2006-01-01から1年間の記事一覧

167話 続・リバーサルフィルム

雑誌の取材で、長野県の馬籠(まごめ)に行ったときだ。 バス停近くを歩いていたら、前日の列車ですぐ近くの席に座っていた若い夫婦が、バスから降りてくるのが見えた。日本人の夫と西洋人の妻という組み合わせだ。 「おや、また会いましたね」 ちょっと立ち…

166話 リバーサルフィルム

先日、タイで撮影したフィルムの現像が今日できる予定なので、買い物がてら夕方にでも店に寄ってみようかと考えていたら、いままで使ってきたリバーサル フィルム(スライド用フィルム)のことをいろいろ思い出した。というのも、今回のタイ旅行で初めて、従…

65話 『世界の旅』時代の執筆者

海外旅行が自由化されたのが1964年だが、その少し前に、中央公論社から『世界の旅』 (編集委員/大宅壮一、桑原武夫、阿川弘之 定価360円)という10巻本が刊行された。もう少し時代があとなら、このような企画でカラー写真を多く使っ た「見るだけ…

164話 『建築家なしの建築』

紆余曲折ののち、ひとまわりして1979年のあの日に戻ったらしい。 1979年のその日、私は知り合いの編集者と雑談していた。彼は、雑誌の新企画をあれこれ考えているところなんだと言って、1冊の建築雑誌を見せた。 「こういうような内容で、特集がで…

163話 年表は、恐ろしい。

この雑語林の156号で、デンバーの吉野家のことを書いた。あの店が吉野家の海外第一号 店だということは知っていたが、いつ開店したのかは知らなかった。はっきり言えば、そこまで詳しく調べてみようとは思わなかったのだ。それが、ひょんなこ とでわかっ…

162話 校閲読書

最近、本を買う量は「やや多い」という程度なのだが、読み残しが多すぎる。棚の未読コーナーには、順番を待っている本が常に5冊程度はあるのが普通だったが、いまは棚に入りきれず、床に十数冊積んである。 読む速度が落ちた理由はいくつかあるのだが、その…

161話 日本橋上空

いつのことか思い出せないが、初めて日本橋を見た時の印象は、「ああ、なんてことをして くれたんだ」というものだった。橋の上を高速道路が覆っている。日本の役人は、こういうことを平気でできる神経の持ち主なのだ。いや、役人だけじゃないだ ろう。東京…

160話 色香に惑う少年

1963年。 東京オリンピックの1年前、春までは小学校4年生だった。4月に5年生になった。どうやら、その頃に、私は色香というものを全身に感じたらしい。 あの時代は、小学生の男の子が芸能人に夢中になるというのは例外的な存在で、たいていの男の子…

159話 海外旅行と植草甚一の時代

インターネットで検索していて、もっともよく出会うサイトは、じつはこの雑語林なのであ る。私がもっとも知りたい方面の事柄を探せば、この前川がもっとも関心がある事柄を書き続けているこのサイトがヒットするのは当たり前といえば、当たり前 なのだが、…

158話 昭和30年代ブームを疑え

「ALWAYS 三丁目の夕日」という映画が大ヒットしたらしい。進駐軍兵士となった日 系アメリカ人2世の物語でもないのに、英語の題名をつけるその植民地根性、英語かぶれ思想が気に食わない。輸出時の英語タイトルというわけではなく、日本 人向けに公開…

157話「沈没」なる語について

いままでにその名を聞いたことが一度もないのだが、同朋大学という大学があるらしい。イ ンターネットでちょっと調べ物をしていて、「同朋大学同窓会文化講演会」の報告がパソコンのモニターに姿を見せた。講演会が行なわれたのは2002年11 月で、講演…

156話 世界の吉野家

海外の吉野家についてちょっと調べたいことがあって、吉野家のホームページに当たったら、これがおもしろい。外国の吉野家全リストがある。 アメリカにはニューヨークとカリフォルニア州各地にあるが、最初の海外支店となったデンバー店がなくなっていること…

155話 1985年の日韓

本を読み始めたら、その1行目で中断してしまった。 『韓国道すがら 人類学フィールドノート30年』(嶋陸奥彦、草風館、2006年、2300円)は、1985年に出版した『韓国農村事情』を第一部に再録し、第二部はそれ以降の事情を加筆して一冊にまと…

53話 おぞましき合併を記念して ― 有名な市町村 ―

ずっと前から気になっていたのは、全国レベルで有名な市町村はどこなんだろうという疑問 だ。全国の市町村は、村おこし・町おこしで、知名度向上運動をくりひろげているところが多いのだが、さて、その成果はどうだろう。今回のタイトルを「おぞ ましき合併…

152話 全国アジア料理店調査をやってみようかと思ったが・・・

ブックオフ調査に続いて、今度はアジア料理店だ。すでにタイ料理店の調査はやっているので、今回はインドネシア料理店とフィリピン料理店を調べてみることにした。調査法は例によって、インターネット情報だ。 日本におけるアジア料理店としては、中国、朝鮮…

