281話 韓国の通貨ウォンのことが気になって・・・

 困ったことになった。『星とともに走る』(四方田犬彦、七月社、1999)を読み始めて、1ページ目で止まってしまった。この本は、1979年から1997年までの、四方田の日記をまとめたものだ。1979年3月28日に韓国の労働ビザをもらい、日本語教師として韓国に行くことができるようになった。4月1日韓国到着。「両替をする。1円が2.2ウォンくらいのレートだった」という文章で、次のページに進めなくなってしまった。1ページ目で、途中下車だ。ウォンの対日本円レートの変遷がちょっと気になって、調べてみたくなったのである。
 「本の雑誌」元発行人で作家の目黒考二氏は、「酒と家庭は読書の敵だ」と書いていて、そういうタイトルの本も出ているが、私の場合、読書の敵は「調べたい」という好奇心だ。
 手持ちの韓国のガイドブックで、もっとも古いのは・・と、書棚を探す前に、1冊まるごと韓国旅行のガイドブックが最初に出版されたのはいつなのか調べてみると、交通公社版は1975年、実業之日本社ブルーガイドは1974年だ。これは以前に調べてみたことがあり、「こんなに遅かったのか」と驚いたのだが、日韓関係史に深入りするとなかなか抜け出せないから、ここでは掘り下げない。いつか気が向けば、「韓国観光史」を調べてみるとおもしろそうだが、それは、また、いずれ。
 韓国でまるごと1冊というのでなく、「韓国のガイドも載っている」という本であれば、もう少し昔に出版されたガイドもある。手元にある本でも、『東南アジア 韓国 インド』(交通公社、1972)や、『東南アジアのア旅』(パン・ニューズ・インターナショナル、1972、初版は1969)などがある。
 1978年版のブルーガイド『韓国の旅』の「通貨」の項目には、こうある。
「77年9月現在の交換レートは、1円が1.8ウォン、1ウォンは0,55円」とある。この時代、紙幣は、10,50,100,500,1000,5000,10000ウォンの7種類あり、コインは5,10,50,100ウォンの4種。「最近まで、支払は主として500ウォン札を用いていたが、1000ウォン札も出回るようになった。10000ウォン札はまだ少ない」とあるが、1ウォンコインがあったはずだが、このガイドでは抜けている。
 交通公社の『韓国』(1984)では、100ウォンが29円だと書いてある。通貨について詳しく書いてないのは、団体客はウォンを使う機会が少ないからだろう。
 以上の情報をまとめると、こうなる。
1977年 100ウォン=55円
1979年 100ウォン=45円
1984年 100ウォン=29円
1990年 100ウォン=18.8円(年末)
1995年 100ウォン=13.7円(年末)
2000年 100ウォン=9円(年末)
現在は  100ウォン=7.30円
 かつては高額紙幣だった10000ウォン札も、日本円にすれば、730円ほど。2009年に、ついに50000ウォン札が発行されたが、日本円にすれば、3600円ほどでしかない。
 こういう話になると、「昔、インドルピーはいくらだったかなあ」などと、思い出に浸る人もいるだろう。ちなみに、1973年のタイでは、1バーツ=14円くらいだった(現在、2.8円ほど)。1974年のインドネシアでは、1ルピア=1.53円(現在は、100ルピア=1.06円)。1973年のインドでは、1ルピー=35円(現在は、1ルピー=1.99円)。たしか、ネパールルピーは、25円だったかなあ。
 これ以上「調べごっこ」をやっているときりがないので、読書に戻る。