2015-01-01から1年間の記事一覧

737話 机に積んだままの本の話をちょっと その3

グラフィックデザインが図案といわれていた時代 山藤章二(1937年生まれ)という人物への興味と、グラフィックデザインの戦後史などへの興味もあって、『自分史ときどき昭和史』(山藤章二、岩波書店、2014)を読んだ。山藤章二の本はほとんど読んでいるが、…

736話 机に積んだままの本の話をちょっと その2

韓国関連の本を少し インターネット古書店で見つけた本だから、内容のレベルはまったくわからなかったが、版元がコモンズなので、それほどひどい物じゃないだろうと想像して注文した。『韓式B級グルメ大全』(佐藤行衛、コモンズ、2013)は、韓国在住ミュー…

735話 机に積んだままの本の話をちょっと その1

アメリカの豆腐 これから何回かにわたって、本の話を書く。どの本を取り上げようか迷ったが、あれこれ考えるよりも、机の上にのったままになって、まだ棚に収めていない本を片っ端から紹介していけば簡単と気がついた。まずは、豆腐の話から。 1980年代半ば…

734話 葬式は、嫌いだ。

父の葬式のときに、思った。1980年代末のことだ。 普段なかなか会うことのない親戚や、私が一度も会ったことのない父の戦友たちが葬式に駆けつけていただいたのはありがたいのだが、この場にいたらいちばん喜ぶ人がいないことに気がついた。父が会いたかった…

733話 団塊の世代の海外旅行情報

ここ3回書いて来た「1967年のヨーロッパ旅行」というのは、主にカネを持った人たちの団体旅行客向けの情報だった。普通の収入を得ている日本人にはとうてい不可能な海外旅行だったが、工夫をして、なんとか日本を脱出しようとした若者たちが読んでいたのが『…

732話 1967年のヨーロッパ旅行 その3

1967年発行のブルーガイド『ヨーロッパ一周の旅』に、当時のジャルパックのヨーロッパ旅行が紹介されている。その内容をちょっと書き出してみる。 ヨーロッパコース 18日間 56万9000円 1日目 日航機にて羽田空港発。日付変更線を通過して一路ヨーロッパへ。 …

731話 1967年のヨーロッパ旅行 その2

前回に続いて、ブルーガイド海外版『ヨーロッパ一周の旅』(1967)から拾い読み。 [旅程・滞在日数] 10社の旅行代理店と航空会社が企画したヨーロッパツアーを調べて、標準コースと早回りコースを参考プランとして紹介している。昔の海外旅行は、長いのだ。…

730話 1967年のヨーロッパ旅行 その1

図書館では、旅行ガイドブックは数年で廃棄処分になってしまう。「情報が古い」、「使い物にならない」、「置き場所がない」といった理由で処分されるのだが、ガイドブックは紀行文と違って、旅のこまごまとした情報が詰まっていて、使い方によっては宝の山…

729話 ひとりで旅することは、自分と話をしていることだ

先日、深夜。「オードリーのオールナイトニッポン」を聞きながら本を読んでいた。お笑いコンビ「オードリー」(若林正恭と春日俊彰)のふたりがやっている深夜放送だ。そのなかで気になる話があって、目は本を離れた。昔なら、記憶のままに紹介するしかない…

728話 警察官僚のアメリカ旅行

神保町の古本屋の店頭ワゴンで、古い旅行記を見つけた。210円と安いから、内容をよく確かめずに買った。1950〜60年代の海外旅行記なら、安ければとにかく買うということにしている。日本人がまだ自由に外国に行けなかった時代の、日本人の海外旅行体験を知り…

727話 3冊の本

ある大型書店でおもしろそうな本を探したら、購入候補が10冊ほどあり、厳選して3冊に絞り込んのだが、結局1冊も買わなかった。1冊は、すでに読んだような気がするので、帰宅して調べておこうと思ったからだ。あとの2冊は、出たばかりの本だから、もちろんま…

726話 ふたりの学者の死 その3 

西江さんとの話は外国語に関するものが多かった。西江さんの本に、「外国語学習に王道なし」とあったのをよく覚えていますよと話した。「こうやれば、簡単に英語がマスターできる」というような方法なんかないという意味だ。それは私にもわかる。外国語学習…

725話 ふたりの学者の死 その2

松井さんの訃報を聞いてからわずか数日後の6月14日、文化人類学・言語学の西江雅之さんが亡くなった。 西江さんも学会向けの論文はあまり書かなかったと思うが、一般書は数多く書いた。私は、単行本になったものはほとんどを読んでいる。西江さんが書いた最…

724話 ふたりの学者の死 その1

台湾の旅物語を連載している間に、縁のある学者が相次いで亡くなった。すぐに何か書きたいとおもったが、台湾の話に割って入ると話の方向が変わってしまうので、連載が終了するまで待って今、やっとその機会が来た。 考古学者の松井章さんとは、共にある食文…

723話 台湾・餃の国紀行 2015 第28話

雑話いろいろ その5(最終回) ■正月のある夜、いつものようにテレビをザッピングしていたら、画面に登場したのは三沢光晴(1962〜2009)。日本のプロレス番組のダイジェスト版のようで、2000年代前半の映像らしい。私はプロレスファンでもないし、ましてや三…

