2005-04-01から1ヶ月間の記事一覧

105話 旅行記またはマジックバスの話

すばらしい本に出会うと、その本を生み出してくれた著者と編集者に感謝の手紙を書くことがある。あの本も、そういう本の一冊だった。 1983年10月に出た『街道のブライアンまたはマジックバスの話』(黒田礼二、筑摩書房、1200円)は、一種の旅行記…

104話 新旧は対立するか

佐藤さんが結婚して、鈴木に姓が変わったら、「鈴木(旧姓佐藤)さん」と表記されることがある。 古くからある旅館が手狭になったので、横に鉄筋コンクリートの新館を作ったとする。新館ができたので、元の建物は本館とか旧館などと呼ばれる。 旧制高校とい…

103話 間違いやすい『日米会話手帖』

出たばかりの文庫のページを開いて、「おいおい」と突っ込みを入れてしまった。1945年の日本を書いた次の文章だ。 灯火親しむの候の秋、九月十五日には、機を見るに敏であった誠文堂新光社から早くも刊行された『日米会話手帖』がまたたく間に三百六十万…

102話 古本のページの間に

新宿から四谷方面に散歩しているときだった。 住宅地の路地から路地へと徘徊していると、黒く大きな物体が視野に入った。3階ほどの建物なのだが、屋根はもちろん壁も真っ黒だった。壁はタイルか金属 でうろこ状でおおわれ、全体が巨大な甲冑、あるいは甲虫…