このコラムのタイトルが「デジタル機器と旅」で、「スマホと旅」にしなかった理由は、私はスマホは持っていないが、パソコンを使って旅にインターネットを利用しているからだ。記憶の糸をたどると、格安航空券販売会社に出向いて航空券を買った最後は、多分2002年だと思う、それ以後、いろいろあって旅には出られず、パソコンを導入するなどあって、2005年か06年ころに、インターネッットで航空券を買った。
実に便利だった。わざわざ旅行社に出向かなくてもいいというだけの利点ではなかった。目的地までのさまざまなルートを選べる。経由地を変えることで、所要時間や料金が変わる。こんなにひどい航空券もあった。例えばコルカタ行きの安い航空券として売られていたのは、成田―バンコクードバイ―コルカタというものだ。バンコク往復の航空券は、成田―ハノイーサイゴンーバンコク。復路はバンコクーハノイ(長時間待って)-成田というものだ。
まあ、こういう変態航空券の話は別にしても、往路と復路を別々に買うことができるのもうれしかった。例えば、「羽田発ロンドン着。アテネ発バンコク経由成田着」という航空券だ。外国の国内線の航空券も買うことができるので、じつに便利だ。
目的地に夜着いて、それから街に出て宿探しをするのはいやだから、到着地の宿も予約しておくことにした、これも、インターネットだ。入国条件として、ビザは要らないが「旅行保険に入っていること」を条件にしている国もあり、保険もネットで加入した。
日本の我がパソコンでできることはしているから、デジタル旅行を全面的に否定しているわけではない。
でも、さあ・・・と、言いたいことはいくらでもある。
鉄道やバスなど、乗車券はあらかじめ予約しておくか、スマホで購入しておくのが常識になりつつあるが、例えばポーランドやスロベニアでバス会社のHPやバス予約サイトをどうやって画面に出すか、予約画面の表示が英語でなければ、翻訳してから解読しないといけない。経由地の違いとかサービスの違いや到着場所の違いなどの情報をきちんと読み取るには、かなりの語学力が必要だ。英語は少しはわかるという人でも、乗船券の購入だと読んでおかないといけない説明があるかもしれない。日本語で検索できない場合、英語でとなるが、英語のHPがあるかどうかわからないというような不便はないのか、スマホを持っていない私はどうともいえない。
スマホを持っていない私の不安はまだまだある。例えば、通信環境の問題で支払いができないとか、予約済みの画面が出せないというとき、どうするのか。スマホを失くした、盗まれた、壊れたというとき、どうするんだろう? パスポートを紛失した場合は、警察で盗難届を出し、再発行の手続きのために日本大使館に行くのだが、スマホを失くした、宿や交通、バスから航空券の予約記録などすべて失くしたら、どうするんだろう?
安宿のロビーのコンセントで、スマホを充電中だが誰もいないという光景はよく見たが、盗まれるかもしれないという不安はないのだろうか。路上でスマホをひったくられたという事件は何度も聞いた。歩きスマホは札束を手にして歩いているようなものだ。
こうして書き出した不安は、スマホ常用者には自明のことだから、「それでどうした?」ということだろうが、別の問題もある。