722話 台湾・餃の国紀行 2015 第27話

雑話いろいろ その4■台北の超高層ビル、「台北101」のすぐ前が空地になっていた。2013年のことだ。立ち退きになったのか、その理由はわからないが、更地になったばかりのようだったが、そこが家庭菜園となって畝を作り、菜っ葉が植えられていた。高さ509メ…

721話 台湾・餃の国紀行 2015 第26話

雑話いろいろ その3 ■台湾のビルが汚いと思うことが多い。ちょっと古いビルは、「だいぶ古いビル」に見える。その理由は、多少は大気汚染の問題があるにせよ、主にビル管理をほとんどしていないからだ。コンクリート打ちっぱなしのようで、実はただ塗装して…

720話 台湾・餃の国紀行 2015 第25話

雑話いろいろ その2 ■さて、あれはどこだったのか。その時にメモを取らなかったので、どこで見たのかわからない。台北の北、金山の街だったような気がするが、まあ、場所はどこでもいい。茹でた鶏やアヒルを売る飯屋は、通りに面したところにまな板を置き、…

719話 台湾・餃の国紀行 2015 第24話

雑話いろいろ その1 この台湾旅物語もいよいよ最終章に入り、私の旅行記ではおなじみの雑話集の番になった。1回分にはならない小ネタや、スケッチや、書いてから思い出したことなどを集めた落穂拾いが、これから5回分続く。 ■桃園空港のイミグレーション。…

718話 台湾・餃の国紀行 2015 第23話

野菜図鑑 台湾の食文化を知るのは、まず台湾の料理の全貌をなるべく広く知る必要があり、そのためには食材の知識が必須で、『台湾食材図鑑』とか『台湾市場図鑑』といった本を探していたのだが、見つからない。台湾の書店の通販サイトで調べても見つからない…

717話 台湾・餃の国紀行 2015 第22話

台北のインドネシア人街 前回の台湾旅行で、休日の高雄の公園で、多くのインドネシア人を見かけたという話を、このアジア雑語林の562話に書いた。台湾在住外国人は、国籍別に見てインドネシア人がもっとも多いらしい。道路や公園で、デパートで、車椅子を押…

716話 台湾・餃の国紀行 2015 第21話

不要放香菜 中国語で、「不要放香菜」(コリアンダーは入れないで)と言うのはたやすいことで、わざわざ勉強しなくても、私の作文力でも言える。「不要香菜」(コリアンダーは、いらない)はぶっきらぼうだが、この方が私のインチキ中国語の発音では通じやす…

715話 台湾・餃の国紀行 2015 第20話

そのいでたちに、目がとまる 台鉄(台湾鉄路)台北駅は、東京で言えば総督府がある南口は東京駅丸の内口のようであり、北口は上野駅のようである。北口には台北と地方都市を結ぶ巨大バスターミナルがある。だから、この台北駅周辺は、「上京」の到着地であり…

714話 台湾・餃の国紀行 2015 第19話

ああ、珈琲。悪しきスターバックス症候群 「ああ、そうだった。台北って、そうだったんだよなあ」と、前回の旅でのことを思い出したことはいくつもあるが、コーヒーのこともそうだった。散歩をしていて、コーヒーを飲みたい気分でいるときに、「咖啡」とか「…

713話 台湾・餃の国紀行 2015 第18話

正月映画 「正月は映画館の稼ぎ時」という日本の常識が台湾でも通用するだろうと思い、西門町の映画館にいった。映画館に人がいれば、食堂も開いているという読みで、食事を兼ねて出かけたのである。私が見たいと思った映画は売り切れ状態で、キップが買える…

712話 台湾・餃の国紀行 2015 第17話

台湾の薄味について、あるいはラーメンの話 その3 台湾のラーメン事情について調べていたら、どうしても韓国のラーメン事情についても書いてみたくなった。その事情が両国とも似ているからだ。 韓国のラーメンは「ラミョン」といい、インスタントラーメンを…

711話 台湾・餃の国紀行 2015 第16話

台湾の薄味について、あるいはラーメンの話 その2 「台湾の薄味」をラーメンから探るのに格好の例が見つかった。熊本では有名な「味千ラーメン」は、台湾のラーメン史を語る上で、極めて重要な存在らしい。 味千ラーメンは、日本国内に89店舗あるものの、そ…

710話 台湾・餃の国紀行 2015 第15話

台湾の薄味について、あるいはラーメンの話 その1 以前から感じていたのだが、台湾の汁は薄い、うまくない。豆腐のスープであれ、魚団子のスープであれ、ワンタン麺であれ、透明なスープは、ダシではなく、ただのお湯ではないかと思うことがある。しかも、…

709話 台湾・餃の国紀行 2015 第14話

チリレンゲの旅 突然、チリレンゲを買いたいと思った。今使っているのは、タイのインスタント粥ひと袋8バーツ、日本円で25円ほどにおまけとして付いてきたアルミ製のもので、使い勝手はいいのだが、あまりに安っぽいので、本場の台湾でいいのを買おうかと考…

708話 台湾・餃の国紀行 2015 第13話

あの画家に、また 故宮博物館に入ってすぐの部屋は、何かの特別展をやっていた。インターネットで予習をしてから出かけるという旅の仕方はしていないから、どういう特別展なのかまったく知らない。その部屋を覗くと、この博物館とは傾向が違う油絵が展示され…