320話 若すぎる死

 黒岩比佐子の著作には、私の興味範囲と重なる部分が多いので、読んでみたいとは思いつつも、今現在の関心とは重ならないので、「今は、コレとアレを読んで、それから、そのうちに黒岩の本を・・」と思っているうちに、著者は昨年2010年に、52歳で亡くなってしまった。自分よりも若いから「若い死」というだけでなく、世間一般でも、やはり若い死だろう。ライターとしても、残念な死だ。
 黒岩比佐子の死を知って、やはり若くして亡くなった人たちの名が浮かんだ。ライターなど出版関係者では、どういうわけか男より女の方が若くして死ぬような印象を最初に抱いたのは、井田真木子の死に出会ってからだ。2001年、44歳で亡くなったライターだ。
 井田とはまったく面識はないが、著作のいくつかは読んでいた。彼女の存在を意識したのはその著者よりも、雑誌やテレビで発表される書評だった。彼女が紹介する本は、私がすでに読んで「上出来!」と感じた本や、新聞広告などで見て、近日中に買おうと手帳にメモをしておいた本だった。まったく知らない本を紹介していることももちろんあるが、それらの本もまたおもしろそうだった。
 本でも音楽でも映画でも、自分の好みにぴったり合うものを紹介してくれる人の存在はありがたいもので、読書の分野で言えば、井田は私にとって唯一信頼できる紹介者だった。ノンフィクション中心の彼女の選択が、私の興味分野を刺激したのである。
 井田が亡くなった2001年以降、今の私よりも若くして亡くなった女性ライターたちを調べてみた。井田以前にも、例えば、李良枝(イ・ヤンジ 1955〜1992年 37歳)や、ねこぢる(1967〜1998年 31歳)などもいるが、きりがないので、ここでは「井田以降」にした。女性の書き手は男性より若死にするという私の仮説が証明されるかどうかは別にして、ちょっとリストを作ってみた。物故者の資料から、私が読んだことがあるかどうかに関係なく、私の好みや評価も関係なく、名前を知っている人のリストを作ってみた。ある世界では有名だが、私が知らないだけという人物もいるだろうが、まあ、それは、いたしかたない。
井田真木子・・・・1956〜2001 ・・・ 44歳
久和ひとみ・・・・1960〜2001 ・・・ 40歳
菜摘ひかる・・・ ・1973〜2002 ・・・ 29歳
ナンシー関 ・・・・1962〜2002 ・・・ 39歳
鷺沢萌・・・・・・ 1968〜2004・・・ 35歳
杉浦日向子 ・・・・1958〜2005・・・ 46歳
中尊寺ゆつこ・・・ 1962〜2005・・・ 42歳
犬丸りん・・・・・ 1958〜2006・・・ 48歳
米原万里・・・・・ 1950〜2006・・・ 56歳
島村麻里 ・・・・・ 1956〜2008 ・・・ 51歳
氷室冴子・・・・・ 1957〜2008・・・ 51歳
柳原和子・・・・・ 1950〜2008 ・・・ 57歳
栗本薫・・・・・・ 1953〜2009・・・ 56歳
黒岩比佐子・・・・ 1958〜2010 ・・・52歳