2015-01-01から1年間の記事一覧

767話 インドシナ・思いつき散歩  第16回

アオザイでシクロに その1(2016年になったが、旅の話は変わらずに続きます。下書きはすでに9万字近くになったが、まだベトナム編です。このままいくと、3月に入ってもまだ終わらないかもしれない。本の話もしたいのだが、まあ、しばらくは旅の話を・・・)…

766話  インドシナ3国・思いつき散歩  第15回

ホテル ホテルにはいくつかの法則がある。「一度贅沢なホテルに泊まると、それ以下のホテルには泊まりたくなくなる」という法則は、多分ほかの人にも当てはまるだろう。別の街に移動してしまえばそれほど気にならないが、同じ街で安いホテルに移動するのは私…

765話 インドシナ・思いつき散歩  第14回

2等列車の旅 後編 夕暮れて間もないころに止まった駅では、乗客の出入りが多かった。この駅から乗ってくる客のために、私は向かいの席に伸ばした足を引っ込めて、あぐらをかくことにした。私の向かいの座席に珍しく若い女が乗ってきた。20歳(はたち)そこ…

764話 インドシナ・思いつき散歩  第13回

2等車の長旅 前編 話は、サパからバスに乗りラオカイに着いた時に戻る。バスは駅前で止まったので、すぐ駅に行った。なんとなく薄汚れた駅舎だろうというイメージだったのだが、できたばかりの近代的な駅なので驚いた。外から待合室もよく見えるガラス張りの…

763話 インドシナ・思いつき散歩  第12回

ラオカイ サパからどうやってハノイに戻るかは、とりあえず中国との国境の街ラオカイに行ってから考えようと思った。いちばん簡単で安い方法は、来た時と同じようにサパからバスでハノイに直行することだが、それはいちばんつまらない方法でもある。最終的に…

762話 インドシナ・思いつき散歩  第11回

モン族の女 サパには、ギリシャなどにある野外円形劇場のようなものがある。もちろん古代遺跡ではなく近年に作ったものだが、そのあたりが街の中心部と言える。郵便局探しを終えたあと、私はその劇場の舞台を背にして縁の石に腰かけて、街を行き交う人を眺め…

761話 インドシナ・思いつき散歩  第10回

郵便局を探す遊び 絵葉書を買った店で、郵便局の場所を聞いた。「教会があるでしょ。その先にあるわよ」と教えてくれた。近くのカフェで絵葉書を書き、それから郵便局を探す長い長い遊びが始まった。 教会の近くを探すと、携帯電話会社のオフィスがあり、若…

760話 インドシナ・思いつき散歩  第9回

暖炉のある宿 サパの街は、家が建ち並んでいる地域はせいぜい2キロ四方だろう。観光客がうろうろしている中心地は200メートル四方くらいと狭い。山に囲まれた街で、カトマンズのミニチュアのような高原の街かと想像していたのだが、ホテルのスタイルから考え…

759話 インドシナ・思いつき散歩  第8回

サパ ハノイに着いたら、すぐにほかの街に出ようと思った。ハノイが気に入らないというのではない。このままハノイにいると、「地方に行こうか」と思ったころには時間切れになるかもしれないと思ったから、先に「ハノイ以外の場所」も見ておきたかった。ハノ…

758話 インドシナ・思いつき散歩 第7回

ハノイの真っ赤なコカコーラ ハノイに着いたのは夜だったので、初日は宿の近くで夕食にいい店を探すくらいの散歩しかしていない。翌日から、本格的なハノイ探検だ。旧市街は、想像していたとおりに、いい意味で騒々しく、建物もおもしろく、歩いていて楽しか…

757話 インドシナ・思いつき散歩  第6回

バイン・ミー ベトナム語でパンを、バイン・ミー(banh mi)という。バインは粉物の総称、ミーは小麦をさし、バイン・ミーでパンの意味になる。20年前にサイゴンで食べたパンのうまさを、再び『旅行記』から引用する。 「タイ、イサーン(東北部)のベトナム…

756話 インドシナ・思いつき散歩  第5回

ハノイに飛んだ バンコクでいくつかの用を済ませて、ハノイに飛んだ。散歩にふさわしい街として、その時の気分ではハノイが最高点を獲得していた。わかりやすく言えば、「気分はハノイ」だったのである。バンコク―ハノイ間の移動方法やルートが、今回の旅で…

755話 インドシナ・思いつき散歩  第4回

ホテルの夜 散歩をしていて商店のなかをちょっと覗いたら、テレビが見えた。画像がえらくきれいだ。DVDかと思ったが、テレビ放送だ。「もしかして・・」と調べてみれば、やはりタイでも2014年から地上デジタル放送が始まっていたのだ。3年前に泊まったホテル…

754話 インドシナ・思いつき散歩  第3回

ホテルの朝 バンコクの宿は、個室としては最低料金に近いところにした。BTS(高架鉄道)の駅に近いことと、朝食付きが決定条件になった。あとではっきりとわかったことだが、インターネットで予約したら、直接ホテルに行って宿泊手続きをするよりも2割ほど安…

