1316話 スケッチ バルト三国+ポーランド 35回

 木造住宅 その1

 

 建築の話を今しばらく続けたい。

 バルト三国の旅はラトビアのリーガから始まったのだが、いままでのヨーロッパの街とはちょっと違うぞと思い、エストニアリトアニアを旅すれば、その印象がより強くなった。都市部に木造住宅がいくらでもあるということだ。バルト三国をバスで走ったが、車窓から見える景色は、牧草地と森だった。ラトビアの首都リーガも、旧市街の川を渡ればもう森だ。

 

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 手前が市街地。川向うは深い森だ。

 

 初めて木造住宅をじっくり見たのは、リーガ駅の裏手だった。そこは市場や倉庫があり、いちばん有名な建造物は、スターリンの威光を知らしめる科学アカデミーだ。あるリーガ人によれば、そのあたりはかつて治安の悪い地区として知られていたらしい。いずれ話をすることになる科学アカデミーに行ったら、まだ開館前だったのでその近所を歩いていて、木造住宅を見つけた。一見するとログハウス(正しい英語では、log cabinという)だ。丸太そのままではなく、角材にして積んでいるように見えるが、さて、どういう風に建てたのだろうか。

 

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 科学アカデミー周辺は、高層ビルとは不釣り合いな木造建造物が立ち並ぶ地域だ。

 

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「『あの地域には行っちゃいけない』と、子供のころは言われたんだよね」と40代のラトビア人。ロシア人やユダヤ人が多く住んでいた地区に、ホームレスが入り込んでいたこともあって治安が悪かったそうだ。

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 多分、こういう建物はレンガ造りで外壁が木ではないかと考え始める。

 

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 これは住宅ではなく、会社だったのかと思う。

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 下の写真のように、もとは窓に木の扉があったのだろうが、取り外したのだろう。

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 ガラスを二重にするような余裕はない。

 

 以下、ラトビア歴史博物館に展示してあった写真。たぶん、1960年代だろう。

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 3段並ぶ上の写真の真ん中、茅葺屋根の家の向こうに近代的アパートが見える。

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 新市街にも、今でも木造建造物は残っているが、長くなるのでその紹介は後回しにする。

 

 不幸にしてバルト三国ソビエトに支配された結果、経済が停滞したまま放置された結果、保存することなど考えなかった木造建造物が「たまたま残ってしまった」。偶然にも残ってしまった木造建造物が、今は観光名所になっていることが、ラトビア人が書いたガイドブック『リガ案内』(アルタ・タバカ編、菅原彩・小林まどか訳、土曜社、2012)を読むとわかる。