1445話 その辺に積んである本を手に取って その2

 街歩き

 

 建築史家兼建築家の藤森照信の本は折を見て買っているが、先日、「まだ買っていない本があったかなあ」と思いつつアマゾンで調べたら、チェックしていなかった本が見つかった。『昭和の東京』(路上観察学会、ビジネス社、2009)は、その世界ではご存知の、路上観察記の一冊。すべて買ったと思っていたが、気がつかない本もあったのだ。出版時点で、すでに「現存せず」と解説にある物件が少なからずあり、出版からさらに10年以上たった現在では、もうまぼろしの物件かもしれない。試しに、12~13ページで紹介している木造3階建ての下宿屋本郷館は、2011年に建て替えられた。台東区の廿世紀浴場は2007年に廃業、2009年に取り壊された。同じく台東区の栄泉湯は、アールデコ風銭湯だが、すでに廃業している。建物がどうなったかは、ネットではわからない。

 といったように、インターネットとグーグルマップなどで調べながらの読書に向いている。

 街歩きと雑学が好きな私の、とっておきの名著は『くらべる東西』(おかべたかし・文、小出高士・写真、東京書籍、2016)だ。こういう大好きな本は、買った時のこともよく覚えている。神田神保町三省堂で、発売直後に買った。これは日本の文化の東西比較を写真でやろうという企画だ。好きな本は、本の山に埋もれないように、絶えず山の上の方に置いているから、すぐに取り出せたのだ。東西といっても、東京と大阪の比較ではなく、東日本と西日本の比較だ。

 たとえば、「銭湯比較」なら、浴室奥に浴槽があるのが東、アイランドキッチンのように浴場の中央に浴槽があるのが西の銭湯だという。詳しい解説はないので、この本を読んで以後、関西の銭湯に気をつけていると、アイランド型ではなく、壁から浴槽が突き出した半島型もあった。銭湯の絵は東のものらしく、西ではタイルなどいろいろある。

 タクシーの東西比較では、東はカラフルだが、西は黒が主流らしい。姫路を調査したら、「すべて黒かった」と報告している。狛犬比較とかのれん比較など、「なるほどねえ」と堪能した。東西比較といっても、物事にもよるが、0対100の違いがあるわけではなく、主流はどうかという報告なのだが、「なぜ?」と考えると、先に進めなくなるので、あまり考えないことにした。でも、真相は知りたい。

 こういう東西比較は食べ物に関してはある程度知っているが、ほかの分野では知らないことなどいくらもある。この本を読むまで私が知らなかった事項を、目次からちょっと書き出してみよう。

 座布団、火鉢、骨抜き、屋根、のれん、だるま、卵焼き器などさまざまな東西比較が載っている。

 この本を買ったのは4年前だから、その後、同じ比較モノでおもしろい本は出ているか調べてみたら、『くらべる日本』、『くらべる世界』、『くらべる時代』の3冊が出ていて、どれもおもしろそうだ。とりあえず、『くらべる世界』をたった今注文した。『くらべる東西』も安く買えるので、文化やデザインに興味のある方はどうぞ。