753話 インドシナ・思いつき散歩  第2回

LCCはつらい。そしてタイ人旅行者 昨年のヨーロッパ旅行に快適なカタール航空(LCCではない)を使った経験で言えば、LCCは台湾か、せいぜい香港くらいまでならいいが、それ以上時間がかかる場所への旅はちょっと考えた方がいいと思った。LCCで東京・クアラルン…

752話 インドシナ・思いつき散歩  第1回

発端 いつものように、どこかに行こうと思った。ただ、ふらふらと、地球のどこかを漂っていたい。「死ぬまでに絶対行きたい50の街」とか「どうしても見たい50の遺跡」などと言うものは、私にはない。気分のいい散歩ができれば、それでいいのだ。 今年できる…

751話 大学講師のレポート その8

ウガリの弁明 「ケニア人の主食はウガリである」と断定してしまうと正確ではないが、「多くの人はウガリをよく食べている」とは言える。インターネットに「ウガリはまずい」といった説明が多いせいだろうが、ウガリなど食べたことがない学生がそう信じ込んで…

750話 大学講師のレポート その7

ケニアで暮らす 後編 ケニアの食生活に対する拒否反応ではなく、ケニアに3か月いたら、こういうものが食べたくなるだろうという想像も、じつは意外だった。学生のレポートを読む前に想像していたのは、次のような食べ物だった。日本人だからといって、日本料…

749話 大学講師のレポート その6

ケニアで暮らす 前編 今年2015年は、食文化の授業をした。その関連で、レポートのテーマは次のようにした。 「ケニアの地方都市で3か月ホームステイをすることになりました。まず、ケニアの食文化を調べて、そういう食文化の場所で3か月暮らすと、あなたの食…

748話 大学講師のレポート その5

外国で1年暮らす ある年は、こんなレポートを出題した。 「大学を卒業したら、外国のどこかの町や村で、1年間生活することになりました。どこで、どのように暮らすのか、そのためにはいくらぐらいの資金が必要なのかも調べて、滞在計画書を1000字程度で書き…

747話 大学講師のレポート その4

思い出に残るレポート 特上の評価であるSは、毎年一人か二人程度だろう。たまには、「受賞者なし」という不作の年もあるが、レポートを提出した約200人のなかで、ひとりか、多くてふたりという優秀な成績だ。今までS評価をしたなかで、3本のレポートは今でも…

746話 大学講師のレポート その3

レポートの日本語 成績の評価はレポートにした。出席はとらないから、100%レポートの評価で成績を決める。 そのレポートをどういう内容にするかというのは、けっこう難しいのもので、かなり頭をひねった。学生の知識だけを問う出題にはしたくなかった。…

745話 大学講師のレポート  その2

出席はとらないが 下 出席を厳しくとるようになった大学では、授業風景はどうなったのか。友人知人たちの話によれば、「飲食は当たり前」という。女子大では「化粧は当たり前」だという。それくらいで注意していたら、授業が進まないから、実害がある「おし…

744話 大学講師のレポート  その1

出席はとらないが 上 ひょんなことから大学の講師になって、もう10年以上たつ。立教大学観光学部兼任講師というパートタイム勤務である。科目名は一応「トラベルジャーナリズム論」ということになってはいるが、それがどういう学問かという定義などない。自…

743話 白菜キムチはまだ新参者

韓国のKBS(日本のNHKのような公共放送)で、もう200回以上放送している「韓国人の食卓」は、韓国のおもに農村山村漁村離島を訪ねて、その地域の食生活を見る1時間ほどの番組だ。良くも悪くも、学問的というよりは心情的な番組作りだから、ある食材に…

742話 机に積んだままの本の話をちょっと その8

芸能のことから 私の関心分野のひとつに芸能や音楽がある。芸能を通して見る社会や歴史がおもしろいからだ。最近読んだのは、『蝶々にエノケン』(中山千夏、講談社、2011)だ。この本は読まなくても上出来だとわかるのは、索引がついているからだ。学術書で…

741話 机に積んだままの本の話をちょっと その7

砂糖 雑誌や新聞の書評欄の執筆は、自分にはできないと思う。無理すれば、短期間ならなんとかなるかもしれないが、やりたい仕事ではない。基本的に新刊の紹介や書評をやるのだが、私が本を選ぶ基準は新刊であるかどうかではなく、その時に読みたい本というこ…

740話 机に積んだままの本の話をちょっと その6

物の運び方と抹茶の話 『<運ぶヒト>の人類学』(川田順造、岩波新書、2014)は、全集5冊分のダイジェストのような本で、映画の予告編のようだとも言える。ヒトの姿勢と、ものを運ぶ道具と運び方を書こうとしているのだが、論を展開するために、かねてから…

739話 机に積んだままの本の話をちょっと その5

漂って生きる 小学生に「将来、なりたい職業は?」といった質問をすると、男なら、「サッカー選手、野球選手、社長、宇宙飛行士」など、今も昔もあまり変わらないようだが、私はそういう夢や希望はなかった。なりたい職業はないが、やりたくないことはあった…

738話 机に積んだままの本の話をちょっと その4

ツアー研究の欠けた部分 観光学の研究書として、ツアーを取り上げたものが何冊かあり、行きがかり上、その、何冊かを読んだのだが、どうもパッとしない。統計の数字と外国の学者の論文引用が続き、知る歓びがないのだ。先日買った専門書、『パッケージ観光論…