2016-01-01から1年間の記事一覧

865話 カッコいいミュージシャン、3人の女 

日頃音楽を聴き、テレビやユーチューブなどを見ていると、「かっこいい!」としか言いようのない女のミュージシャンが3人いる。若い順に紹介してみようか。ここで紹介している動画を全部見ると数時間かかると思うので、音楽好きの方は、時間に余裕のあるとき…

864話 オリンピックと出版物 その2

1988年のソウル・オリンピックと出版物について考えてみた。 国会図書館の蔵書目録のなかから、「韓国 1985〜1988」で検索すると、見慣れた本が次々に登場する。便乗本として企画された本もあるだろうし、著者の意図はどうであれ、出版社が「ふだんなら出せ…

863話 オリンピックと出版物 その1

リオ・オリンピックを前にして、ブラジル関連本が数多く出るのではないかとちょっと期待をしていたのだが、悪い予感が当たり、出版界では「ブラジル・バブル」はなかったと思う。何冊かは出たから無風ではないが、「バブル」では到底ない。この時期に出版さ…

862話 日本語の書式

今年もまた、昨年に続いて同じ内容のコラムを書くことになった。 私が担当している授業のレポートを採点したところだが、今年もまた「だめな日本語」のレポートがあった。1割が日本語の問題で不合格だった。「情報の出典が明記していない」とか「論理の展開…

861話 日本は完全無欠?

ちょっとでも物事を考える人は、昨今のテレビ番組の、「日本万歳!」、「日本人万歳!」、「日本の頭脳・技術万歳!」の我田引水ぶりは大問題だなあと気がつくだろう。「日本はすばらしい」という説がおかしいというのではない。「日本の技術はすばらしいと…

860話 昭和の実感 その9

戦争の記憶 私は戦後生まれだから、戦争の実体験は当然ない。しかし、大人たちから、幾度か戦争の話を断片的に聞いた。 少年時代、父と風呂に入っているときに、父は体に銃で撃たれたあとがいくつかあるという話を、傷跡を見せながらした。戦争を知らない私…

859話 昭和の実感 その8

動く姿を知らない有名人 どのラジオ局でも、「夏の終わりのハーモニー」(井上陽水&玉置浩二)が絶えず流れていたのに、9月に入ると一斉に「September」(EW&F)に変わって、きょうだけでも4回耳にした。まるでバブル時代だ。この歌は、「12月の今、9月のあの…

858話 昭和の実感 その7

歌謡曲に包まれた幸せ 後編 レコードやラジオで消費される大衆音楽(ポピュラー・ミュージック)が日本でも生まれ、初めは「流行り歌」、そして「流行歌」と呼ばれていたが、「流行もしていないのに、流行歌と呼ぶのはいかがなものか」という日本放送協会か…

857話 昭和の実感 その6

歌謡曲に包まれた幸せ 中編 日本の歌謡曲史を読むと、田舎から都会に出て来た若者が、故郷にいる恋人や母を想う歌、あるいは都会に出て行った恋人を想う歌がいくらでもあったことを思い出し、調べてみればタイにも同じジャンルの歌があるとこに気がつく。経…

856話 昭和の実感 その5

歌謡曲に包まれた幸せ 前編 歌謡曲のことを書きたいのだが、その前に書いておかないといけない長い話がある。 私は少年時代から歌謡曲を熱心に聞いていたわけではない。現在に至るまで、熱心な歌謡曲ファンではない。少年時代は、むしろ嫌いだった。幼稚園や…

855話 昭和の実感 その4

後楽園球場 安い外野に座り、野球を見たのだろうが、知識も関心もないから、どういう展開になっているのかわからない。遠すぎて選手の動きはよくわからないが、よく見えてもなにもわからない。そもそも、どことどこの対戦かも知らないのだが、知ったところで…

854話 昭和の実感 その3

巨人・大鵬・卵焼き 高度経済成長を表現する「巨人・大鵬・卵焼き」という言葉は知っているが、改めて調べたことがなかった。今、ウィキペディアを読んでみると、ふたつの事実(かどうかわからないが、まあ、ウィキペディアだから・・・)がわかった。この言…

853話 昭和の実感 その2

レコード大賞 後編 帝国劇場で開催されたレコード大賞授賞式を私が見たのは、いつなのか。古賀政男が存命中の1977年のレコード大賞から調べてみる。第19回レコード大賞だ。すると、この年、古賀政男と服部良一は「審査委員会顕彰」を受けたという記録が見つ…

852話 昭和の実感  その1

レコード大賞 前編 関川夏央の『昭和三十年代演習』(岩波書店、2013)を読んだのは、日本の海外観光旅行黎明期の時代背景を知りたいという関心からだった。この本を読もうと思ったもうひとつの理由は、映画「Always 三丁目の夕日」に対する異議だった。英語…

851話 トラ・アグバル(トーレ・アグバール)は水道局ではない

つい先日のことだ。テレビのスイッチを入れたら、バルセロナの街が映っていた。旅番組らしい。「この奇抜なビルは、バルセロナ水道局の建物です」とナレーションが流れた。「おいおい、まだそんなデタラメを言っているのかい」と思ったのが記憶に残っていて…