151話 リーゼントのキャロル

長髪派少年だったから、短髪青少年が大嫌いだった。 丸坊主、角刈り、スポーツ刈りの青少年の、単純な頭脳構造が嫌いだった。年齢による秩序、絶対服従の構造。それでいて、コソコソとごまかして、センパイ がいないところではうまく立ち回ってごまかすとい…

150話 産経アドベンチャープラン

前回に引き続いて、大学生の探検についてちょっと書く。というのは、前回も取り上げた『京大探検部』(京大探検者の会、新樹社、2006)に、気になる文章があったからだ。 京大探検部OBの永井博記が書いた思い出話のなかに、次のような文章がある。 探…

149話 アサヒ・アドベンチュア・シリーズ

戦後の若者の海外憧憬を知る資料として貴重な本が出た。本多勝一が最初の部員で、のちに石毛直道などが入部する京都大学探検部の歴史を書いた『京大探検部 1956−2006』(京大探検者の会編、新樹社、2006年、2800円)がきわめておもしろい。 …

148話 小さな穴が大きくなって(3)

ジンジロゲ ヤ ジンジロゲ 久留島秀三郎のことを調べていたら、私の敵だとわかった。それは、こういうことだ。 彼は、「日本」は「ニッポン」であって、「ニホン」ではないという主張の人で、そう思っているだけなら害はないのだが、ボーイスカウトの重鎮と…

147話 小さな穴が大きくなって(2)

日本のアンデルセンの娘婿 朝日新聞のパリ支局長が書いた『ヨーロッパ手帳』(小島亮一、朝日新聞社、1961年)の「あとがき」に出てきた「三つくらいの時から久留島武彦先生の早蕨幼稚園にはいった」という部分にひっかかたのは、「久留島」という苗字に…

146話 小さな穴が大きくなって(1)

朝日新聞パリ特派員 インターネット古書店で旅の本を探ることを、年に何回かしている。対象となる本の数は多 いから、毎回テーマを決めてチェックしている。たとえば、アフリカの本だとか、船旅の本だとかいった具合だ。先日やったのは、地域はどこでもいい…

145話 まず、日本語を(2)

電話セールス 午前中の電話はセールスだと、ほぼわかっている。わかってはいても、電話にでないわけにもいかず、しかたなく受話器をとる。電話に対して、昔は「はい、前川です」と礼儀正しく接していたのだが、セールス電話が増えるにつれて名乗らなくなった…

144話 まず、日本語を(1)

外国語のカタカナ表記 ずっと前から、韓国語(朝鮮語)のカタカナ表記について、文句を言ってきた。キムチはKIMUCHIではなく、KIMCHIのようにMに母音がないから、キムチのムは小さく表記すべきだというおかしな考えの人が韓国関係者に少なから…

143話 ブックオフの地方分布

日本のタイ料理店調査に引き続き、日本のブックオフ分布を調べたくなった。ブックオフというのは、古書業界では「新古書店」と呼ばれる新しいタイプの古本屋で、「本の内容は無視し、新しくきれいなら買い取る」というシステムで運営されている。 こういう調…

142話 HIBACHI

あれは多分、1980年代の初めころだったと思う。英語で書かれたインドネシア料理の本を読んでいて、次のような文章にびっくりした。よく覚えていないが、著者はアメリカ人かオーストラリア人だったような気がする。 サテはHIBACHIで焼くとうまくで…

141話 テレビの話(3)

バリ島への道 1991年から97年までNHKの会長だった川口幹夫が書いた『冷や汗、感動50年』(日本放送出版協会、2004年)を読んでいたら、気にかかる文章に出合った。 著者は1962年7月の人事異動でテレビ音楽部副部長になったのだが、この…

140話 テレビの話(2)

深夜放送 いままでのすべてのテレビ番組のなかで、最高傑作をひとつ選ぶなら、「EXTV大阪」 (エックステレビ大阪と読む)を選定したい。どうしようもない11PMが終わって、そのあとに登場した番組だ。構成は11PMと同じように、東京・日本テ レビ…

139話 テレビの話(1)

野球音痴 思い出に残るテレビ番組というのはいくつかあるが、一切の文句なしに「名品、傑作、絶 品」と賞賛できる番組はそう多くない。子供時代はあまりテレビは見なかったし、旅に夢中になっていた青年期は資金稼ぎと旅行で、テレビなどほとんど見てい ない…

138話 闇ドルの時代とアメ横

東京の上野駅と御徒町駅(おかちまち)の間にアメ横がある。戦後まもなく、闇市でサツマ イモを原料にしたアメを売る店が多かったことから、このあたりがアメヤ横丁と呼ばれたものの、進駐軍の横流し品が売られるようになるとアメリカ横丁と呼ば れたらしい…

137話 2005年 出版社別購入書ランキング

小学生時代からつけている図書購入台帳をひっくりかえして、今年もまた2005年の図書購入事情を探ってみようと思う。目的は、ない。有用な利用法もない。ただのひまつぶしである。 2005年は仕事上でどうしても必要な本はあまりなかったので、300冊…