リーガの鉄道博物館
前回、私は自動車マニアではないと書いたが、鉄道車両マニアでもない。だから、ただ車両が並んでいるだけの鉄道博物館では感激しないのだが、ここは違った。この博物館の日本語サイトでは「鉄道歴史博物館」と紹介されているが、ラトビア語では「鉄道博物館」であるものの、展示内容は鉄道歴史博物館にふさわしい。
こんな博物館はほかにあるだろうかと思った。できるだけ多くの車両を展示する方針ではなく、「鉄道とラトビア人」に絞った展示が素晴らしい。
鉄道博物館に入る前に、庭の車両展示を見る。この部分は、無料。
木造ラッセル車がおもしろいと思ってシャッターを切った。
これも「木造」にひかれた。クレーン車である。
なんだか、「ソビエトを走る」というイメージを抱かせるデザインと塗装だ。
車両見物は10分くらいで終わり、博物館に入る。
駅舎のミニチュア。これは鉄道員宿舎だ。
出札口風景。どのミニチュアも、細かさと正確さと愛嬌が特徴。どこかに猫がいる。ここでは、テーブルの下とイスの上にいる。
構内の書店。
さて、トランクの展示があった。時代と荷物の話。鉄道という工学的世界の博物館ではなく、鉄道を利用してきた人々の歴史に焦点を当てているところが、私のような鉄道マニアではない者にも、鉄道に対する興味を持続させる。この鉄道博物館探訪記はネット上に多くあるが、マニアは車両見物だけで終わるのが残念だ。
「シベリアからの帰還」という説明。第2次大戦後、バルト三国はソビエトに占領され、ソビエトは富裕層や反政府思想、そのほか誰でもソビエトが気に食わない人間をシベリアに送った。同時に、ロシア人をバルト三国に移住させるという政策も実行し、このロシア系住民の問題は現在まで続く。スターリンの死によって、シベリアへの強制移住政策は終わり、1953年ごろから、シベリアからの帰国が許された。展示は、その時代のモノを見せている。ラトビア人に限らず、東欧の人々は、このトランクの荷物を涙なしには見られないだろう。この展示だけでも、この博物館がただの鉄道車両展示館ではないことを主張している。
ソビエト時代でも、西側への旅行がわずかに許された例もあった。1930年代、リーガからベルリンまで19時間かかったそうだ。荷物に関する詳しい説明がないのが、残念。
冬はクロスカントリースキーというのが流行したらしい。人気の場所は、リーガの東Ergliだそうで、スキー専用車も走ったという。
リーガ郊外の海岸、ユールマラへの楽しい小旅行。短い夏を浜辺で楽しんだ。
次は制服の紹介。寒冷地だから、下着の紹介もちゃんとやるというリアリズムがうれしい。下の制服は、1850~1870年のロシア鉄道時代の制服。それぞれの人形には年代を書いたプレートがついているが、いちいち撮影するのは面倒なので、無視した。19世紀から20世紀末までの鉄道員の制服である。
ミニチュアをよく見て、説明を読む楽しい時間。日本の鉄道博物館には、ちゃんとした英語説明はあるだろうか。
今回で交通の話はおしまい。次回からはまた別の話を始めます。