873話 ちょうどいい長さの文章


 旅から帰国したが、例によって旅行記の下準備を始めている。調べなければ書けないことが多いし、読んでおきたい本もあって、何冊か注文している。そういうわけで、もし旅行記を期待しているような方がいらっしゃるなら、しばし待たれよ。その間、つなぎに、旅行前に書きためていた原稿を放出する。

 ネット検索をしていて、求めていた情報にヒットしたとする。読む気が失せるのは、他人に読ませるということを考えていないものだ。地に赤や黒を敷いて、文字が黄色とか緑といったものは、まず読まない。
 いーかげんにしか読まないのは、匿名のものだ。自分の身元を明らかにしない文章は、信用に値しない。匿名なら、いくらでもウソを書ける。ある情報を確認せずに、無責任に書き散らすことに罪悪感はない。内部告発をしているわけでもなく、刺激的な文章を書いているわけでもなく、会社員でもない人が匿名にしている理由が分からない。匿名だから全部ダメというわけではないので、内容に注意して読む。なかには名品もある。
 読む気がしないブログには、こういうのもある。文章力のない人に多いのだが、写真が多く、文章が1行に2行アキというようなもので、検索でひっかかったにしても、すぐ消す。反対に長いのも困る。モニターで長い文章は読みたくない。50字×200行とか、65字×120行というもので、「内容はいい」と判断したら、プリントアウトしてからじっくり読むが、最近はそういう文章は減った。
 だから、自分がブログを書く場合は、一応は長さを気にする。私の場合、モニターで文章を読む限度は内容や文体にもよるが、1500字程度までだろうと思っている。書く立場になれば、毎日更新する身辺雑記なら100字でも200字でもいいのだが、ある程度の内容がある(と自分では思っている)文章だと、1000字以上は必要だ。下書きをしていて、1300字くらいになってしまうと、しかたなくそのまま載せるか、加筆して2回分にするか考える。ただし、何度か手直しするから、傾向としては、どうしても長くなるキライがある。雑誌原稿ではないので、長さは自由だし、さまざまな情報を張り付けることもできるからどんどん長くなる。印刷媒体と違って、編集者がいないから、「この部分、無駄」などと言ってくれる人がいない。誤字脱字、勘違い、重複などを指摘してくれる人もいないというわけで、どうしても誤記も多くなる。加筆よりも、削除がはるかに難しいのだ。
 ちなみに、これまでで800字ほど(空欄部分も含めて)だから、1000字は長くないと思うが、文章を読む習慣のない人には長いのだろう。
 800字でも1000字でも、要は内容であり、寸鉄人を刺すような文章にあこがれる。警句や広告コピーや俳句のような簡潔な文章で表現できればいいのだが、なかなかに難しい。ツイッターで感情を伝えることはできても、複雑な情報を伝えるにはつらい。印象や感想ではなく、情報を伝えたいと思うとどうしても長くなる。