1152話 桜3月大阪散歩2018 第6回


 ある1日、大正区の散歩から その3

 広い道路はおもしろくないので、脇道に入り三泉(さんせん)商店街などアーケードを歩くが、大阪では特にどーということのない商店街なのだが、大阪の中心部でもシャッター商店街があることに驚いた。


 大阪の中心地でも、シャッター商店街があるのは知ってはいたが、大正区よおまえもかという気分だった。

 銭湯マニアには有名な大正湯の外観は撮ったが、銭湯マニアではないので、入浴してみようとは思わない。東京の銭湯は寺の屋根(正確には破風という)がのっている外観だが、大阪では「いかにも銭湯」という建築スタイルはないようだ。それがよそ者にはちょっとおもしろい。

 銭湯マニアではない者には、この外観は特にどーということもなく・・・

 これも大阪的風景。特に大阪に多い木造3階建て、1階車庫という住宅は地震に弱いのだが、この住宅は車庫の左に柱が何本かあるので、最悪ではない。

 団地のような場所、市営三軒家住宅を抜けて、大通りに戻り大正区役所に出る。ここから海側に出て工場街散歩という案もあるが、「もういいや」という気分だった。期待した「大阪の沖縄」は見つからないが、これでいいことにしよう。区役所前のスーパーナショナル千鳥店で飲み物を仕入れてから、区役所の裏手に回り、桜が満開の千鳥公園に足を踏み入れた。ここにかつての大阪市の最高峰、現在は第2位の高峰昭和山がある。
 1960年代の大阪は、万国博覧会の準備に忙しかった。市営地下鉄もこの時期に建設が始まっていたが、地下から掘り出した残土の処理に頭を悩ましていたのだが、「残土で山を作る」という計画が浮かび上がり、33メートルの山ができた。1969年のことで、その時点で市最高峰だったが、1983年に鶴見緑地のゴミの山を鶴見新山と命名して、そちらが最高峰となった。標高45メートルの最高峰だったが、ゴミの山ゆえに沈下して現在は標高39メートルになっているという。このあたり、すべてがいかにも大阪らしいエピソードである。
 昭和山の山頂では、家族の花見がつましく開かれていた。豪華重箱というのではなく、簡単な料理と海苔巻きなどを持ってきて、老夫婦とその子供、幼稚園児と小学生の子供たちとその母親がいる。子供たちはうれしそうにいつまでもはしゃいでいる。老人たちは、かつての職場の同僚だろうか。コンビニ弁当と缶ビールでなごやかに、しかし静かに宴会をしている。桜咲くうららかな昼時だ。ちなみに、うららかは、「麗らか」と書くと今知った。
 山頂には花が咲き乱れ、山頂からは港や工場が見える。春の晴天の散歩は、こういう風景となごやかな人々を眺めただけで、きょうは良しとしよう。探検や冒険など必要ない。こういう風景と時間を共有できただけで喜ばしい。

 昼前のひとときを、昭和山で過ごした。山頂からこんな港風景を見ることができるのだから、大阪市第2の高峰はバカにしたもんじゃない。