504話 遠い日のバイヨーク1

 インターネット遊びをしていたら、まったく偶然にこんなリストを手に入れた。「タイの高いビル100」というリストだ。  http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_tallest_buildings_in_Thailand
 世界の高層ビルのリストの一部なので、タイトル末尾のin以下を別の地名にすれば、さまざまな地域や国の高いビルリストが出てくる。例えばin Indiaにすると、インドでもっとも高いビルは、2010年に完成したムンバイのインペリアル・タワー1で、254メートルということがわかる。高さ第1位から、第253位までリストに載っている。年代別の高いビルリストというのもあって、インドと建築に興味のある人はけっこう遊べる。
 インドはともかく、タイだ。「高いビル・トップ100」というリストをみても、最近のビルは名前を見ただけでは、その姿が浮かばない。高いビルがまだ少なかったころは、新しくできたビル姿全体が目に入ったのだが、最近は「林立」となったので、ビルの入り口付近は見ていても、ビルの姿もビルの名前もなかなか覚えられない(覚える気もないが)。
 もっとも高いビルは、よく知っている。バイヨーク・タワーⅡだ。1997年完成の304メトル、85階建のホテルである。このビルは建設中からというか、建設前の敷地から知っているが、中に入ったことはない。そのとなりの、かつての最も高いビル、バイヨーク・タワーⅠは登ったことがある。ここは、完成した1987年当時はアパートだったのだが、折からの観光ブームでホテル不足になり、家賃よりも日銭が欲しい家主は、アパートの住人を追い出して、ホテルにしてしまった。バイヨーク・スイート・ホテルだ。2部屋あるスイートルームになっている理由は、元々アパートだったからだ。
 この高層ビルができたときは、脅威だった。タイにも、ついに超高層ビル時代が到来したことはわかったが、お汁粉のようなバンコクの地盤に、いくらなんでも高層ビルは無理だろう、そのうち「バンコクの斜塔」になるぞと、半分冗談で、ということは半分は本気で心配していたものである。あの時の超高層ビル、タイでもっとも高かったビルはいま現在、いったい何位くらいになっているのか。もはや10位以内は無理かもしれないが、12位か13位か、15位以内には入っているだろうとリストを眺めてみたが、なかなかBaiyokeという名が出てこない。20位にも30位にも出てこない。見逃したに違いないと思い、もう一度最初に戻ってリストを精読したが、見つからない。「おいおい、どーしたわけだ」と思いつつ、リストの先を読んでいったら、やっと86位にその名があった。1987年のダントツ、孤高の最高層ビルが、いまや86位である。
ビルの建設年代でこのリストを見ていくと、1980年代に完成していたのは、このバイヨーク1だけだが、90年代完成のビルは、完成年不明になっているビルも少なくないので正確にはわからない。このあたりが、いつもながらの、タイの資料の不完全なところだ。
 高さ第1位のバイヨーク・タワーⅡも、あと数年の在位になりそうだ。2015年完成予定のマハナコーンビルは、314メートルだ。計画段階だけというなら、95階建て390メートルのグランド・リバー・パレス・タワーⅠというのがある。
地震を考えないと、高層ビルは簡単にできる。しかし、維持管理がうまくいくかなあ。