それは、スーパーでツナ缶の材料表を見ていたときだった。ツナ缶なのに、材料は「マグロ/カツオ」とある。ツナ(Tuna)はマグロで、カツオはBonitoだというくらい私でも知っている。だから、ツナ缶にカツオが入っていたら規則違反だろう。しかし、堂々と表記しているということは、後ろめたい事情はないということだ。そこで、調べてみた。
いなば食品のホームページを見ると、「ツナ缶は、まぐろ、かつお類からできる缶詰です」とある。カツオもツナなのか?
「シーチキン」というのもある。これは「はごろもフーズ」が扱っている缶詰の商品名だ。はごろもフーズのホームページに、「シーチキンの原料の魚」として、「びんながまぐろ、きはだまぐろ、かつお」の3種の魚を使っていると説明している。さらに詳しく読むと、これら3種の魚を混ぜ合わせて使っているのではなく、それぞれを単独で使っている。だから、「シーチキンマイルド」はカツオだけを原料にして作ったということらしい。
http://www.hagoromofoods.co.jp/knowledge/seachicken/#h301
辞書では、Tunaはマグロであり、Bonitoはカツオということなのだが、『世界魚食文化考』(中公新書)などの著作があるマグロの専門家三宅真氏の説明では、ややこしいことに辞書の説明は間違いだという。『世界魚食文化考』に詳しい記述があるが、ここでは『スペインと私』(三月書房、1990)の文章を要約してみる。
スペインでは、ビンナガマグロをBonitoと呼んでいるのだが、英語やスペイン語ではハガツオ(カツオの1種)も同じ名前で呼ばれている。だから、スペインの学者でさえ混乱している。
「英和・西和の辞書共、ボニトをカツオと誤訳している。カツオは本当は英語でスキップジャック、スペイン語ではリスタドが正しい。そのため、現地の殆どの日本人は、ビンナガマグロをカツオだと思って、刺身の他に叩き等にして食べている」
西洋ではなぜマグロとカツオいっしょにしてしまうのか。
日本では、マグロは生で食べるのだが、西洋では缶詰めをサラダに入れる。水煮の缶詰なら、ビンナガとカツオをいっしょにしても差し支えない。日本で言う「シーチキンのフレーク」状態になれば、両者の区別はつけにくい。
ということは、カツオはBonitoだという辞書の説明を信じてしまった私も被害者ということになる。
*長い旅だったわけではないのに、帰国すると目覚まし時計のセットのしかたを忘れているし、パソコン使い方を忘れている部分もある。アマゾンのマーケットプレイスの商品の購入法の設定が変わっていて、「1−クリックで買う」ができなくなっていたり、いろいろ混乱することはあるが、次回から例によって長い旅物語が始まります。