2話 パソコン導入

 

 機械があまり好きではないから、できることなら機械から離れて暮らしたいのだが、事情があってついにパソコンを導入した。事情というのは、膨大な調べものをしなければいけない連載を始めたのをきっかけに、やむなく導入を決意したのである。
 もっとも多く利用するのは、国会図書館のサイトで、出版物の情報を得るには大変重宝だ。ある書き手がどんな本を書いているのか知りたかったり、ある本の 出版社や出版年を確認したいときに、とても便利だ。文庫の場合、親本に関する情報が一切書いてないものもあるので、そんなときにこのサイトが実力を発揮す る。
 企業のホームページも、企業によってだが、かなりの情報が手に入る。例えば、永谷園のHPは過去に発売した商品が、写真とともに、発売年などの情報が入っているから、貴重な資料が簡単に手に入った。
 個人が作っているHPの書籍情報は、ほとんど何の役にも立たない。書名と著者名の羅列だけというものも多く、リストに徹するなら徹底的にやってくれれば いいのに、最近出版された、たかが10冊か20冊の書名をあげただけで「タイ関係書一覧」と名乗られると、困惑する。一般に、インターネットの情報は現在 に強く、過去に弱いという特徴がある。
 インターネットは利用するが、メールはしない。原稿をメールで送ることもしない。パソコンのキーボードが使いにくいのと、つまらんメールがやたらに来る 日々が耐えられないからだ。知人・友人のなかにも私と同じ人が少なくないらしく、「メールを送っても一切読みません」と宣言している人もいるし、「連絡は 手紙で」とHPに書いている人もいる。毎日メールをチェックして、返事を書くというのが面倒だとか、機械に使われているようでいやだという理由だ。私は郵 便が好きだ。
 というわけで、この原稿もファックスで送っている。編集者には気の毒だとは思うが、原稿の内容を最低限このレベルに保ちたいと思うと、パソコンでは原稿 が書けない。パソコンで原稿を書いたからといって、原稿のレベルが向上するわけではないのだから、一番書きやすい手段を選ぶのが書き手の務めだろう。