111話 反韓パソコン

 私のパソコンは、ちょっとおかしい。私のだけがおかしいのかどうか、わからないが、とにかくおかしのである。このWindowsXP Home Editionは。
 たとえば、「ちょうせん」と打って、最初に「挑戦」がでてくるのはわかる。それを「朝鮮」と変換し直せば、以後「ちょうせん」は「朝鮮」となる。学習したのだ。
 朝鮮はいいのだが、「かんこく」がいけない。我がパソコンの「かんこく」はいつも「勧告」なのだ。一度変換しなおして「韓国」としても、次にはまた「勧 告」なのである。我がパソコンはこの語に関しては自習ができないらしく、強制的に教えないといけないらしい。立派な教育者たらんとして、私はパソコンが学 習する日を気ながに待っているのだが、いつまでたっても「韓国」が覚えられない。ということは、そうプログラムされているとしか考えられない。親朝鮮・反 勧告、いや反韓国だ(いまも何度「韓国」を出そうとしても、勧告になってしまう)。
 パソコンに学習させればいいことは知っているが、いつ独学するか興味があってそのままにしているのだが、いっこうに学ばない。
 いままで使っていた東芝ルポというワープロ専用機よりパソコンがすぐれているのは、固有名詞が一発変換できるところだ。本をさがしているときに、著者名 が一発で変換できるのがありがたい。地名も同様だ。いや、そうでもないか。「かんだ」と打つと、「神田」になることもあるが。「カンダ」や「缶だ」などに なることもある。いつも「神田」になるわけではない。私の場合、「かんだ」はいつも「神田」で、それ以外の表記はしないのに、変な自習をしてしまう。
 普通名詞でも変だ。「とし」がいけない。「塗死」になってしまう。「と・し」と分割して変換してしまう。「年」は「ねん」と打てばいいが、「都市」の場 合は「としこうつう」のように別の語を補ってやらないといけない。「やかた」もそうだ。こんな簡単な語なのに、「屋肩」「耶肩」など、「や・かた」と分け て変換されてしまう。いったい、どうプログラムしているのだ。
 さっき打っていた原稿でもおかしかった。「ぱそこんがくるっている」と打ったら、「パソコンが来るっている」になってしまった。コンピューターが日本語 を理解するなら、「くるって」が「来るって」「狂って」になるのはわかる。しかし、「来るっている」という日本語はない。ない日本語を平気で作り出すのが 我がパソコンだ。
 これは、どうも差別用語に敏感すぎるのではないか。そこで、活字メディアでは普通使えない語を次々に打って、変換の具合を試してみたくなった。
 「こじき」は「コジキ」。「きちがい」は「基地外」だけで、ほかの語はない。
 あっ、そうか。パソコンは略語ではPCとなる。そして、PCは「プリティカル・コレクト」でもある。「政治的に正しい」というのは直訳で、「差別語基 準」とか「言葉狩り」とも訳せる。パソコンが「政治的に正しくない」語を排除しているなら、「韓国」は禁止用語か(いまも「勧告」と変換された)。
 こういう問題はあるが、メールは便利なので使っているのだが、困ることもある。書体と字の大きさを毎回設定しなければいけないらしいことだ。設定して も、文章を書いているうちに書体や字の大きさが勝手に変わってしまうことがある。困ったもんだ。いちいち設定しなくても、一度設定すれば以後そのまま使え る方法があるのかもしれないが、調べてもわからない。また、メールの文章が、行間が詰まりすぎているのも気にかかる。もう少し行間があいていれば、読みや すくなるのにと思う。どうすればいいんだよ、いったい。なにかいい対処法があるのだろうか。

P.S.
 わが師、アジア文庫店主のご教示で、書式設定の問題は解決しました。漢字変換の問題は一部解決。いまだ、「やかた」は「屋肩」になってしまう。行間設定の問題は、店主の能力と知識をもってしても解決せず。ということは、行間設定は不可能ということか。