1615話 本で床はまだ抜けないが その23

 神保町でこんな本を見つけた 1

 

 神田神保町古書店には、どんな本でも売られている。タイに興味と知識のある人が神保町で古本屋散歩をしていて、ある本に目が留まったとする。「なぜ、タイの自費出版物がここにあるんだ」と驚くかもしれないが、タイ研究者の蔵書だったとすれば、何の不思議もない。

 そういうことはわかっていても、古本屋の店頭ワゴンにこんなベトナムの本が置いてあったら、やはり驚く。こういう本だ。

 “Weird and WOW- HANOI through the eyes of foreigner” Christina Minamizawa , Social Sciences Publishing House、2010 , Hanoi)

 手にした感じをひとことで言えば、えらく重い「少年マガジン」だ。オールカラーの重い本だ。のちに調べてみれば、ベトナムで55万0000ドン、日本円にすれば2600円ほどで売られていたらしい。この値段は、安宿2~3泊分くらいだろう。

https://ggoooder.com/about/2010-published-350-page-1100-photo-book/

 神戸市にあるベトナム専門書店レロイ書店では、かつて12600円で売られていたことがわかった(現在は品切れ)。この本の書店の紹介文はこうなっている。

>筆者は現在クアラルンプルに住むニュージーランド人で、色々な国を旅行してきている中で特にアジアには深い思い入れがある。本書はタンロン=ハノイ1000年に合わせ1000枚の写真というコンセプトで始めたものだが、始めると止まるのが難しく最終的に1,600を上回る写真数となった。ハノイに3年、ハノイバンコクに10年以上在住し都市部をバイクで駆け廻り隅々まで周知している。全体を72の項目に分けさまざまなハノイを紹介。170x245㎜, 347pp, SC, 英語

http://www.nsleloi.co.jp/sach12_06-2012.htm

 1600枚のカラー写真を使ったこの本に、神保町の古書店は、「200」と値札をつけていた。パラパラとページをめくったらおもしろそうで、もちろんすぐさま買った。これが大変な掘り出し物で、このコラムの532話790話でたっぷり書いているから、ここでは詳しく書かない。

 共同通信記者横堀洋一の名は、雑誌などで少し知っていたが、よく読んだのは雑誌「話の特集」のコラム(連載であったかどうか覚えていない)だった。1970年代後半あたりだっただろうと思う。その当時横堀はシンガポール支局長で、日本人会の機関誌「南十字星」の創刊10周年記念復刻版の編集に関わっているというようなことが書いてあった。歴史資料といても貴重なものが集められているようで、ジャーナリストが編集に関わっているから、シンガポール在住日本人の交流話だけで終わってはいないだろうと想像できた。買いたい、読みたいとは思うものの、日本では手に入りそうもないので、あまり魅力を感じないシンガポールだが、マレーシアから足を延ばそうかと考えた。

 80年代に入ってしばらくしてからだと思う。ある日の神保町の古本屋の店頭のワゴンセールに、その本が置いてあった。表紙も大きさも知らない本だが、書名でわかった。シンガポール日本人会の10年分の会報誌復刻版だ。

 『南十字星 創刊10周年記念復刻版:シンガポール日本人社会の歩み』(シンガポール日本人会、1978)640ページ、写真も豊富で、大きく重い本だ。値段はついていないが、たぶん日本人会で頒価(はんか)販売だったのではないか。私がいくらで買ったか覚えていないが、店頭販売品だから、500円くらいかもしれない。「シンガポールに行っても買えるかどうかわからない本を神保町で見つけたことがうれしい」といったことを店のおばあちゃんに言うと、「欲しい方に買っていただけるのが、何よりです」という言葉が返ってきた。

 この本は、現在、日本のネット書店で5000円前後で買えるようだ。

 神保町で見つけた外国の文化を描いた本の話は次回に続く。