2053話 続・経年変化 その19

音楽 19 クラシック

 なにげなく耳にしている音楽というなら、ジャズやロックや歌謡曲などよりクラシックの方が、その機会は多い。コマーシャルで使ったり、広報番組などの背後でクラシックが流れているからなじみは深い。有名な曲を、俗に「ポピュラー・クラシック」などと言うが、例えば、こういう曲だ。

 この20年くらいでもっともよく耳にするのは、パッヘルベルの「カノン」だろうが、ビバルディーの「四季」、エルガーの「愛の挨拶」と「威風堂々」、ビゼーカルメン」など、曲名をあげればきりがない。ふた昔前なら、「エリーゼのために」が電話の「お待ちください」の音楽だった。コマーシャルにもクラシックが多く使われてきた。

 初めて聞いた曲だが、いいなあと思って調べることもある。その代表的なのが、マスカーニの「カバレリア・ルスティカーナ」だ。曲名を知ってから、テレビなどで何度も耳にしているが、ローマを散歩中にどこからか、たぶん博物館のBGMだったかもしれないが、この曲が流れてきて、「おおっ!」と立ち止まったことがある。ピエトロ・マスカーニはイタリアの作曲家で、有名なのはオペラ「カバレリア・ルスティカーナ」の間奏曲だ。テレビで、このオペラを放送していて、オペラ嫌いの私でも一応見てみたら、やはりこの間奏曲のシーンだけがよかった。

 オペラと言えば、オペラが重要な要素になっている映画「耳に残るは君の歌声」(2000)が素晴らしかった。何の予備知識もなく、テレビでやっているから一応予約録画しておいただけなのだが、素晴らしい音楽映画という面もあって堪能した。最初はジプシー音楽に魅了されていたのだが、オペラシーンでの歌に聞き覚えばあり、気になって調べてみた。映画で聞いたのは、ビゼーの「真珠採り」の中のアリアで、その歌の名は「耳に残るは君の歌声」。映画のタイトルはここからきているのか、なるほど。オペラが嫌いな私にも耳なじみがあったのは、この曲がタンゴにアレンジされ、アルフレッド・ハウゼの「真珠取りのタンゴ」として子供の時から聞いていた。だから、知っているメロディーだったのだ。この映画で使われたオペラのテノールもよかった。オペラと言えば、映画「永遠のマリア・カラス」で流れたカラスの歌声も、映画館で聞くと迫力があって、よかった。こういう例外もあるが、合唱も含めて歌曲は嫌いだ。ベルカントが嫌いなのだ。だから、グレゴリオ聖歌なら聞いていられる。古楽もいいなあ。

 コンピレーション(寄せ集め盤)で名曲を次々に聞き、気に入った作曲家のCDを改めて買う。そうやって、愛蔵曲ができていく。バッハの「G線上のアリア」は、さまざまなバージョンで聞いたが、どれもいい。何度聞いても耳タコにならないという点では、パッヘルベルの「カノン」と違うところだ。

 YouTubeで、イツァーク・パールマンの演奏を聞いていて、「これはいい!」と何度もくりかえして聞いたのが、ラフマニノフの「ボカリーズ」だった。ボカリーズだから、母音のみで歌う歌曲なのだが、最初にバイオリンで初めて聞いて、そのあと歌唱版をいろいろ聞いたが、パールマンのバイオリン以上に感動的な演奏はなかった。

 他に、何度聞いても「いいなあ」とうっとりするのは、フォーレの「シシリエンヌ」(シチリア風の意)。シシリエンヌは音楽形式で、これはフランス語。イタリア語ではシチリアーナ(女性形)やシチリアーノ(男性形)も使われる。レスピーギの「シチリアーナ」もいい。バッハもこの形式の曲を作っていると知って聞いてみたのだが、ネット情報では別人の作品らしい。パバーヌも音楽形式だから、バッハもラベルも作っていて、どちらもすばらしくいい。そして、時には、こういう曲のジャズアレンジも聞いたり、逆にジャズアレンジされた曲のオリジナルを聞いたりして、音楽生活を楽しんでいる。

 そういえば、好きな音楽家は、フォーレ、ラベル、ドビュッシーとあげていくと、フランス好みなのかもしれないという気もする。