1611話 本で床はまだ抜けないが その19

 重い本

 

 ビンボーで美術に興味がないから、『豪華絢爛 日本と世界の美術大全集』といった高くて大きくて重くてじゃまな本は1冊もない。しかし、単純に、重い本はある。そこで、ヒマつぶしのお遊びで、ウチの重い本トップ20を調べてみた。取り出すのが簡単な本だけが調査対象だから、箱に入れて深山(部屋の隅ということ)で眠っている本は相手にしない。例えば、『タイムライフ 世界の料理』シリーズは函入りの大型書籍だから重いのは明らかだが、重さを測るためだけに物置きから取り出す気はない。以前書いたことだが、本は箱に入れた時点で「ないも同然」になるとつくづく思う。なお、本の重量測定に使ったウチの体重計は、200グラム刻みしか表示しないので正確さはない。

 遊びついでだから、アマゾンなどネット書店に出品があれば、売値の最低価格(送料別)を書いておこう(8月4日現在)。

1、『昭和史全記録』(毎日新聞社、1989)・・・3800g 452円

2、『世界有用植物事典』(堀田満ほか、平凡社、1989)・・・3200g 1万4000円

3、『日本交通公社七十年史』(財団法人日本交通公社、1982)・・・3000g 7万5600円

4、“Chronicle of Thailand”(Wissanu krea-Ngam編、Didier Millet、2009)・・・3000g 6593円

5、『タイ日辞典』(冨田竹次郎、養徳社、1987)・・・2800g 2万8941円

6、”Chronicle of Malaysia”(Philip Mathews編、Didier Millet、2007)・・・2600g 4705円

7、“Palaces of Bangkok Royal Residences of the Chakri Dynasty”(Naengnoi Suksri & Michael Freeman、Asia Books, 1996)・・・ 2400g 4933円

8、『中国食文化事典』(中山時子監修、角川書店、1988)・・・2400g 1万3662円

9、“Thai House”(Phinyo Suwankhiriほか、The Mutual Fund Public Company Limted、1995)・・・2200g

10、“Directory of Thai Folk Handicrafts  Book of Illustrated Information”(The Industrial Finance Corporation of Thailand、1989)・・・2000g

11、”Isan-Thai-English Dictionary”(Preecha Phinthong, Darnsutha Press、1989)・・・2000g

12、『タイ日大辞典』(冨田竹次郎編、発行:日本タイクラブ、発売:めこん1997)・・・1800g 3万9262円

13、『地球生活記』(小松義夫、福音館書店、1999)・・・1800g 2313円

14、“Twentieth Century Impressions of Siam”(Arnord Wright、Oliver T. Breakspear,  White Lotus、1994 1908年版の復刻)・・・1600g  9040円

15、“Kretek”(Mark Hanusz、Equinox Publishing、2000)・・・1600g 6579円 クレテックはクローブ入りのタバコのこと。その昔は、のどの薬だと考えられていたという。プラムディヤ・アナンタ・トゥールのエッセイが収録されているのがうれしい。

16、“Freshwater Fishes of Western Indonesia and Sulawesi”(Maurice Kottelatほか、Periplus Editions、1993)・・・1600g

17、『もっと遠く』(開高健朝日新聞社、1981)・・・1600g 1100円 『もっと広く』も同じ(1900円)。

18、『オールフォト食材図鑑』(全国調理師養成施設協会編、調理栄養教育公社、1996)・・・1400g 1円(!)

19、“Bangkok By Design”(Allen W. Hopkins ,john Hoskins、Post Books、1995)・・・1400g 1万0677円

20,『インドネシア語辞典』(末永晃、大学書林、1991)・・・1400g  2000円

 こうした本を書棚から取り出して重量を計測し、元の書棚に戻したら、本棚の一番上にインド料理やスパイス事典など、重そうな本がいくらでも見つかった。1000g超が基準なら20冊以上ありそうだが、見えないフリをして、この重量測定遊びを終わりにしようとしのだが、すぐ目の前の本棚の最下段に重そうな本があるので、追加測定をする。

七つの海で一世紀 日本郵船創業一〇〇周年記念船舶写真集』(日本郵船、非売品、1985)・・・1800g、

Thai Style”(Luca Invernizzi Tettoni・William Warren、Asia Books、1988)・・1400g 1399円

南十字星 シンガポール日本人社会の歩み』(シンガポール日本人会、非売品、1978)・・1400g

京タケノコと鍛冶文化』(長岡京市教育委員会、非売品、2000)・・・1200g

キャンティの30年』(川添光郎発行、非売品、1990)・・・1000g

 タイで暮らしていた1990年代、船便でも送料が急激に値上がりしたため、帰国のちょっと前に買った重い本は、成田まで手荷物で持ち帰り、空港から宅配便にしようと思っていたが、いざ空港の宅配便カウンター前に立つと、旅客の弱みに付け込んで、「ええ!」と驚くほど料金が高いので、指がちぎれるような恐怖を感じつつ、重い本を手にして自宅まで持ち帰った。

 送料にカネを使うくらいなら、その分、本を買った方がいいと考える男である。

 こういう重い本とアフリカ音楽のCDを専用の棚に置いたら、棚板が割れた。5~6冊で10キロじゃあ、割れるよな。古本屋では、辞書や社史などを除くと、大きく重い本は、概して安い。書籍も、重厚長大は時代遅れなのだ。

 TOTOの社史『東陶機器七十年史』(1988)は実に面白い内容で、ダイヤモンド社が制作・編集にあたっているので、優良な市販本のレベルに達している。436ページのこの本を買っていれば「重い本」ランキングに入っただろうが、手に入らなかったので、当時東京乃木坂にあった東陶図書館(TOTO図書館だったかもしれない)に通い、コピーを取った。現在は『TOTO百年史』(2018)として800ページを超える著作になり、しかもデジタル化されて、誰でも自由に自宅で読めるようになった。すばらしいことだ。