図書購入台帳 その1
1966年、中学1年生の冬だった。本棚にあるわずかばかりの本で、図書台帳を作ろうと思った。その当時の感覚・感情を覚えていないが、おそらく「司書ごっこ」をしてみたいと思ったのかもしれない。高校生になって図書委員になり、お茶の水の日販(出版取次の大手、日本出版販売。書籍の問屋を出版取次という)に行き、高校の図書室用にひとりあたり数十冊買ったことがある。日販の書庫で、図書室顧問が図書委員に「好きな本を買っていいが、あとで総点検するときに、『私が買いました』と言えないような本は買わないように」という注意を受けたのは覚えているが、どういう本を買ったかはまるで覚えていない。高校生になってそういうことをするようになったということは、中学時代に司書らしきことをしてみたいと思ったのかもしれない。
中学1年生の冬に思いついた司書ごっこは、今も続いている。日記も読書ノートも書いていないが、買った本はこの台帳に記入している。
この台帳が活躍するようになるのはライターになってからで、本のことを原稿に書こうとして、正確な書名や著者名や版元や出版年などを書こうとしても、現物が見つからないときに、台帳を見ればすぐにわかる。今ならネットを見ればすぐにわかるが、昔はこういう台帳がないと、その本のことは原稿で触れないことにするか、自宅で本探しをするか、図書館に行って、図書カードで点検するしかない。
台帳第1巻の最初のページは、購入日が空白になっている。小学生時代から、中学1年生までに買った本で、いつ買ったかわからない本だ。どういう本だったか、ちょっと書き出してみようか。今でもそうだが、自分が書いたものに自信がないから、国会図書館のデータで確認しながら書き出してみる。
『ビーグル号航海記』(ダーウィン)
『世界の飛行機』(秋元実)
『少年少女世界不思議な物語』(宝文社)のなかの『探検と遺跡』、『人種と動物』、『歴史と秘宝』などの巻を買っているが、どうも内容的には「怪しげ」なようだ。幸せにも、この本を飛んでも川口探検隊&オカルト方面には進まなかった。
『ビルマの竪琴』(竹山道雄)、『ジョン万次郎漂流記』(井伏鱒二)。二冊とも偕成社の子供用の本。川口慧海のチベット旅行記(もちろん、児童書)も読んだ記憶があるが、台帳にないということは、小学校の図書館の本だったか。
『ニューギニア高地人』(本多勝一)。1964年に出てすぐ買っている。新聞の連載記事を読み、単行本を欲しくなったのだろう。国会図書館のリストの欠点は定価を書いてないことだ。文庫ではないこの本を、小遣いを貯めて買ったのだろう。
中学生になると、神保町通いを始めるので、中学1年生に、次のような本を買いまくったことがわかる。本人はまったく意識していないが、のちのライターの姿がすでに見える。
『外来語辞典』(梅垣実)、『日本人名事典』(福音館)、『社会科用語辞典』(福音館)、『少年朝日年鑑』(朝日新聞社)、『世界の旅』(小学館)の、『ドイツ・スイス』、『北ヨーロッパ』、『エジプト・アフリカ』、『インド・西アジア』、『スペイン・ポルトガル』の6冊を買っている。あのころ、母に「弁当はパンがいい」といって、毎日パン代の50円をもらい、それを貯めて本を買っていた、当時、岩波文庫の定価は★で表示していて、★ひとつが50円だったから、1回昼めしを抜くと岩波文庫を新刊書店で買えた。
おっと、今、大事件を見つけた。「カラスの十代」シリーズで、高校入学から夏休みまでに買った本のリストを1577話で書いた。今、台帳を見ていたら、「高校入学直後」だと思っていたのは、リストの年代の読み違いで、中学入学と高校入学を混同していた。1575話の記述は自らの恥をさらすためにそのまま残し、次回から正確なリストを書いておこう。