2062話 続・経年変化 その28

読書 4 図書館3

 地元の図書館に通ったこともある。

日本人の海外旅行史の研究のために年表などある程度の資料は買い集めた。調べ始めた時期が良かった。1980年が「戦後50年」であり、1989年に昭和が終わったということで、1980年代に入って「戦後」や「昭和」を回顧した本が多く出版された、個人の思い出話や、政治史の考察といった本が多いが、私は資料になる本を買い集めた。知りたいことがあるたびに図書館に行くのは面倒だから、買い集めたのだ。例えば、次のような本だ。

 『昭和史全記録』(毎日新聞社、1989)・・・1万2360円の定価で、価格に見合った内容だった。昭和の1年が1冊になった本もあり、20冊くらいは買ったと思う。1990年代末には、この手の本は古本屋の店頭で安く売られていた。毎日新聞社が昭和の写真を多く持っているのは、空襲があっても社屋が焼けなかったかららしい。

 『毎日ムック 戦後50年』(毎日新聞社、1995)

 『戦後日本の大衆文化』(鵜飼正樹永井良和・藤本憲一編、昭和堂、2000)

 『昭和・平成 現代史年表』(神田文人編、小学館、1997)

 『チャートでみる日本の流行年史』(阿部木綿子+アクロス編集部編、PARCO出版、1997)

 『1946-1999 売れたものアルバム』(Media View編著、東京書籍、2000)・・・書籍ベストセラーやヒット曲などのリストが出ていて、読んで楽しい資料だった。

 『1960年大百科』(宝島社、1991)…この『60年』ほか、宝島社は『70年』、『80年』、『90年』など戦後サブカルチャーのビジュアル資料を多数出版している。

まだインターネットで資料を得ることができない時代だったので、映画や歌の情報は、次のような資料を買った。

 『キネマ旬報増刊11・20号 日本映画作品全集』(キネマ旬報社、1973)

 『キネマ旬報増刊2・13号 映画40年 全記録』(キネマ旬報社、1986)

 『ぴあシネマクラブ1992 洋画篇』(ぴあ、1992)

 『ぴあシネマクラブ1992 邦画篇』(ぴあ、1992)

 『別冊 1億人の昭和史 昭和流行歌史』(毎日新聞社、1977)

 音楽も映画も、このほかにも多数買い集めたが、インターネットの時代になった今、ほとんどゴミになってしまった。

 『現代風俗史年表』(世相風俗観察会、河出書房新社、1986)・・・風俗がまだ「性風俗」の意味で使われる以前の本で、安くない定価だったがよく売れたようで、その後同じ出版社から『昭和家庭史年表』(家庭総合研究会、1990)などが出て、他社もその流れを追い、同じような年表が多数出版されている。

 年表の記事の中で今でもよく覚えている事件がいくつかある。密造酒は1950年代が最盛期だったが、1960年代に入っても、「ウイスキーの密造酒押収」という事件が載っていた。1960年代関西でバーを経営していた人が、「高級ウイスキーの空瓶を買いに来る男がいましたよ。多分安ウイスキーか密造酒を入れるんでしょうね」と話していた。

 「香港へ若い女を売ろうとしていた男が逮捕」という事件記事も読んだ。人身売買だ。香港を舞台にした若山富三郎の「旅に出た極道」(1969)を見たのは1990年代で、香港に女が売られるシーンが出てきて、現実にあった事件を映画に取り入れたことがわかる。その頃の香港のイメージは麻薬とヤクザと売春の魔窟だった。

 そういった情報を本などで大量に集めたのだが、小説を読んでいるような感じで、現実感がなかった。やはり、当時の生の情報に接しないといけないと思うようになった。

 そこで、日ごろあまり縁のない図書館に行くことにしたのである。