1154月話 桜3月大阪散歩2018 第8回


 ある1日、大正区の散歩から その5

 10年前も、住之江バスターミナルから新たな旅ができたのに、その知識がなかった。今回は大阪市の詳細地図が手元にあるので、ここ住之江から長い名前の大阪市高速電気軌道南港ポートタウン線、通称ニュートラムが運航しているのがわかった。これで、もと来た道を戻らずに、旅をさらに進めることができる。このニュートラムというのは、東京のゆりかもめと同じように、運転手がいない高架鉄道だ。今のところ、住之江公園コスモスクエア間約8キロの営業をしている。


 ニュートラムに乗る。普通の電車よりもかなり狭い。


 しばらく港風景をながめて・・・

 東京や千葉にもこういうマンション街がいくらでもあるが、住みたい街じゃない

 その住之江公園から終点のコスモスクエアまで乗った。埋立地に建った高層オフィスやマンション街で、沿線はどこも散歩してもおもしろそうにない。一部では「おしゃれ」とか「近代的」といった評価を受けるかもしれないが、私には空疎にしか見えない。コスモスクエアで降りて、海岸に出た。右手にUSJが見えるが、正面の奥、遠くになにやらイスラムの塔ミナレットのようなものが見える。遠くてよくは見えないが、なんだかおもしろそうだ。
 
 気になったので、海岸の遊歩道でサンドイッチのランチを楽しんでいる夫婦に声をかけた。ふたりは、定年退職した夫と、いっしょにサイクリングをしているその妻という感じで、ふたりとも60代後半のようだが、ひきしまったふくらはぎが日ごろの運動量を示していて、私とはまったく違う体つきだ。
 「すいません。ちょっと伺いますが、あの変な建物はなにか、ご存知ですか?」
 「ああ、あれ、清掃工場ですね」
 夫の方がすばやく、かつにこやかに教えてくれた。関西訛りがまったくないのが印象に残った。
 そうか、思い出したぞ。大阪にはユニークな外観のゴミ処理場があることは昔から知っていて、その画像も見たことがあるのだが、どこにあるのかまったく知らなかった。今回の旅の準備をしているときには、清掃工場のことはすっかり忘れていたから、行き方を調べていなかった。
 その清掃工場は、正式には大阪市・八尾市・松原市環境施設組合舞洲工場といい、此花区にある。今いる住之江区からは簡単に行けないから、出直しだ。こういう施設だ。

https://osaka-info.jp/page/maishima-plant
http://blog.livedoor.jp/schizou/archives/50774312.html
 昔と違って、今なら「行きたい」と思ったら、スマホで調べてすぐさま行けるのだが、私はそういう旅をしていない。
 一部の大阪機関が大騒ぎしている「2025 大阪万博」の会場は、この清掃工場の南の埋め立て地夢洲が候補地である。万博と賭場(カジノ)で稼ごうとたくらんでいるのが、大阪だ。
 誰もいない海辺の遊歩道を歩いて行くと、ガラス張りのドームが海に浮かんでいるように見える。手入れされている様子がないので、廃墟になっているだろうという想像はつく。陸にも何かの施設があって、「なにわ海の時空館」という看板が見えた。
調べてみれば、こういういわくつきの建物だ。大阪がつかの間の夢を見たのが、2008年大阪オリンピック構想だ。「大阪でオリンピック」という声が大阪市議会で初めて出たのは1992年で、それ以降、あたかも開催が決定したかのように、大阪に箱物行政が圧倒的馬力で押し進められて、不動産会社や土建業者を大儲けさせることになった。当時の磯村市長(任期1995~2003)は、元大阪市立大学経済学部教授だが、税金は湯水のごとく湧いてくるものだと思っていたらしい。オリンピック構想の浮かれていた時代の2000年に完成したのが、この「浪速の海の時空館」だが、2001年に、2008年のオリンピックは北京開催と決まり、浮かれた大阪の熱は冷めた。この博物館は不人気で、2013年に閉鎖した。磯村時代の無駄遣いは数多くあり、先に紹介した清掃工場もそのひとつで、オリンピックに浮かれて、巨額の建設費を注ぎ込んだ。バブル経済はもう終わっているというのに、帆船で世界一周オリンピック開催キャンペーンなどをやってしまったのもあの時代で、以後大阪市の経済は一気に悪化していく。他人事だから、磯村市長時代の大阪は興味深い。
 大阪は、今も70年大阪万博の夢を見ているのだ。あの夢の再現を画策したのが大阪オリンピック構想であり、まだこりずにまた「2025大阪万博構想」をたくらんでいるのだ。
 だから、「大阪人は商売がうまい」などという俗説を信じてはいけない。

 廃墟は背中側にあるのだが、今となっては180度回って廃墟を撮ればよかったと思う。ちょっと画像を紹介しておこう。
https://minkara.carview.co.jp/userid/146369/spot/207664/

 大阪環状線 ひと駅ごとの愛物語」は関西テレビが2016年から放送しているドラマで、現在はBSフジで再放送している。つい先日、この「今宮駅」編を見たら、この大正区散歩の2回目で書いた木津川橋梁が2度登場した。やはり、名所だな。