1612話 本で床はまだ抜けないが その20

 続・重い本

 

 前回の「重い本」を書いたのはもう2週間以上前で、その後本棚を眺めるたびに、「なんで、オレが重い本に選ばれないんだ?」とつぶやいていそうな本が何冊も目につき、きゅうきょ続編を書くことにした。物置きの本は無視するが、椅子を持ってくれば手が届く天井近くの本は集めて山を作った。十数冊を床に積んだが、書棚にはまだ重い本はある。飛び切り重いのが、アメリカで出版された世界地図の本で、4キロは超えていそうだから、最上段の棚から降ろす気はない。そのうち捨てよう。

 『リーダーズ英和辞典』とか『大辞林』、韓国語やスペイン語の辞書類は無視。バンコク日本人商工会議所発行の資料類も重いのが多いが、このコラムの読者にはまったく興味がないだろうから、本棚に入れたままにする。

 よし、計量を始めるか。前号では古書価格も書いたが、アマゾンに出品されていない場合、その後の調査はけっこう手間なので、省略する。気になる方は、ご自分で調べてください。「高価だった本が、こんなに安く」と驚くこともありますよ。

台所空間学』(山口昌伴、建築知識、1987)・・1600g。食文化研究会で山口さんと会うことが多くなり、そのたびに台所や台所用品に関する私の質問に答えてくれるのがうれしくて、山口さんの本を買い集めるようになり、この『台所空間学』(この時の定価は1万円弱)や『図説 台所道具の歴史』といったより専門的な本も買った。多分、全著作を買ったと思う。

続地球家族』(フェイス・ダルージオ+ピーター・メンツェル、金子寛子訳、TOTO出版、1997)・・1400g。正編の『地球家族』(1994)は薄く800g。正編が大好評だったから厚い続編を出したのだろうと推測している。大傑作だから、もし未読ならぜひ。プレゼント用にもいい。

毎日ムック 戦後50年』(毎日新聞社、1995)・・1600g

The Herb&Spice Book”(Sarah Garland、Frances Lincoln、1979)・・1400g

アジアの市場』(石毛直道+ケネス・ラドル、くもん出版、1992)・・1400g。市場で売っている商品の知識がある人が案内する市場の本は、残念ながらほとんどない。これが例外的存在だ。

現代風俗通信 77~86』(鶴見俊輔編、学陽出版、1987)・・1400g

昭和二万日の全記録 13 東京オリンピックと新幹線 昭和39~42年』(講談社、1990)・・1400g。東京オリンピックや新幹線について知りたかったのではなく、海外旅行が自由化された1964年ごろの日本が知りたかったからだ。海外旅行を含めた「日本人の異文化対応」を考えるなら、西洋の学者が書いた論文のパッチワークに励まずに、次にあげた3冊も含めて、こういう歴史年表を精読することから戦後史を頭に入れた方がいいと、若き研究者に言いたい。過去の膨大な新聞をマイクロフィルムで読むのもいい。

昭和平成家庭史年表』(下川耿史編、河出書房新社、2001)・・1200g。関連書で、『1945~2000 現代風俗史年表』や『1926~1995 昭和平成家庭史年表』なども購入。自分が生まれた時代を詳細に知ることができる。こういう本のなかに、私が生まれたころの池袋の写真が載っていて、「生まれて初めて見た景色は、こういうものだったのだなあ」と感慨深い。 

The Book of Ingredients”(Adrian Bailey+Elisabeth Lambert Ortiz+Herena Radecka、Mermaide Books、1985)・・1200g。この本はシンガポールで買った。

「旅」復刻版 全7冊+付録1点』(JTB日本交通公社出版事業局、1989)・・1200g

The Culinary Culture of the Philippines”(Edit.Corazon Alvina、Bancom Audiovision、1976 )・・1000g。フィリピン料理の本は何冊かあるが、フィリピンの食文化に関する日本語文献はない。ネットで調べる限り、この本は古書市場でも見つからない。私はこの本をバンコクの書店で買った。1000バーツの値札がついていた。当時1万円近くしたことになる。「これ以外、資料はないだろう」と踏んだのだ。今、ウィキペディア英語版で” Filipino Cuisine”を見ると、参考文献として“Cuisine and Culture: A History of Food and People”など多数あげられているので、フィリピンの書店巡りをすれば、きっと持てないくらいの資料が集まりそうだ。しかし、日本語文献は出そうもない。

発掘カラー写真 1950~1960年代鉄道原風景 海外編』(J.ウォーリー・ヒギンズ、小野塚徳明訳、JTBパブリシング、2006)・・1200g。この本については、この「アジア雑語林502話」などでしばしば取り上げているが、韓国や香港、台湾、タイなどの現代史に興味がある人は、「おお!」と声をあげるような本だ。

日本の食文化史年表』(江原絢子+東四柳祥子、吉川弘文館、2011)・・1000g。2000年ごろ、『異国憧憬』の資料を集める中で、「日本の外国料理事情年表」を作った。2万字以上のものになったが、フロッピーディスクに記録したので、プリントアウトすることなく、廃棄した。今はこの年表があるので、調べるのはかなり楽になった。

文化を食べる 文化を飲む』(阿良田麻里子編、ドメス出版、2017)・・1000g

時代光影・臺北定格~今昔百景専輯』(臺北市文献委員会、民国100年)・・1000g。民国100年は、西暦2011年。写真で見る台北の100年という企画本。「定格」は「止まった時間」、「専輯」は、アルバムのこと。台湾の本は、眺めればなんとなく意味がわかるのがありがたい。

Indonesian Heritage”(Editions Didier Miller、1998)・・1000g。インドネシアの百科事典(英語版)。全10巻のうち興味のない”Wildlife”の巻以外の9巻を買った。

インド建築案内』(神谷武夫、TOTO出版、1996)・・1000g。『地球家族』と出版社が同じ。建築に興味があるから、Lixil(旧Inax)出版と並んで、TOTO出版は私の関心分野に合う出版物が多いのだが、カラー写真が多い大型本だから、高い。それが唯一の難点だ。とはいえ、TOTOにしろInaxにしろ、もともとは衛生機器の会社なので、有名建築家の記念碑的「どーだ、すごいだろ!」的作品集ではなく、生活に近い建築書が多いので、私の興味と合うのがうれしい。