850話 韓国、女のひとり酒 その5

何度でも書くぞ、韓国食文化の話 後編 近頃、韓国の映画やドラマを見ていると、従来の大きなステンレス製の茶碗に代わって、陶磁器の小さめの茶碗を見かけるようになったことだ。例えば、こういう食器だ。 ttp://shilla.shop-pro.jp/?pid=23220217 秀吉の文…

849話 韓国、女のひとり酒 その4

何度でも書くぞ、韓国食文化の話 前編 韓国では、日本人がやるように器を持ち上げて食べることはしないとか、そういう食べ方は作法知らずとして糾弾されるなどという記述が実に多い。それは韓国食文化のもはや「常識」といっていいほど広まっているのだが、…

848話 韓国、女のひとり酒 その3

ひと皿は何人前? このドラマは、やはり、筋のあるドラマにしないと番組が成り立たないと考えたようで、普通のドラマに飲食シーンが長めに入るという構成になっている。日本のように、料理のアップと、ただ食べているだけのシーンだけで完結させるというのは…

847話 韓国、女のひとり酒 その2

韓国OLは、ひとりで飲むか? ひとりで食事をしても「哀れな人」と思われる韓国で、「女が、ひとりで、酒を飲む」ドラマは、どういう設定にすれば成立するのか。そういう興味でこの韓国ドラマを見た。 結論を先に言えば、そういう設定は韓国ではやはりかな…

846話 韓国、女のひとり酒 その1

韓国版「ワカコ酒」 『ワカコ酒』は、新久千映(しんきゅう・ちえ)作のマンガで、2011年から雑誌連載が始まった。OLがひとりで酒を飲み歩くというもので、明らかに『孤独のグルメ』の女版であると同時に、『孤独のグルメ』の主人公は酒を飲まないので、『…

845話 旅のノート

旅行の時に使うノートは、最初は何も考えずに手帳を買い、旅先で足りなくなったら文具屋に行き、適当なノートを買っていたのだが、日本以外では「適当な」ノートなどほとんどなく、大きさや紙質にかなりの不満を抱いていた。日本で暮らしていると何とも思わ…

844話 「これは男だけなのかもしれませんが・・・」

三代目桂米朝は生き急いだらしい。2015年に90歳で亡くなったのだから、「生き急ぐ」も何もないだろうと思うかもしれないが、急いで生きたことは確かだ。 落語好きの青年中川清が三代目桂米朝になったのは1947年だった。当時の上方落語は消滅寸前の状態だった…

843話 吉田集而さん、それはちょっと変ですよ

古本屋で、こんな本を見つけた。私は酒を飲まないので興味もなく、新刊をチェックしてなかった。『酒がsakiと呼ばれる日―日本酒グローバル宣言』(玉村豊男・吉田集而編、タカラ酒文化研究所、2001)という本だ。 アメリカで、日本酒のsakeがどのような理由…

842話 神保町で火野葦平に出会う  その10

朝日新聞社版の『赤い国の旅人』を買った理由のひとつは、北朝鮮の旅行記があるとわかったからだ。1955年に、北朝鮮支持者ではない日本人の手による旅行記があるなら読みたいと思った。この本には、「板門店」と「北鮮女性点描」の2作が収められている。 ア…

841話 神保町で火野葦平に出会う  その9

中国旅行の話は、原稿用紙300枚で書ききることができると火野は考えた。しかし、書いているとどんどん伸びて、終わらなくなった。全行程は書かないまま単行本にしている。その理由は、「これならこれでいいいか」と思い、加筆して合計300枚程度で一応の完了…

840話 神保町で火野葦平に出会う  その8

火野葦平の一行はインドを出て、香港の新楽大酒店(シャムロックホテル)にいる。私の記憶にも残るホテルで、現存。なぜ香港にいるのかという事情を、『赤い国も旅人』から、火野自身の文章で語ってもらおう。 「四月六日から十日まで、インドのニュー・デリ…

839話 神保町で火野葦平に出会う  その7

すごろくの「振り出しに戻る」である。火野の著作に、「インド旅行記」というようなタイトルの本は見つからない。そこで、さらに調べると、朝日新聞社版の『赤い国の旅人』(1955)に、インドの紀行文が3編収められていることがわかった。『アメリカ探検記』…

838話 神保町で火野葦平に出会う  その6

関西大学が出している『東アジア文化交渉研究』という論文集の3号に、「火野葦平『中国旅日記』(1955年4月)翻刻」(増田周子)という論文があるのを見つけた。火野の旅のしかたがよくわかる。火野が小さな手帳に克明に書いていた旅日記を活字におこし、注…

837話 神保町で火野葦平に出会う  その5

火野の自殺は、体調不良やうつ病が直接の原因ではあるが、同時に「戦意高揚の協力者」という過去の重圧が、戦後の火野を常に苦しめてきたということもある。だからこそ、戦後は平和運動に力を入れるとともに、遺作として『革命前夜』を書いたのである。ただ…

836話 神保町で火野葦平に出会う  その4

火野葦平の『アメリカ探検記』を読んでいて頭に浮かんでいたのは、「たしか、この時代に小田実もアメリカを旅していたはずだが・・・」ということで、小田の『何でも見てやろう』と比較すると、火野の旅行記はどの程度の物なのかという好奇心もあって読んで…