐったら、もっと近くで見たくなり、目の前で見たら渡りたくなり、歩いて渡った。帰りは…

875話 カツオとマグロ

それは、スーパーでツナ缶の材料表を見ていたときだった。ツナ缶なのに、材料は「マグロ/カツオ」とある。ツナ(Tuna)はマグロで、カツオはBonitoだというくらい私でも知っている。だから、ツナ缶にカツオが入っていたら規則違反だろう。しかし、堂々と表記…

874話 化粧の話から病室と加湿器

テレビで小津安二郎の「晩春」(1948年)を見た。ウィキペディアによれば評判の高い映画らしいが、私はおもしろいとは思えなかった。あまりおもしろくないと思いながらも最後まで見たのは、1948年の日本を見たかったからでもある。古い映画はタイムマシーン…

873話 ちょうどいい長さの文章

旅から帰国したが、例によって旅行記の下準備を始めている。調べなければ書けないことが多いし、読んでおきたい本もあって、何冊か注文している。そういうわけで、もし旅行記を期待しているような方がいらっしゃるなら、しばし待たれよ。その間、つなぎに、…

872話 スポーツアナウンサーの日本語力

スポーツのアナウンサーをどう評価すればいいのか、迷う。古館伊知郎がフリーアナウンサーになったころだったか、こういう話をしていた。 「これまでアナウンサーがやっていた仕事は、いまはタレントとか俳優がやるようになったでしょ。バラエティーの司会と…

871話 本人が思っているほど幅広くはない

言語学者、黒田龍之助の本はかなり読んでいる。読みやすいのはよくわかっているので、言葉の本を探しているとついつい買ってしまうのだが、読めばちょっと腹が立つ。 黒田は高校時代からロシア語を学び始め、大学ではロシア語を専攻し、ロシア語教師となった…

870話 世界音楽との出会い方

毎日、朝からユーチューブ(以下YTと略)で音楽を聴いているのだが、9月末のある日、YTの画面を出したら、リストに出てきた音楽のほとんどがタイ音楽のライブ映像だった。もう半年以上、YTでタイ音楽など聴いていないので、突然、アンカナーン・クンチャイや…

869話 いやな日本語

巷には、正しい日本語の本や、間違った日本語を指摘する本など各種多数出版されている。日本語学の問題ではなく、エッセイで、「感覚としてこういう日本語はいやだ」と例にあげている日本語は、私もいやだ。耳障りな言葉だ。個々の例をあげる前に、「嫌な言…

868話 患者様

もう「昔の話」といってもいいのだろうが、初めてパソコンを使い始めたばかりのころだ。そのころ、原稿を書く上で、調べなければいけない細かい事項がいくらでもあった。例えば、ある本の正確な書名や出版社名や出版年、あるいは映画の監督名や公開年といっ…

867話 中国人観光客の行状を嘲笑する前に 後編

大阪の工業高校を卒業した澤田秀雄は、ドイツの大学に留学し、現地で貯めた資金をもとに帰国後H.I.S.を起業した。ドイツでなにをやってカネを作ったのかという話は、活字にもなっているし、テレビのインタビューでも答えている。「日本人をナイトツアーに…

866話 中国人観光客の行状を嘲笑する前に 前編

昨今、中国人観光客の「爆買い」や行儀の悪さがマスコミの話題となり、反中国勢力を喜ばせているのだが、バブル経済に踊っていた時代の日本人の海外旅行を知っている人は、ノー天気に中国人を笑っていられないはずなのに、「ニッポン万歳マスコミ」は過去を…